"財産は長男へ――8年間介護した次男に残されたのは、古びた倉庫一軒だけだった" 第9話
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その夜、浩司は改修を始めた倉庫の作業台へ、父の腕計を置いた。420分で止まったままの内部を調べると、故障では説できない細が見つかった。
計は壊れて止まったのではなく、誰かので図に止められていた。
第12話 420分からきす
100億円を超えるを相続しても、浩司は広いや級を買わなかった。野と税理士の指示に従って相続税を申告し、納税と当面の活、千恵の学費に必な分だけを正規の取引業者へ売却した。残りは系の保管施設に置き、族の活資と事業資を分けて管理した。
最初に買ったのは、痛めた腰を支える医療用の子だった。
次に直したのは、古びた倉庫の根と窓だった。
壁の隠し扉と空になった庫はそのまま残し、の作業のを張り替え、源を引き直して、型旋盤と測定器を入れた。改修を伝ったのは、裁判で証言した元の泰造だった。
「8ぶりに現へ戻る男が、最初から自分のを持つのか」
が笑うと、浩司も具を置いて笑った。
「履歴では、介護していた8が空になりました。でも、ここへ来たらもう度やれるとったんです」
「おの腕まで空になったわけじゃない。械をかせば分かる」
浩司が採用したのは、母親の介護でを辞めた元研磨職、子供の治療への付き添いを理由に契約を切られた検査員、が紹介した若い旋盤の3だった。
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族の通院や介護があるは交代できるよう、勤務を律にしなかった。
「8を空にしない会社にしたい」
はその言葉を聞き、しい会社印を作ってきた。印面には、かつて父が掲げたのと同じ《武田精密》の名が彫られている。
最初の仕事は、元の医療器会社から依頼された試作部品だった。浩司は刃物の音を聞きながら加条件を調し、腰に負担がかかるに子へ座って、若い職へ測定方法を教えた。完成品の検査値はすべて許容範囲の央に収まり、担当者は次の試作も任せたいと言った。
械の音が戻った夜、浩司は作業台へ父の腕計を置いた。
ぜんまいは巻き切る直でされ、420分からまないよう固定されていた。父は偶然止まった計に暗号を残したのではない。自分ので、千恵がまれた刻に止めていたのだ。
浩司は古い油を落とし、部品を洗浄して、ぜんまいを正しい位置へ戻した。竜を静かに巻くと、さな歯が噛みい、止まっていた秒針が1秒ずつへみ始めた。
翌の午、の計が420分を指した、千恵から話がかかってきた。
「お父さん、学の格発表、今から緒に見てくれる?」
苗が自宅のパソコンの横にち、浩司はからスマートフォンの画面を見守った。千恵は震える指で受験番号を入力し直し、表示された2文字を見た途端、両で顔を覆った。
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〈格〉
、千恵は82万円の納付を自分でしまい、学を諦めた。今回は格通としい納付を族3で確認し、期限を待たずに正規の座から振り込んだ。
、千恵は理学療法学科へ学した。武田精密にもしずつ仕事が増え、浩司は族介護を理由に職した技術者を、履歴の空だけで断らず、実際の腕を見て受け入れるようになった。
父の周忌、浩司は苗、千恵と墓を訪れた。栗ようかんを供え、庫を見つけたこと、裁判が終わったこと、倉庫に械の音が戻ったことを報告する。
「千恵も学に受かった。父さんがつないでくれた」
首の腕計は、もう420分で止まっていない。父が遺した刻は秘密をく数字であると同に、族のが再びきす図になった。
苗と千恵が先に歩きしたあと、浩司は墓へを触れた。
介護の8、父が眠ったあとも、呼吸が止まっていないか配で何度も起きた。静かすぎる夜には、胸へを当てて確かめた。しかし、もうその必はない。
浩司は正しいを刻む計の音を聞き、穏やかに笑った。
「父さん。今度は、ゆっくり眠れ」