"「介護が悪い」と責めた家族の3日後" 第12話
ただ消毒液の匂いだけがく残っていた。
俊夫はネクタイを緩め、無理にるい声をした。
「いや、母さんがいないとが広くじるな。これでしはゆっくり休める。」
彼は何事もなかったかのように振るおうとしていた。
しかし弓はリビングの央にち尽くしたままだ。
そしてテーブルのに置かれていた分いファイルをに取った。
私が残していった11分の介護ノートだ。
弓はそれを無造作に持ちげると、俊夫の胸に力く押し付けた。
「ちょっと弓、何するんだよ。」
弓の声は氷のようにたく静かだった。
「読んで。」
俊夫が怪訝な顔をした。
「お兄ちゃんが伝っていたつもりになっていた11の現実が、そこに全部いてあるから。」
俊夫はノートをテーブルに投げした。
「俺は疲れてるんだ。そんなもの誰が見る。それよりさっきのの作り話だけどな。」
「作り話?」
弓はゆっくりと兄の顔を見据えた。
その目にははっきりとした軽蔑のが浮かんでいた。
「ゴルフクラブの件、作り話だっていうの?」
俊夫は言葉に詰まった。
「あ、あれは俺の遣いを貯めて買ったんだ。の奴、母さんのだと勘違いして……」
「じゃあ3ののことは?」
弓がさらに歩兄に詰め寄った。
「3の、お母さんが肺炎になりかけて、さんが1で救急来にった週があったよね。
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あの、お兄ちゃんは何をしてたの?」
俊夫の顔から再び血の気が引いた。
「お、俺は徹夜で病……」
「嘘をつかないで!」
弓の鳴り声が静かなリビングに響き渡った。
弓はテーブルののノートをめくり、あるページを指差した。
「ここにいてある!お兄ちゃんは会社の同僚と泊の温泉旅にってたって!さんが1で泣きながら夜の病院で続きをしてたって!」
「そ、それはどうしてもせない付きいで……」
「最よ。」
弓のからたその言は、どんな罵倒よりもく俊夫の胸を刺した。
「私は昨、お母さんのおむつを1で3回変えた。むせ込む背をさすりながら、怖くてが震えた。」
弓は兄を睨みつけた。
「それをさんは111でやってたのよ。お兄ちゃんが温泉にったりゴルフにったりしているずっとね!」
弓の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
それはりの涙であり、自分自の無を恥じる涙でもあった。
弓はバッグを掴んだ。
「私は帰る。これ以、お兄ちゃんの顔を見たくない。」
弓は自分の荷物を掴み、に玄関へ向かった。
俊夫は慌てて引き止めようとした。
「待てよ!おが帰ったら夕飯はどうするんだ?」
その言葉を聞いて、弓は玄関でち止まった。
振り返った彼女の目は、完全にめ切っていた。
「本当に自分のことしかにないのね。
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自分でコンビニ弁当でも買ってくれば。」
ドアがたい音をてて閉まった。
広いのに、俊夫はたった1で取り残された。
誰も彼を世話してくれない。
誰も彼を気遣ってくれない。
本当の孤独が彼を包み込んだ。
しかし俊夫のを満たしていたのは、反省ではなかった。
激しい焦燥と自分の保に対する恐怖だ。
「の奴、なんで通帳のことに気づいたんだ……」
彼は独り言をつぶやきながら、部のを歩き回った。
義母のが振り込まれる通帳。
俊夫はそれをには絶対に見せないように隠していた。
に数万円、たまに10万円。
しずつ引きせば、のような世らずの専業主婦には分からないとっていた。
そので輩に酒を奢り、親の介護をしながら働く派な男という虚像を作りげていたのだ。
俊夫は突然、何かに気づいたように顔をげた。
「まさか……」
彼は靴で廊をり、義母の部の隣にある仏壇へ向かった。
息を切らしながら、古い仏壇のにあるさな引きしをける。
そこは俊夫が義母の通帳や、な類を隠していた所だった。
俊夫のが震えていた。
引きしのを乱暴に畳のにぶちまける。
古い線の箱、数珠、過帳、な類の束。
しかし、肝のものがなかった。
緑の表をした義母の通帳。
そしての印鑑。
何度探してもどこにもなかった。
「あいつ、持ちしやがったな!」
俊夫は畳のにへたり込み、両でを抱えた。
全から嫌な汗が吹きしてくる。
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