"三度目の金色の玉" 第10話
千代がそうだった。
夫をくし、息子を育てながら働いていても、施しを受けるにはなりたくなかった。
主のをにしないでください。
千代はそう言った。
森田たちは、その言葉を無して無理やりを渡すこともできた。
しかし、そうしなかった。
受け取る側のを守ろうとした。
福引という方法が正しかったかどうかは別だった。
俊夫はいまだに、そこについては複雑だった。
けれど森田たちが、自分たちなりに千代を傷つけない方法を考えたことだけは理解できた。
千代もまた、その気持ちを理解していた。
だから2目のストーブを受け取った。
本当は仕掛けられた等だとりながら。
そして3目の自転は、へ渡した。
そこには「信夫さんへの恩返し」という札も、「商からの援助」という札もついていなかった。
ただ1台の自転として、必なのところへ渡った。
俊夫は、それでいいのだとった。
昼を過ぎた頃。
商の混みの向こうに、千代の姿が見えた。
買い物袋を持ち、いつものように歩いている。
誰かが声をかけると、ち止まってをげた。
特別扱いされているには見えない。
3続けて等を引いた女にも見えない。
仕しで働き、学の息子を育てている、いつもの千代だった。
俊夫は瞬、声をかけようかとった。
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自転のことをったと伝えたかった。
自分が疑っていたことを謝りたい気持ちもあった。
しかし、やめた。
千代がへ自転を渡したのは、誰かに褒めてもらうためではない。
それをわざわざ話題にすれば、今度はの事まで商の噂になるかもしれない。
俊夫は黙って、通り過ぎる千代へ軽くをげた。
千代も気づき、同じようにをげた。
それだけだった。
福引所からまた鐘の音がした。
カラン、カラン、カラン。
今度は等がたらしい。
歓声ががる。
俊夫は笑いながら、次の客へ声をかけた。
「はい、次どうぞ。根、今はいいのが入ってますよ」
暮れの商は、いつもと同じように忙しくき続けていた。
そのの歳末福引も、やがて終わった。
等の商品はすでに千代のをれ、聞配達ののもとへ渡っていた。
等も等も、それぞれ誰かが持ち帰った。
い玉しかなかったもいた。
それでも晦まで福引所のにはが集まり、抽選器が回るたびに子どもたちが覗き込んだ。
俊夫は、3の来事を何度もい返した。
最初、々は千代を「運のいい」だとった。
2続けて等を引けば、「すごいね」と笑った。
3続けば、今度は疑った。
「あの、何かやってるんじゃないか」
「会と話がついてるんじゃないか」
同じ来事でも、見る側の気持ちが変わればまで変わってしまう。
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本当の事をらなければ、は目のに見えている部分だけで判断する。
俊夫も同じだった。
の玉を別にしている森田を見た、「やっぱり正だった」としかわなかった。
その事実自体は違っていない。
森田は抽選を操作していた。
だが、そのろには昭46の事があった。
煙のへ入って老を助けた林信夫がいた。
そのに体を悪くし、40代でくなった男がいた。
夫を失っても、の世話になろうとせず働き続けた千代がいた。
1円の援助さえ受け取らず、米をもらえば代を払い、魚をもらえば翌にを持ってくる女だった。
「主がしたことを、おにしないでください」
その言が、森田たちを困らせた。
恩を返したい。
けれど返せば拒まれる。
助けたい。
けれど「助けられた」にしたくない。
そこで考えたのが福引だった。
当たったなら、受け取れる。
誰かから恵んでもらったことにはならない。
それが最善だったかどうか、俊夫には今でも分からなかった。
ただ、あの代の商には、そういう器用なたちがいた。
困っているを見つけても、すぐを渡すのではない。
相には相の暮らし方がある。
誇りがある。
がある。
それを踏みにじらずに何かできないかと考える。
森田たちが考えついた方法は、1個のの玉だった。
そして面いことに、話はそこで終わらなかった。
受け取ることを嫌っていた千代も、2目にはのを受け入れた。
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