"存在しない孫" 第2話
祖母が毎朝座っていた所。
私は机の引きしをけた。
通帳。
印鑑。
古い写真。
どれも普通のものだった。
その。
机の奥に、鍵のかかったさな引きしがあることに気づいた。
「……こんなのあったっけ」
鍵は机の横に置かれた皿のにあった。
まるで、誰かが見つけることを待っていたように。
私はし迷った。
祖母の秘密を勝に見るような気がしたから。
でも。
のに、さっきの名が浮かぶ。
藤原拓。
私は鍵を回した。
カチリ。
さな音がした。
引きしをける。
そこに入っていたものを見た瞬。
私は息を止めた。
古い写真。
。
そして。
さな箱が、いくつも並んでいた。
つではない。
つでもない。
数えてみる。
個。
個。
いや。
もっとある。
箱には、すべて同じ名がかれていた。
藤原拓。
そして、その横には齢のような数字。
歳。
歳。
歳。
歳。
歳。
歳。
私はゆっくりちがった。
部の空気が変わった気がした。
しない。
届き続ける荷物。
そして、祖母だけが守っていた何か。
私はまだらなかった。
この名が、私の母のを変えた「もうつの能性」をしていることを。
そして。
祖母が守り続けたものが、だけではなかったことを。
翌朝。
私は目覚ましが鳴るに目を覚ました。
理由は分かっていた。
のでも、あの名を見ていたからだ。
広告
藤原拓。
しないはずの。
なのに、祖母の部には分の記録が残されていた。
私は布団から起きがり、机のを見る。
昨けた箱は、そのまま置いてあった。
にはまだ触れていない。
怖かったわけではない。
ただ、けてしまえば戻れない気がした。
私は版社で何度も取材をしてきた。
には、話したくない過がある。
それを聞きす仕事をしている。
でも、自分の族の過をることは、の記事をくのとは違った。
ってしまったも、同じ顔で母を見ることができるのか。
それが分からなかった。
スマートフォンをに取る。
母の名を表示する。
藤原直子。
話をかけようとして、指が止まった。
母は、祖母の葬儀のもほとんど泣かなかった。
周囲からは、
「しっかりした娘さんね」
と言われていた。
でも私はっている。
母はがないではない。
ただ、何かをみ込むのがすぎるだった。
結局、私はメッセージを送った。
《お母さん、聞きたいことがあります》
数分もしないうちに返信が来た。
《何?》
私は写真を枚送った。
祖母の机のにあった箱。
名が見えるように。
藤原拓。
既読がついた。
すぐだった。
そして。
返信が来ない。
分。
分。
分。
普段ならい返事を返す母が、何も言わない。
その沈黙が、答えのようにじられた。
広告
私は話をかけた。
回目の呼びしで、母がた。
「……織」
声がいつもと違った。
「お母さん」
「それ、どこで見つけたの」
挨拶もなかった。
私は息を止めた。
「ってるの?」
話の向こうで、母が黙る。
「拓って誰?」
数秒。
母はさく息を吸った。
「その箱、閉じなさい」
「え?」
「聞こえた? その箱を閉じて」
「なんで?」
私はわず声をめた。
「おばあちゃんの部にあったの。毎届いていた荷物もある。拓っていうの名もある。なのに、私たちは誰もらない」
「……」
「お母さんはってるんでしょ」
母は答えなかった。
その沈黙が、何よりも苦しかった。
「拓は、誰なの?」
やっと母がをいた。
「……昔の話よ」
「昔?」
「もう終わったこと」
私は窓のを見る。
祖母のの庭。
昔から変わらない梅の。
「終わったことなら、どうしても荷物が届くの?」
その言葉の。
母はしばらく何も言わなかった。
そして。
さな声で言った。
「織」
「はい」
「その名を、誰から聞いたの?」
「誰からって……」
私は言葉に詰まった。
「荷物の宛名」
母の呼吸が変わった。
「荷物……?」
「昨届いたの。藤原拓宛て」
い沈黙。
そして母が呟いた。
「まだ続いていたのね」
その言で、私は確信した。
母はっている。
しかも。
昨初めてったわけではない。
ずっとっていた。
「お母さん」
「……」
「拓って、私の兄弟なの?」
その瞬。
話の向こうで、何かが落ちる音がした。
コップだろうか。
それとも、母がにしていた何か。
「違う」
母の声は震えていた。
「違うの」
「じゃあ何?」
「……」
「何なの?」
母は答えなかった。