"1億8400万円の夜逃げ" 第9話
セメントの購入伝票、居酒の決済記録、パソコンの検索履歴、そして黒縁鏡から検されたDNA鑑定結果だった。
健は鏡の写真をく見つめた。
「それ……残ってたんですか」
佐藤は何も答えなかった。
健は両で顔を覆い、しばらく肩を震わせた。9も逃げ続けてきた男の姿をにしても、佐藤には同する気持ちは湧かなかった。泣くを持てなかったのは健ではなく、理由も分からないまま息子を待ち続けた鈴の両親だったからだ。
やがて健はをろした。
「全部、話します」
自はに及んだ。
始まりは、やはりからの話だった。ロト1等に当たったと聞いた瞬、健は最初こそから驚き、「すごいじゃないか」と言った。しかし話を切った、部の井を見ながら1億8400万円という数字を繰り返すうち、びとは違うが膨らみ始めた。
健は「自分のだけが違っているようにえた」と話した。裕福な庭で育ち、学でもより自分のほうが領よくきてきたはずなのに、28歳になったとき、自分には8000万円の借があり、には1億8400万円が与えられた。その差を運の言で受け入れることができなかった。
を貸してほしいと頼んだのは事実だった。
は迷いながらも断った。そして父親と母親にを買うつもりだと説し、「健にも落ち着いたらまたをやってほしい」
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と逆に励ましたという。その言葉を聞いた健は表面笑ったが、話を切るころには、自分ので何かが壊れていた。
「なんであいつなんだ、っていました」
健は供述した。
「俺じゃなくて、なんでなんだって」
その、健は数かけて逃計画を考え始めた。当選券をに入れ、自分が購入者だったように振るい、国へる。借を返して本で暮らすことも考えたが、取りてや両親、失敗した事業の関係すべてから逃げたいといういが勝ったという。
佐藤は「を殺す必はなかった」と指摘した。
健はいうつむいていた。
「分かっています」
その答えは、あまりにも遅かった。
マニラへ渡ってからの9、健は名を変え、む所を何度も移した。最初の数はに困らなかったが、派に使えば追跡されると恐れ、目たない活を続けたという。それでも眠薬は放せなかった。
にはがてきた。
学代の姿だったり、本で酒をんだ夜の姿だったりした。分い鏡をかけたまま笑い、「母さんにを買うんだ」と繰り返すを何度も見た。
2019、健は耐えられなくなって母親へ話した。2022にももう度かけたが、本へ帰る決はできなかった。警察は自分を夜逃げしただとっていると考え、が取り壊されない限り真実は永にないと信じていた。
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再発のニュースは、現でもインターネットで見ていた。
健は2025、かつてんでいた域の解体事が始まったことをった。そのからほとんど眠れなくなり、毎朝、本のニュースを検索した。から骨が見つかったという報を見た瞬、自分の9が終わったとったという。
「逃げようとはわなかったんですか」
佐藤が聞いた。
健はゆっくり首を振った。
「もう、疲れました」
そしてしばらくして、さな声で続けた。
「捕まって、よかったです」
佐藤はその言葉に何も返さなかった。
捕まってよかったと言えるのは、逃げた本だけだった。
健が本へ移送された、佐藤は群馬県崎の鈴をもう度訪ねた。今回は父親の秀夫も同席していた。脳梗塞の遺症でのきがし自由になっていたが、息子の事件について聞くため、古い子に背筋を伸ばして座っていた。
佐藤は、捜査で判した事実を順番に説した。20166、が200円で購入したロト券が1等に当選していたこと。その額が1億8400万円だったこと。が当選、まず母親へ話し、その、健だけに秘密を話していたことを伝えた。
佳子は途から元をで覆った。
「だから……あんなことを言ったんですね」
9の話が、初めてを持った。
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