みかん小説
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"存在しない孫" 第1話

祖母のを片づけるのは、っていたよりもがかかった。

も暮らした所には、その識して残したものよりも、識せずに積みねたもののほうがく残っている。

古い茶碗。

し黄ばんだカレンダー。

読み終えた聞。

庭の入れに使っていた袋。

どれも価なものではない。

けれど、捨てようとに取るたびに、そこに祖母の指先が触れていた像してしまう。

私は段ボール箱を閉じながら、さく息を吐いた。

「……本当に、何も欲しがらないだったんだな」

藤原

私の祖母。

父方ではなく、母方の祖母だった。

娘だった母を育て、夫をくしたも、この古い暮らしを続けていた。

くなったのは

眠るような最期だったと、所のから聞いた。

病院に運ばれることもなく、朝になっても起きてこない祖母を、訪問介護のが見つけた。

苦しんだ様子はなかったらしい。

それだけが救いだった。

私は版社の仕事を休み、京からこの町へ戻ってきていた。

版社で物インタビューの記事を担当している。

誰かのを聞き、それを文章にする仕事。

議なことに、の秘密を聞くことには慣れていた。

けれど、自分の族のことになると、何もらないことに気づかされる。

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祖母が若い頃、何を考えていたのか。

母が子どもの頃、どんな庭だったのか。

私はほとんどらなかった。

母は昔から、自分のことをあまり話さないだった。

聞いても、

「普通だったよ」

と笑うだけ。

その笑顔の奥に何があるのか、私はく考えたことがなかった。

リビングの計を見る。

階の理を終わらせて、階にをつける予定だった。

そんなだった。

玄関のチャイムが鳴った。

「はい」

返事をしながら玄関へ向かう。

そこにっていたのは、見慣れた制姿の郵便配達員だった。

「藤原さんのお宅で違いないでしょうか」

「はい。祖母はくなりましたが、今は私が理をしています」

配達員の男性はし困ったような表を浮かべた。

「そうでしたか……」

そして、に持っていたさな箱を確認する。

「こちら、お届け物です」

差しされた箱には、送り状が貼られていた。

私は何気なく宛名を見た。

そして、指が止まった。

「……え?」

そこにかれていた名

違いかとった。

もう度見る。

けれど、文字は変わらない。

宛名。

藤原拓

所。

この

私は顔をげた。

「すみません」

「はい」

「この荷物……宛名、違っていませんか?」

配達員は首を傾げた。

違って……ですか?」

「はい。藤原拓というは、このにはいません」

数秒の沈黙。

配達員は箱と私の顔を交互に見た。

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「……そうですか」

「はい」

「でも」

彼はし迷ったあと、静かに続けた。

「この名の荷物は、毎ここに届いています」

に、たいものがった。

「毎……?」

「はい」

「いつからですか?」

配達員は送り状を確認した。

「私が担当になってからなので、ほどからですが……引き継ぎの記録を見る限り、そのから続いているようです」

私は言葉を失った。

いや、それ以

このに、しない宛ての荷物が届き続けていた。

「送り主は?」

私が尋ねると、配達員は箱の横を見る。

川文さん、となっています」

らない名だった。

「祖母のいでしょうか……」

自分でも驚くほどさな声がた。

配達員は首を横に振る。

「そこまでは分かりません。ただ……」

「ただ?」

「毎、同じ期に届くんです」

彼は箱を私に渡した。

切なお届け物だといます」

私は受け取った。

軽い箱だった。

子どもでも持てるくらいのさ。

なのに、なぜかのひらに妙な圧をじた。

玄関の扉を閉める。

静かなに戻る。

私はもう度、送り状を見る。

藤原拓

その名してみる。

「……誰なの」

返事はない。

当然だった。

このには、そのはいない。

なのに。

誰かは、この名を忘れずにいた。

私は箱を持ったまま、祖母の部へ向かった。

理由は分からなかった。

ただ、なぜかった。

祖母ならっている。

この名を。

祖母の部は、くなってからほとんどをつけていなかった。

古い製の机。

薬の入ったさな箱。

読みかけの本。

そして、窓際に置かれた脚の子。

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