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"48歳の誕生日、母親をやめました" 第12話

あと数発見が遅れていたら、命はありませんでしたよ」

医師の言葉が、彦の胸にくのしかかる。

彦は震える声で必に言い訳をした。

「妻が急にいなくなってしまって、私1ではどうすることもできなかったんです」

医師は彦を睨みつけた。

「それは理由になりません。ご族の命を守るのはあなたの責任です。今まで奥様に全てを押し付けていた結果ではないですか」

彦は何も言い返せず、ただげるしかなかった。

に入ると、忍が点滴を打ちながら横たわっていた。

その顔は青く、すっかり痩せ細って見えた。

彦が声をかけると、忍はゆっくりと目をけた。

「親父、すまなかった」

忍は掠れた声で、最初に久美子の名にした。

彦、久美子さんは来ていないのか」

彦は首を横に振った。

「まだ連絡が取れないんだ」

忍の目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。

忍は絞りすように言った。

「わしが、わしが馬鹿だったんだ」

忍は顔を歪めた。

「誕、来やればいいなんてひどいことを言った。毎はの世話をしてくれた恩を、わしは追いしてしまったんだ」

忍のからの悔を聞いて、彦も涙をこらえきれなかった。

夜、彦は取りで自宅へと帰ってきた。

玄関のドアをけると、は真っ暗だった。

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そしてゴミの悪臭が、さらにくなっている。

気をつけると、そこには信じられない景があった。

健太と美結が毛布に包まって、に座り込んでいたのだ。

彦は驚いて声をかけた。

「おら、何をしているんだ」

美結が真っ赤に腫らした目を向けてきた。

「お腹空いた。寒くて眠れないよ」

健太もすっかり元気をなくして俯いている。

「お父さん、飯ないの」

つい数まで気なを叩いていた子供たち。

その面はもうどこにもなかった。

親鳥を失った雛のように、ただ震えているだけだった。

彦はコンビニで買ってきたおにぎりを、2に差しした。

2は無言でそれにびついた。

泣きながらおにぎりをべる子供たちを見て、彦は唇を噛んだ。

彦は鞄からノートを取りした。

「おたちに見せなきゃいけないものがある」

族運営マニュアルとかれた、久美子のノートだ。

これを読んで、自分たちが何をしてきたかるべきだ。

彦はノートをき、健太のページを読みげた。

「健太の部活のユニフォームは必ず洗いでを落とすこと。洗濯だけではあの汚れは落ちないから。お弁当の卵焼きはし甘めにしてあげること。文句を言いながらも、いつも残さずべてくれるから」

健太の、おにぎりを握るがピタリと止まった。

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健太は涙をこぼした。

「母さん、俺のことそんなに見てたのか。俺、弁当に文句ばっかり言ってて、本当に最だった」

続いて彦は美結のページを読んだ。

「美結のブラウスは肌がいから専用の洗剤を使うこと。アイロンは温で絶対にシワを残さないように。友達ので恥ずかしいいをさせないために」

美結は両で顔を覆い、声をげて泣きした。

「私、お母さんのこと面倒臭いって言っちゃった。1番私のこと切にしてくれてたのに」

彦は子供たちの涙を見ながら、次のページをめくった。

そこには族全員の好きなべ物がかれていた。

彦の好きなすき焼き、健太の好きな唐揚げ、美結の好きなナス、忍の好きな煮魚。

族の好みやアレルギーが細かく、びっしりと記録されている。

久美子は族の全てをっていた。

族が笑顔になるために、毎に考えていたのだ。

彦はノートの最のページをいた。

そこには『私のこと』というさな見しがあった。

彦はハッと息を呑んだ。

そこには久美子の好きなものやが、かれているはずだった。

しかしそのページは、完全に真っだったのだ。

何ひとつ文字がかれていない。

彦が呟くと、健太と美結も覗き込んだ。

「なんだこれ。どうして何もいてないんだ」

3に、恐ろしいほどの沈黙が流れた。

美結が震える声で尋ねた。

「お父さん、お母さんの好きなべ物って何」

彦は答えようとしていた。

しかし言葉が全くてこない。

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