"三度目の金色の玉" 第7話
俊夫が声をかけると、が振り返った。
「はい?」
「その自転、しいな」
はし照れたように笑った。
「はい」
「自分で買ったのか?」
「いえ」
俊夫は自転へ目を向けた。
福引の等と同じものにしか見えなかった。
「その自転、どうした?」
は何の疑いもなく答えた。
「林さんのおばさんがくれました」
俊夫はの顔を見た。
「林さん?」
「はい。商に買い物に来るです」
「どうして」
「福引で当たったから、使いなさいって」
俊夫は言葉を失った。
は続けた。
「聞配達するのに、の自転が古くなってたから。林さんが、私はあまり乗らないからって」
俊夫はしばらく品の自転を見つめていた。
千代は福引で等を当てた。
周囲からは「またか」と疑われた。
俊夫自も、何か裏があるとっていた。
実際、裏はあった。
森田がの玉を図に入れていた。
しかし千代がそれに加わって、自分のために等を受け取っていたわけではない。
なくとも3目の商品を、千代は自分のへ置いてすらいなかった。
父親が病気で働けないの。
朝夕、聞を配りながらへ通うそのへ渡していた。
俊夫は何も言えなかった。
「そうか」
ようやく、それだけ答えた。
はをげた。
「じゃあ、配達があるので」
自転へまたがり、りした。
ペダルを踏むたびに、まだしい輪が静かに回った。
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俊夫はそのろ姿を見送った。
自分が抱いていたりが、急にきを失ったような気がした。
福引を操作することが正しいわけではない。
森田がしたことは、本来なら認められることではない。
それでも、その裏側にあったものは、俊夫が考えていたような利得や内びいきとは違っていた。
千代の夫、信夫が商を守った。
その恩を返したいたちがいた。
だが千代は受け取らなかった。
そこで福引という形に変えた。
さらに千代は、それを自分より困っているへ渡した。
親切が、1つの所に留まらず次へいている。
俊夫はその、商へ戻るまで何度も考えた。
数まで、自分は等の自転を見ながら「正だ」と腹をてていた。
だがその自転は今、聞を積んで町をっている。
自分がらなかっただけだった。
そのの夕方。
千代は森田のへやって来た。
仕事帰りだった。
にはさな買い物袋をげていた。
森田が顔をげる。
「千代さん」
「こんばんは」
千代はの奥へ入らず、カウンターので止まった。
そしてポケットから1枚の福引券を取りした。
今の歳末売しで配られた券だった。
まだ使っていない。
千代はそれをカウンターのへ置いた。
「会さん」
「何だい」
「来から、私のにの玉を入れるのはやめてください」
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森田は千代を見た。
しして、肩の力を抜くように笑った。
「やっぱり分かってたか」
「から」
「からか」
「はい」
森田は苦笑した。
「じゃあ、なんで今も黙ってた」
千代はすぐには答えなかった。
のでは、歳末売りしの旗がに揺れていた。
しれたところから魚の声も聞こえてくる。
「私が断ったら」
千代が静かに言った。
「会さんたちも困るでしょう」
森田は何も言わなかった。
「主のことを覚えていてくださるのは、ありがたいです」
「忘れるわけないだろ」
「分かっています」
千代は頷いた。
「でも、主がしたことは主が自分で決めてしたことです。それを私と息子がずっと返してもらうのは、やっぱり違うとうんです」
森田はカウンターのに置かれた福引券を見た。
「炊飯器も、ストーブも、本当に助かっただろ」
「助かりました」
千代は素直に認めた。
「特にのストーブは、本当に助かりました。息子が夜遅くまで勉していましたから」
「だったらいいじゃないか」
「だからは、いただきました」
千代はし笑った。
「今もいただきました」
「自転、使ってるか?」
その言葉に、千代の表がし変わった。
森田はまだらなかった。
自転が千代のにないことを。
千代は答えた。
「使っていますよ」
「そうか」
「私ではありませんけど」
森田が顔をげた。
千代は聞配達ののことを話した。
父親が病気で働けないこと。
が朝と夕方、聞を配っていること。
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