"存在しない孫" 第9話
でも。
誰かをうそのものだった。
「だから」
川さんは言った。
「私は送り続けた」
「拓さんがしたからじゃない」
「さんが、直子さんのを切にっていたから」
母の目に涙が浮かんだ。
でも、泣かなかった。
いつものように。
ただ、静かに受け止めていた。
「文さん」
母が言った。
「ありがとう」
川さんは首を振った。
「お礼を言われることじゃないわ」
「私は約束を守っただけ」
「でも」
母は箱を見る。
「もう終わりですね」
川さんは頷いた。
「ええ」
「歳の箱が最」
「これで、拓さんはもうになったから」
その言葉に、しだけ違があった。
しない。
まれていない。
なのに。
かけて、成していった。
私はった。
は本当にしただけで、そのの価値が決まるのだろうか。
そのの夜。
母が帰った。
私はで祖母の部にいた。
机のには、個の箱。
そして。
川さんが置いていった古いノート。
祖母の記だった。
私はこうとして、を止めた。
もう分だとった。
これ以、祖母の気持ちを覗く必があるのか。
そうった。
でも。
最のページに、つだけ付が見えた。
祖母がくなる数。
震える字。
そこには、こうかれていた。
『織へ』
私は息を止めた。
祖母は。
最に私へ何かを残していた。
祖母のに戻った夜。
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私はで古いアルバムを理していた。
写真というものは議だ。
写っているものは同じでも、見る側の気持ちによってが変わる。
以なら。
母の若い頃の写真を見ても、ただ、
「若かったんだな」
とっただけだった。
でも今は違う。
このにも、私のらない未来があった。
ページをめくる。
祖母。
母。
親戚。
所の。
昔の。
そして。
枚の写真でが止まった。
駅のホームだった。
若い母がっている。
髪は今よりい。
笑っている。
隣にはきなバッグ。
旅にくのような姿だった。
写真の裏を見る。
付。
。
そして、さな文字。
『京駅』
私はしばらくけなかった。
そのの夜。
母に話をした。
「お母さん」
「どうしたの?」
「写真を見つけた」
「写真?」
「京駅の」
話の向こうで沈黙。
「……あったんだ」
母の声がさくなった。
「ってたの?」
「うん」
「これ、何の?」
母はし笑った。
「発する予定の」
「本当にくつもりだったんだ」
「うん」
私は写真を見る。
笑っている母。
迷っているようには見えない。
「怖くなかったの?」
聞くと、母はし考えた。
「怖かったよ」
「でも」
「楽しみでもあった」
その言葉に、胸が詰まった。
母が楽しみにしていたもの。
私がらなかったもの。
「もしっていたら」
私は聞いた。
「どうなっていたとう?」
母はすぐには答えなかった。
「分からない」
「悔してる?」
また同じ質問をした。
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母は静かに答えた。
「しているもある」
「でも」
「あなたがいる今を悔することとは違う」
私は黙った。
母は続けた。
「って、つ選ぶと、選ばなかったものが消えるわけじゃないのかもしれない」
「ただ、別の所に残るだけ」
私は写真を見る。
若い母。
発するはずだった母。
そして。
今の母。
族のためにきてきた母。
どちらも本当の母だった。
「織」
「うん」
「おばあちゃんのこと」
「うん」
「許してあげて」
私はし驚いた。
「お母さんが言うの?」
母は笑った。
「許すっていうより」
「分かってあげてほしい」
「おばあちゃんも、怖かったんだとう」
「何が?」
「私のが、本当にこれでよかったのか」
その言葉を聞いた。
私は初めて理解した。
祖母もまた。
別の未来に取り残されていただったのだ。
話を切った。
私は写真をアルバムに戻した。
でも。
以のように閉じることはできなかった。
そこに写っていたのは。
過の母ではなかった。
度だけ、自分のを選ぼうとしたの女性だった。
祖母の記。
その言葉を見た瞬、私はしばらくけなかった。
藤原。
私がっている祖母は、いつも穏やかなだった。
ることもない。
誰かを責めることもしない。
所のからも、
「優しいおばあちゃんだったね」
と言われるような。
でも。
この古いノートのには、私がらない祖母がいる気がした。
私は子に座った。
記をく。
最初のページには、料理の記録や庭ののこと。
病院へった。
所のから野菜をもらったこと。