みかん小説
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"存在しない孫" 第5話

「子どもはすぐきくなるから」

「だから毎しいが必になる」

その言葉を聞いて、私は議な気持ちになった。

子どもの成い。

だからは役目を終える。

でも。

祖母の箱のにあったものは、誰も着ることなく残っていた。

役目を持たないまま。

「拓さんのも、ここで?」

私が聞くと、川さんは頷いた。

「最初の頃はね」

「最初の頃?」

「途からは、ではなくなった」

私は首を傾げた。

川さんは棚の奥から、さな布袋を取りした。

齢にわせたものを考えるようになったの」

歳なら何をぶか」

歳なら何を見るか」

歳なら、どんなものを欲しがるか」

「でも」

川さんはし寂しそうに笑った。

「途から気づいたの」

「私は拓さんを像しているんじゃなくて」

「直子さんの失われた像していたんだって」

私は黙った。

さんはね」

川さんは続けた。

「本当に直子さんが幸せになってほしかったのよ」

「だから、別の未来も切にしたかった」

「でも」

私は言った。

「それって、今のを否定することにもなりますよね」

川さんは私を見る。

「そうね」

迷いのない返事だった。

「だから難しいの」

って、きれいなものだけじゃないから」

私はを見回した。

この所にも。

祖母のにも。

優しさはあった。

でも同に。

誰かを過につなぎ止める力もあった。

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川さんは」

私は聞いた。

悔していますか?」

「何を?」

「荷物を送り続けたこと」

川さんはしばらく考えた。

「分からないわ」

また同じ答えだった。

「約束を守れたことはよかったとう」

「でも」

「もしさんがもっとく、直子さんと話せていたら」

川さんは窓のを見る。

「違う形になっていたかもしれない」

私はその言葉を覚えておこうとった。

正しいはいない。

違ったもいない。

ただ。

誰かをう気持ちが、々別の形になってしまう。

帰る

川さんが私を呼び止めた。

織ちゃん」

「はい」

つだけ覚えておいて」

「何ですか」

川さんは言った。

「拓さんは、しなかった」

「でも」

を置いて。

「直子さんがきてきたは、本当にしたのよ」

私は頷いた。

その言葉が、なぜかずっと残った。

母が来たのは、午し過ぎた頃だった。

玄関のチャイムが鳴る。

私は瞬、体が固まった。

までなら、母が来ることをただ待っていただろう。

でも今は違う。

母は何かをっている。

そして、その何かを、私に話さなかった。

織」

玄関をけると、母はいつもの顔をしてっていた。

いグレーのコート。

髪はきちんとえている。

化粧もいつも通り。

どこから見ても、普段の母だった。

でも。

目だけが違った。

疲れていた。

まるでけてはいけない扉のち続けていたの目だった。

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川さんは?」

母が最初に聞いた。

私は驚いた。

ってるの?」

「来たのね」

その言葉だけで分かった。

母は川文さんのこともっている。

「お母さん」

私はし声をめた。

「どうして何も言わなかったの」

母は靴を脱ぎながら、静かに答えた。

「何を?」

「拓のこと」

その名にした瞬

母のが止まった。

ほんの瞬。

でも、私は見逃さなかった。

母にとって、その名は今もきているものだった。

「……聞いたのね」

「うん」

「どこまで?」

「拓は実しないこと」

母は目を閉じた。

そしてさく息を吐いた。

「そう」

「お母さん」

「……」

「なんで?」

母はすぐには答えなかった。

代わりに、祖母の部へ向かった。

私はろをついていく。

母は部に入ると、机のに並んだ箱を見た。

歳。

歳。

歳。

歳。

歳。

歳。

その箱を見た母の表は、しみでも驚きでもなかった。

もっと複雑だった。

懐かしさ。

苦しさ。

そして、しだけり。

「まだ残していたんだ」

母が呟いた。

ってたの?」

ってた」

「全部?」

母は頷いた。

「おばあちゃんが何をしていたかも」

私は言葉を失った。

「じゃあ、どうして止めなかったの?」

母は箱から目をさなかった。

「止められなかった」

「どうして?」

「……おばあちゃんが嬉しそうだったから」

その答えが、だった。

母は子に座った。

織」

「うん」

「あなた、おばあちゃんがこの箱を見ているところを見たことある?」

私は首を振った。

「ない」

「私はある」

母はくを見るような目をした。

「毎、誕期になると、おばあちゃんは川さんから届いた箱をけていた」

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