"判を押さなかった妻" 第13話
夕方、へ帰った。
以なら帰宅から逆算して、修司の夕を準備していた頃だ。
私は蔵庫から豆腐とねぎをし、さな鍋に湯を沸かした。
分の噌汁。
夫婦で暮らしていた頃、噌はいつもなめにしていた。修司は血圧がく、しでも濃いと「しょっぱい」と言うため、私は自分の好みをほとんど考えずにしていた。
噌を溶き、をみた。
しかった。
私はもう度噌の容器をけ、ほんのしだけ鍋へした。
もう度見をすると、今度はちょうどよかった。
自分がどんなを好きだったのか。
それさえ、私はい忘れていた。
卓には茶碗がつだけ置かれていた。
あの、修司が男の子の写真と婚届を並べたのと同じ所だった。
私は子へ座り、噌汁をんだ。
温かかった。
計の音が聞こえた。
誰もテレビのチャンネルを変えろと言わない。
薬を分けるを気にする必もない。
のシャツにアイロンをかける予定もない。
私は修司を苦しめるために、2か婚届へ判を押さなかったわけではない。
夫が作った苦労を夫へ返しただけだった。
38、私が見えないところで片づけ続けてきた仕事を、本のへ戻しただけだった。
もしあの夜、写真を見たショックのまま婚届へ判を押していたら、修司はきっと「妻を捨ててしい族を選んだ男」
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のままをていただろう。
を売り、財産を自由に使い、面倒な事だけは私へ残す。
そして何か困れば、38そうしてきたように、私がろから片づけるとっていたに違いない。
私はそれを止めた。
夫の恋を止めたのでもない。
父親として息子と会うことを止めたのでもない。
婚そのものを止めたわけでもない。
私が止めたのは、修司だけが責任を置きりにして、何つ失わずに次のへ移ろうとすることだった。
だから最には、私自ので判を押した。
もう引き止める必がなかったから。
もう計算は終わったから。
そして何より、夫を自由にするためではなく、私自を自由にするためだった。
、私は分の器を洗った。
38の癖で、もう枚茶碗を探しそうになったが途で止まり、自分でもし笑った。
窓をけると、初の夜が静かなリビングへ入ってきた。
私は照をし落とし、翌伝うの帳簿を机へ広げた。
古い卓のキーを押すと、懐かしいさな音がした。
数字をつずつしていく。
昔と同じ音だった。
けれど、今度その数字の先にあるのは、夫のでも、義母の施設費でも、隠されたもうつの庭でもない。
私自のこれからだった。
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