"帰る家は、ちゃんとあった" 第7話
「どうして私が、あなたのお母さんの介護と、あなたの事のために戻らないといけないの?」
「夫婦だろ」
「もう終わらせるって言ったでしょう」
「俺は認めてない」
私は用していた婚届を取りした。
「私の欄はいてあります。あなたもいて」
順の顔が変わった。
「ふざけるなよ」
「ふざけてないわ」
「俺はおのために頑張ってきたんだぞ! おがいなくなったせいで、俺も母さんも苦労してるんだ!」
「じゃあ私がいた、あなたは私をどう扱ってた?」
順が黙った。
「嫌みを言って、仕事を見して、お母さんが私を傷つけても守らなかった。今更何を言っても無駄よ」
「いいから戻ってこい!」
突然、順が声をした。
「俺は婚なんかしない! おには俺と母さんの面倒を見る義務があるんだよ!」
私はゆっくり息を吐いた。
昔の私なら、鳴られれば黙ったかもしれない。
でも今は違う。
「これ以騒ぐなら警察を呼ぶわ」
順の勢いがし止まった。
「それと、今ここで婚届をかないなら弁護士に相談します」
「弁護士?」
「あなたとお母さんからされたことについて、慰謝料請求も含めてね」
順の表が変わった。
「そんな事にすることないだろ」
「今ここでいてくれるなら、慰謝料請求まではしない」
私はペンを差しした。
順はしばらく婚届を睨んでいた。
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そして舌打ちをすると、乱暴な字で記入した。
「ほらよ!」
を投げるように渡してきた。
私は確認した。
「ありがとう。役所には私がします」
にっこり笑って言うと、順はもう度舌打ちし、乱暴な音をてて帰っていった。
私はそのろ姿が見えなくなるまで待った。
そしてそののうちに役所へ向かった。
婚届は無事に受理された。
窓をれた、私はく息を吐いた。
これで本当に、順とはになった。
そのの夕方、兄のが実へ来た。
婚するまでの事は、事にメールで伝えてあった。
それでも改めて話をすると、兄は黙って最まで聞いてくれた。
「そうか」
話し終えた私の肩を軽く叩いた。
「よく言ったな」
「ってないの?」
「何を」
「もっとく相談しろって」
兄はし笑った。
「ってるよ。でも今はそれより、れられて良かった」
そして、昔と変わらない穏やかな声で言った。
「霞、おはもう自由だ。こので自分のを取り戻せ」
胸がくなった。
私はく頷いた。
実での暮らしは、っていた以に適だった。
順と暮らしていた頃は、事をするにも常に誰かの目を気にしていた。
事の。
掃除の仕方。
洗濯物の畳み方。
義母が突然来るかもしれないという緊張。
それが全部なくなった。
好きな音楽を流しながら台所へつ。
蔵庫には兄が々送ってくれる野菜や果物が入っている。
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それを使って料理をするが、こんなに楽しいとはわなかった。
夜はきな窓からかりの入るリビングで、本を読んだ。
ページをめくる音しか聞こえない。
「静かだな……」
わず独り言がた。
寂しいのではない。
できる静けさだった。
これほど穏やかに夜を過ごしたのは、いつ以来だろう。
しかし、その静かな活はく続かなかった。
ある、玄関のインターホンが鳴った。
宅配便だとってドアをけると、そこにいたのは順だった。
婚したよりも、さらに疲れた顔をしていた。
「何?」
私はたく聞いた。
「連絡もなく来ないでほしいんだけど」
順は挨拶もせずに言った。
「施設だよ!」
「何の話?」
「母さんの施設!」
順は苛ちを隠そうともしなかった。
「やっと条件のいいところを見つけたとったら、そこの経営者がおの兄貴だったんだ!」
私は瞬、言葉を失った。
だが、すぐに事を理解した。
兄は介護事業を経営している。
私が宅でしていた仕事も、その会社の事務だった。
順はそれまで、私が兄の会社で働いていることも、兄が介護事業をしていることもらなかった。
私の仕事に興を持とうとしたことが度もなかったからだ。
「それで?」
私が聞くと、順は声をさらにきくした。
「それで、じゃねえよ! あいつのせいで母さんの入居を断られたんだぞ!」
「そう」
「しかも、おもその会社で働いてたんだって?」
「ええ」
「そんなの聞いてないぞ!」