"預かったままの革靴" 第11話
族を失い、む所も仕事も定まらず、それでも必にきていた。
何でもできるだったわけではない。
むしろ、健と同じように、そのの先が見えないだった。
「俺はだから何とかなる」
あのの言葉をいすたび、健はし笑った。
きっと何とかなる保証などなかったのだ。
それでも、9歳のをさせるためにそう言った。
自分が寒いことより、目のの子どもが濡れた靴を履いていることの方を気にした。
その事実が、齢をねるほど健の胸へく残るようになった。
若い頃は、革靴をくれたことだけがありがたかった。
しかし自分もになり、活する変さをってからは、あのの男が放したもののさがし分かるようになった。
自分も分に困っている、へ何かを渡す。
それは余裕のあるがする親切とはし違う。
だからこそ、健はあの革靴を簡単な美談として話したくなかった。
男は派なになろうとして靴を渡したわけではない。
ただ、かつて自分が握り飯をもらったの気持ちを覚えていた。
そして同じように困っているを目のにした、自分にできることをつした。
それだけだった。
それでも、その「つ」が18残った。
さらにその先も残った。
健が若い職に話せば、その職もまた、誰かの靴をし丁寧に扱うようになるかもしれない。
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そのが別の誰かへ親切にすることもあるかもしれない。
もちろん、そんな先のことは誰にも分からない。
握り飯をくれたも、自分のがの革靴へつながるとはらなかった。
革靴を残した男も、が靴職になり自分のまで持つとは考えていなかった。
だから健は、結果をる必はないのだとうようになった。
自分が受け取ったものを、自分のところで止めない。
それだけでいい。
の棚のに置かれた黒い革靴は、そのことを健にいさせ続けた。
昭の並みはさらに変わっていった。
駅の靴磨きを見ることもほとんどなくなり、健が箱を置いていた所がどこだったのかさえ、次第に分からなくなっていった。
けれど、景がなくなっても記憶まではなくならなかった。
健のには、あの頃覚えた磨き方が残っている。
革靴には、あの男が歩いてきた傷が残っている。
そして健のには、「誰かから受け取ったものは、いつか別の誰かへ渡せばいい」という言葉にならない覚が残っていた。
閉、健は最に度、のから棚を見た。
ガラス越しに、黒い革靴が見えた。
品のような輝きはない。
流の形でもない。
誰かが見れば、どうしてそんな古い靴を番目つ所へ置いているのか議にうだろう。
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それでよかった。
そのをっているのは健だけでもよかった。
あの靴は、誰かに見せるための記品ではない。
9歳の自分が今まで歩いてきたを、忘れないためのだった。
そして同に、名もらない誰かから始まった親切が、確かに自分のところまで届いたことを示すものでもあった。
健はの戸を閉め、鍵をかけた。
商を歩きす。
元には、自分で入れした革靴がある。
歩むたび、かかとがさな音をてた。
は、自分の力だけでここまで歩いてきたとうことがある。
けれど振り返れば、の途には名も覚えていないの言葉や、ほんのさな親切が残っている。
それに支えられた瞬を、そのは気づかないこともある。
健にとって、それはの革靴だった。
の駅で渡された古い靴は、18度も彼のに履かれなかった。
それでも、どんな靴よりい距を健と緒に歩いた。
だったから、職になるまで。
職から主になるまで。
そして今度は、その話を聞いた次の世代へ。
革靴は棚のに残ったままでも、そのに込められたものだけは、これからもしずつ先へんでいくのだった。