"存在しない孫" 第4話
その言葉に、私は息を止めた。
「まれて……いない?」
「ええ」
川さんは箱を見る。
「だから、あなたが見つけたものは、の秘密ではないの」
「じゃあ、何なんですか」
川さんはししそうに笑った。
「叶わなかったよ」
その瞬。
私は理解できなかった。
ではない。
秘密の子でもない。
では、なぜ。
なぜも。
なぜ祖母は。
なぜこのは。
「……どういうですか」
川さんは子に座った。
「昔ね」
「さんは、私のおによく来ていたの」
「お?」
「子どもの」
川さんは懐かしそうに目を細めた。
「さなだったけどね。あなたのお母さんも、学の頃からっていた」
母。
学代。
私は黙って聞いた。
「直子さんはね、とても優しい子だった」
「でも」
川さんの声がしくなる。
「自分のことを回しにする子でもあった」
その言葉は、今の母にも当てはまった。
母はいつもそうだった。
自分より族。
自分より周り。
「」
川さんは続けた。
「直子さんには、きな選択があった」
私はを乗りした。
「どんな選択ですか」
「ここをること」
「……」
「京へくこと」
私は驚いた。
母が?
そんな話は度も聞いたことがなかった。
「直子さんは、で護の仕事をするも考えていた」
川さんは言った。
「本当は、もっと広い世界を見たかったなの」
私は母の顔をい浮かべた。
毎朝同じに起きる。
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決まったスーパーへく。
族の事を作る。
休も誰かの予定を優先する。
そんな母。
「でも、かなかった」
「なぜ?」
川さんはすぐには答えなかった。
「族があったから」
簡単な言葉だった。
でも、その奥に何かいものがある気がした。
「その頃、さんは病気だった」
「……」
「直子さんは、お母さんを置いてけなかった」
私は黙った。
母は祖母を選んだ。
祖母は、それをっていた。
「拓という名は?」
私が聞くと、川さんはし目を伏せた。
「それは……」
初めて迷う表を見せた。
「さんがつけた名」
「なぜ男の子の名を?」
「直子さんが昔、言ったことがあったから」
「何を?」
川さんは静かに言った。
「もし、いつか自分に子どもができたら」
「男の子なら、拓という名もいいねって」
部が静かになった。
私は箱を見る。
藤原拓。
しない孫。
祖母が待っていた子。
でも、本当は違った。
祖母が待っていたのは、ではなかった。
母が選ばなかった未来。
「じゃあ……」
私はゆっくり言った。
「祖母は、母が本当は別のを歩んでいたかもしれないってっていたんですか」
川さんは答えなかった。
それが答えだった。
「さんは、悔していた」
「自分のせいで、娘のを変えてしまったって」
私はし眉を寄せた。
「でも」
言葉が自然にた。
「母が選んだことですよね」
川さんは私を見る。
「そうね」
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「母は、自分で残ったんですよね」
「そう」
「だったら……」
私は言葉を止めた。
言いたいことが自分でも分からなかった。
祖母を責めたいのか。
母を配しているのか。
それとも。
今までらなかった母のに戸惑っているだけなのか。
川さんは静かに言った。
「さんは、直子さんをしていた」
「でも」
しを置く。
「しているのを、本より切にしようとしてしまった」
その言葉が、胸に残った。
。
でも。
それだけでは説できないもの。
私はまだらなかった。
この話の本当の問題は、拓がしなかったことではない。
しなかった未来を、誰が、どこまで切にしていいのか。
その答えを、これから母と向きって探さなければならないことを。
川文さんのは、町のからしれた所にあった。
正確には、「だった所」だった。
古い造の建物。
入の横には、あせた板が残っている。
『おがわ子ども』
文字の部はでくなっていた。
「まだ残しているんですね」
私が言うと、川さんはし笑った。
「片づけようとったことは何度もあるのよ」
「でも、なぜかできなくて」
鍵をける。
のには、が止まったような空気があった。
棚。
ミシン。
布の見本。
さな。
もう何もが入っていないはずなのに、議と汚れていなかった。
「ここで作っていたんですか」
「ええ」
川さんはミシンにを置いた。
「以ね」
「そんなに」
「子どもなんて、売れる期はいのよ」