"「介護が悪い」と責めた家族の3日後" 第26話
自分のためだけに温かいコーヒーを淹れ、窓際のさな子に座る。
スーパーで買ってきたパンをかじりながら、空を流れるをただぼんやりと眺める。
それは11ずっと欲しかった、誰にも邪魔されない静かなだった。
先、久しぶりに形科を受診した。
私の顔を見た配の医師は、カルテから目をげて驚いたような顔をした。
「佐藤さん、顔が随分と良くなりましたね。」
医師は笑顔で言った。
「肩の筋肉のこりも、に比べたらずっと柔らかくなっていますよ。」
「はい。先のおかげで、し休むことができました。」
私はからのお礼を言い、湿布をもらって帰った。
所のスーパーで自分のべたいものだけをカゴに入れる。
夜は好きなテレビ番組を見て、眠くなったらそのまま布団に入る。
誰の顔を伺うことも、夜に咳の音でび起きる恐怖に怯えることもない。
私はこのさな部で、削られ続けてきた自分自の輪郭をしずつ取り戻していた。
あるの午、アパートの部で本を読んでいるとスマートフォンがく鳴った。
画面を見ると、弓からのメッセージだった。
『さん、元気ですか?今お母さんが久しぶりに声をして笑ってくれました。』
メッセージには、子に乗った義母の写真が添えられていた。
膝のにさな束を置き、しだけ恥ずかしそうに、でも嬉しそうに微笑んでいる義母。
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その隣には、し疲れた顔をしながらも優しく笑う弓が写っていた。
今は義母の85歳の誕だった。
私が実にいた頃は、俊夫が見栄を張って親戚をたくさん呼び、私が1で朝から料理を作り続けていた。
しかし今の誕は、弓と義母、そして訪問護師さんたちだけでささやかにお祝いをしたようだ。
『さんが残してくれたノートのおかげで、しずつですがコツが分かってきました。』
弓からのメッセージには、素直な謝の言葉が綴られていた。
『お兄ちゃんは相変わらず何も伝いませんが、もう空気だとっています。』
弓の言葉は続いた。
『今度、ショートステイが休みのにお母さんと緒にさんのアパートのくまで散歩にってもいいですか?』
私はその画面を見つめながら、自然と涙が溢れてきた。
しいからではない。
私が11守り続けてきたは、決して無駄ではなかったのだとからえたからだ。
私はスマートフォンの画面をタップし、い返信を打った。
『もちろんよ。駅の喫茶に柔らかくて美しいケーキがあるから、緒にきましょうね。』
血の繋がりも、戸籍の関係ももうない。
それでも私と義母、そして弓のには確かなしい絆が芽えていた。
それは世や見栄で縛られた過の族とは違う、本当のでのいやりで結ばれた形だった。
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方、実の暗い部のでは、俊夫が1でいカップラーメンをすすっていた。
誰にも祝ってもらえない母親の誕。
誰からも必とされない自分自の。
彼はついに自分が何を失ったのかを、え切ったので骨の髄までいらされていた。
のがしずつのたさを帯びてきた。
しかし私ののは、これまでにないほどの温かさで満たされていた。
の気配が濃くなり始めた12の曜。
私は駅にある喫茶の窓際の席に座っていた。
テーブルには温かい茶が2つと、柔らかいシフォンケーキが置かれている。
窓のを歩くたちは、のコートの襟をて、い息を吐いていた。
私が自分のためだけにを使う。
その当たりの休の景が、たまらなくおしくじられた。
やがて駅のロータリーに、1台の介護タクシーが止まった。
部座席からリフトがり、子に乗った義母さんが姿を現した。
そのろで義妹の弓が、しっかりと子のグリップを握っている。
2の姿を見つけた瞬、私は自然と笑顔になり、のへ迎えにた。
「さん!」
義母さんは私を見ると、しだけ麻痺の残る顔で嬉しそうに微笑んでくれた。
「寒くなかったですか?」
私が子の横にしゃがみ込んでを握ると、義母さんはゆっくりと首を横に振った。
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