"3日だけ帰るはずだった妻" 第5話
翌朝には古い印鑑登録を廃止し、しい印鑑を実印として登録し直した。融資会社には、私が保証のを示した事実はないと、弁護士名で通してもらった。
そして、お盆の1週。引きしにはしい類が増えていた。
〈宅改修事請負契約 見積額800万円〉
資調達の欄には、自宅を担保とするローンを利用すると記載され、所者同にはまた私の署名と実印が使われていた。
現へ識を戻し、私は浩司へ話をかけた。3回目でようやくつながると、向こうでは裕子が「今すぐ説して」と声を荒らげていた。
「浩司さん。私がっているのは、500万円だけではありません」
私はテーブルに置いた契約の写しを指で押さえた。
「あなたが私のに背負わせようとした、800万円のこともっています」
第6話 百万円の台所
「800万円って、どういうこと?」
話の向こうで、裕子の声が鋭くなった。浩司は私に答えるより先に、「した話じゃない」と彼女をなだめようとした。
「しいキッチンと浴の事費だよ。を担保にすれば、々の支払いはした額じゃない。予定どおりめられる」
「められません」
玄関に残っていた鈴が、浩司の言葉を遮った。事会社の担当者として、所者のを確認できないまま引きがるわけにはいかなかったのだろう。
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「先ほど弊社の法務担当からも連絡がありました。提された所者同について、佐藤恵子様は署名も押印もしていないと主張されています。融資会社からも審査止の連絡が入りました」
「夫婦のだぞ。妻の印鑑だって押してある!」
「だからこそ、ご本への確認が必です」
鈴の声は変わらなかった。
「800万円の融資だけでなく、事契約そのものを度に戻します。本は作業員も入れません」
玄関のでのドアが閉まり、複数の音がざかっていった。裕子が選んだい理のキッチンも、達也が望んだ黒い壁も、古いのにはカタログの写真として残っただけだった。
私は防犯カメラの画面をいた。のには事両が2台止まり、作業員が度ろした養材を荷台へ戻している。鈴は浩司に類を渡すと、くをげてへ乗った。やがて2台ともりり、玄関先には腕を組んだ浩司と、険しい顔の裕子だけが残された。
浩司が私の許など必ないと考えてめた計画は、壁を1枚壊すことさえできずに終わった。
「浩司さん、あなた、このは自分のものだって言ったわよね」
裕子の声から甘さが消えていた。
「いずれ俺のものになる。恵子は田舎にがあるんだから、ここを欲しがる理由はない」
「欲しがるかどうかではありません。
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今も私のです」
私は話を切らず、台所の窓から庭を見た。朝の差しを受けたトマトの葉が揺れ、赤い実に滴が残っている。あのでは蛇からがないと騒いでいるのに、ここでは自分のために使うの量を誰にも責められない。そのさな違いが、っていた以に胸へ染みた。
「恵子、今すぐ帰ってこい。話しえば済むことだ」
「話しう期は、もう終わりました」
「昨、正式に受理されています」
「何が?」
「婚届です」
浩司が息をのみ、裕子が「婚届?」と聞き返した。
「あのを、本当にしたのか」
浩司の声から気が消えた。自分で署名し、証欄まで埋めて私へ渡したにもかかわらず、私が提するとは考えていなかったのだ。
私が告げると、しばらく何も聞こえなかった。やがて裕子がい声で尋ねた。
「じゃあ浩司さん、もう独なのよね。は奥さんのものでも、貯はあるんでしょう? あなた、1000万円以持ってるって言ったわよね」
浩司は答えなかった。
私は彼の沈黙が何をするのかっていた。5には確かにあった。しかし温泉旅、級計、裕子の会社への援助、達也への贈り物に消え、残っていたのは47万8200円だけだ。
「まさか……ないの?」
裕子の声が震えた。
「違う。今はかせないだけだ。会社の積も退職もある」
「私の会社に入れた500万円は、あなたの貯じゃなかったの?」
再び沈黙が落ちた。
それまで私へ向けられていた裕子の敵が、ゆっくり浩司へ向きを変えていくのが、話越しにも分かった。