"留守番を命じられた妻" 第12話
応接の扉を閉めた、15の結婚活も、ようやく完全に終わった。
第12話 父が残したもの
実の解体事が始まったのは、婚協議が成した翌週だった。
私は現へかなかった。父が本ずつ柱を組み、自分ので建てたが壊される姿を見る勇気はなかった。
夕方、森田さんから話があった。
「無事に終わったよ。柱や梁は状態がよかったから、廃材にはしなかった。りいの務が引き取って、別ので使ってくれるそうだ」
父が選んだ材が、今度は見らぬ誰かの暮らしを支える。それを聞くと、胸のに残っていた痛みがしだけほどけた。
数、森田さんは私のマンションへさな包みを届けてくれた。に入っていたのは、黒柱から切り取った方形の片だった。
表面には、父の字が残っている。
「由美子、18歳」
「勝に持ってきて悪かったかな」
「いいえ。ありがとうございます」
私は片を胸に抱いた。を売ったことに悔はない。それでも父とのいがこうして元へ戻ってきたことが、たまらなく嬉しかった。
売却代の5800万円は、諸費用を差し引いて私名義の座へ振り込まれた。誰にも奪われず、誰かの見栄のために使われることもない。これからのを、自分ので選ぶためのおだった。
その数、浩司がと腕計を売った代、計230万円が最初の支払いとして振り込まれた。
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残る770万円についても、公正証に従って毎返済される。通帳に記された数字を見ても、失った15が戻るとはわなかった。ただ、私を利用した責任から、もう逃げられないのだと実した。
川先から届いた封筒には、婚届受理証も入っていた。はたった枚だったが、そこには私を縛っていた結婚が正式に終わったことが記されている。私はそれを父の類とは別の、しいクリアファイルへ収めた。
浩司はを売り、い賃貸へ移った。懲戒解雇の経歴があるため再就職は難しく、雇いの仕事をしながら1000万円を返済することになったという。
優は実へ戻り、浩司とは別れた。まれてくる子どもをどう育てるかは、彼女自が選び、責任を負うことだ。私が関わる理由はもうない。
子は妹のへを寄せたものの、嫁を追いして息子とをまわせようとした事が親族にれ渡り、以のようにきな顔はできなくなった。価な着物も、広いも、世話をする嫁も失った。
彼らの転落を聞いても、が躍ることはなかった。親族会議で証拠を並べ、浩司が会社から呼びされた瞬、私の復讐は終わっていたからだ。
私は駅くのさな図館で、週4の仕事を始めた。本の修理や貸業務はだが、静かな館内で働くが好きだった。
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誰かの顔を読み、帰宅に怯える必もない。
休には、ベランダでさな盆栽を育てている。父の剪定鋏は入れをし直し、今も分に使えた。
ある朝、伸びすぎた枝を切り、鉢の向きをえると、柔らかなが若い葉へ差し込んだ。鉢のには、森田さんが届けてくれた黒柱の片を置いている。
「お父さん、今度こそ切に育てるね」
私は剪定鋏を置き、台所で分の噌汁を温めた。湯気のつ椀を卓へ運び、ゆっくりをつける。温かいが体の奥まで広がった。
あのでんだたい噌汁も、玄関先で留守番を命じられた朝も、もうい過だった。
父が私に残した最の財産は、5800万円のでも、派なでもない。
「誰かに慮しないで、自分の好きなようにきろ」
その言葉のを、私はようやく理解した。
あの、留守番を命じられた私は、15ぶりに自分のへ帰ってきたのだ。