"三度目の金色の玉" 第11話
息子が受験を控えていた。
古いストーブは壊れかけていた。
自分だけならしたかもしれない。
しかし息子が夜遅くまで勉する部が寒い。
だから、初めて受け取った。
誰かのを受け取ることは、負けることではない。
そのことを千代自もしずつ受け入れたのかもしれない。
そして3目。
自転が当たった。
千代はもう、自分に必かどうかだけを考えなかった。
聞配達をしているをいした。
父親が病気で働けず、朝夕の配達をしながら学へ通う。
自転は、自分よりあの子が使った方がいい。
そう考えた。
「福引で当たったから、使いなさい」
それだけ言って渡した。
には、信夫の事もらされなかった。
森田たちの仕掛けもらされなかった。
千代がから等の秘密へ気づいていたこともらない。
ただ自転だけが、必なのもとへ届いた。
森田たちが信夫へ返したかったものを千代が受け取り、今度は千代が別の誰かへ渡した。
そこには帳簿もなかった。
誰が誰へいくら返したという計算もない。
受け取った親切を、次へ渡す。
ただそれだけだった。
だから千代は森田へ言った。
「今は、私が次のに渡しました」
そして最に、
「主だったら、たぶん同じことをしたといます」
と続けた。
その言葉を聞いた、森田が何も言えなくなった理由を、俊夫は今なら理解できた。
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信夫が事のへ入ったのも、同じだったのだろう。
自分が得をするからではない。
で何か返してもらえるからでもない。
困っているが目のにいる。
だからく。
そのが何もになって、形を変えて戻ってくる。
そして戻ってきたものが、さらに別の誰かへ渡っていく。
昭53。
商の福引で3続けて等を引いた女。
その来事だけを聞けば、奇妙な幸運の話に見える。
あるいは福引を操作した正の話にも見える。
事実、両方とも違いではなかった。
千代は3続けて等を引いた。
森田は3、の玉を図に抽選器へ入れた。
けれど、その理由をらなければ本当の話にはならない。
あるの、商を守った男がいた。
その男がいなくなったあと、残された妻を何とか支えようとしたたちがいた。
支えられることを拒む女がいた。
その気持ちを傷つけないよう、福引という形を借りたたちがいた。
そして女は、受け取ったものを自分のところで止めなかった。
晦の夕方。
商のがしずつじまいの準備を始めた頃、俊夫は百のへた。
の空はもう暗かった。
正用の買い物を終えた々が、荷物を抱えてを急いでいる。
福引所では、最の客たちが順番を待っていた。
1の子どもが抽選器を回した。
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ガラガラ、ガラガラ。
コロン。
い玉。
「あーあ」
子どもが残そうな声をげる。
係の男が笑いながら、ポケットティッシュを渡した。
「はい、これでも当たりだよ」
子どもはすぐ笑顔になった。
その姿を見て、俊夫も笑った。
でなくてもいいのかもしれない。
本当に切なものは、玉ので決まるわけではない。
自転でもない。
炊飯器でもない。
油ストーブでもない。
誰かが自分のことを覚えてくれていたこと。
困ったに、誇りを傷つけないようを差し伸べてくれたこと。
そして自分が受け取ったものを、今度は別の誰かへ渡せたこと。
それこそが、千代が3で受け取ったものだったのかもしれない。
俊夫はへ戻ろうとして、もう度商を振り返った。
の旗がのに揺れている。
魚の声。
じまいを始める乾物。
レコードから流れる。
福引器が回る音。
何も続いてきた、いつもの歳末の景だった。
けれど俊夫には、以とはし違って見えた。
父親の言葉が、ようやく胸のに落ちた気がした。
商という所で売られているのは、物だけではない。
い付きいのでまれた気遣いもある。
恩もある。
もある。
そして、誰にも見えないところで渡されていく親切もある。
昭53、3続けて等を引いた林千代。
商の々は最初、彼女を「運のいい女」
と呼んだ。
やがて「何かおかしい」と疑った。
けれど本当に3受け継がれていたのは、等の商品ではなかった。
誰かから受け取った親切を、自分だけのものにしないこと。
次に困っている誰かへ、そっと渡していくこと。
それは抽選器のには入っていない。
の玉にもならない。
鐘も鳴らない。
けれど、このさな商では、ずっと昔からそんなものがからへ渡されていた。
それこそが、歳末福引の裏側で静かに続いていた、
もう1つの「福引」だったのかもしれない。
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