"帰る家は、ちゃんとあった" 第2話
私が何気なくそう言った、祖母がどんな表をしていたのかはいせない。
ただ返事がなかったことだけは覚えている。
祖父母のは幼稚園から極端にいわけではなかったが、常に迎えに来る距でもなかった。私は祖母にを引かれながら、何度も母の姿を探した。
そのまま連れてかれたのは、ではなく病院だった。
病院には見慣れないほどたくさんの親戚が集まっていた。
たちは慌ただしくき、誰も私の目をきちんと見ようとしない。
そこには、3歳の兄、もいた。
当8歳だった兄は、廊のい子に座り、顔を真っ青にしていた。
「お兄ちゃん」
私が隣に座ると、兄は何も言わずに私のを握った。
そのは汗で湿っていた。
私はまだ何が起きたのか理解していなかった。
「ねえ、みんなどうしたの?」
兄は答えない。
「パパとママは?」
返事はなかった。
「おに帰らないの?」
何度聞いても、兄は黙ったままだった。
ただ、私のを握る力だけがしずつくなった。
から聞いた話では、その、父は休みを取っており、母と2でに乗って買い物へかけていたらしい。
途で居眠り運転のと衝突し、2とも病院へ搬送された。
事故による損傷がひどかったため、幼い私たちは両親に会わせてもらえなかった。
兄はたちの様子から、何か取り返しのつかないことが起きたとじ取っていたのだとう。
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私はそれさえ理解できなかった。
ただ、いつまで待っても父と母が現れないことが怖かった。
そのの夜、私と兄は祖父母のへ連れてかれた。
両親がくなったことをきちんと伝えられたのは、それから数だった。
祖父は古びた畳の部に私と兄を座らせ、い黙っていた。
やがてく息を吐き、い声で言った。
「おたちには、つらいことを言わなきゃならん」
隣に座っていた祖母は、目を赤くしていた。
「でもな、これからはじいちゃんとばあちゃんが緒におるから」
続く説を、当の私はほとんど理解できなかった。
に残ったのは、ただ1つ。
パパとママには、もう会えない。
「もう会えないって、も?」
私が聞いた。
祖母が泣きした。
それを見た瞬、私もようやく泣いた。
声をげて泣く私の横で、兄だけは泣かなかった。
「丈夫だから」
さなで私の背をさすりながら、何度もそう言った。
「俺がいるから」
その夜、私は祖父母のの布団で眠った。
真夜にふと目を覚ますと、隣の布団からさなすすり泣きが聞こえた。
兄だった。
昼、私のでは泣かなかった兄が、布団をまでかぶり、声を殺して泣いていた。
私は目を閉じたまま、何も言えなかった。
祖父母のは古い本だった。
廊は歩くたびにきしみ、仏壇のある部には線のりが漂っていた。
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それまで両親と暮らしていたとは何もかも違った。
祖母は毎朝私の髪を結ってくれた。
祖父は兄の学の準備を確認し、忘れ物がないよう声をかけていた。
「2とも、派に育てるからね」
祖母は何度も言った。
それでも、兄は自分のことより私を優先した。
私が夜に両親をいして泣けば、隣に来てくれた。
学で嫌なことがあれば話を聞いてくれた。
祖母がそんな兄を見て、たしなめたこともある。
「、あんたはまだ子供なんだから、自分の配もしなさい」
それでも兄は首を横に振った。
「僕が霞を守るから」
そのから、兄は私にとって兄であると同に、親のようなになった。
兄は、本当にその言葉通りにきた。
祖父母も私たちを切に育ててくれたが、私の番くにいて、いつも先のことまで考えてくれたのは兄だった。
私が学になった頃も、へむ頃も、何か迷うたびに兄は緒に考えてくれた。
「霞が自分で決めたなら、それでいい」
兄はいつもそう言った。
両親がいないからといって、私に何かを諦めさせることもしなかった。
私は兄と祖父母のおかげで、きくをすことなく成できたのだとう。
やがてを卒業した兄は、自分のを切りき、会社をちげた。
幼い頃から責任のいだったが、仕事を始めてからはさらに逞しくなった。