みかん小説
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"68歳の誕生日、残高は0円だった" 第19話

マッサージが終わっててきた、廊の窓のはもう夕方のになっていた。

の稜線に滲んでいた。

千代子はしばらく廊って、そのを見た。

肩の力が抜けていた。

首の付け根が、久しぶりにほぐれたじがした。

こういう覚を自分の体が持てることを、忘れていたような気がした。

でさやかと流した。

広い浴槽にで入りながら、しばらく何も話さなかった。

井がく、湯気がに昇っていった。

の景きな窓越しに見えた。

の輪郭が夕暮れのに沈んでいった。

「来てよかった」

さやかがぽつりと言った。

「うん」

千代子は答えた。

は部べた。

品ずつ運んでくる形式で、吸い物、刺、炊きわせ、鍋としずつ続いた。

千代子はつをゆっくりわった。

量はくなかったが、べ終わる頃にはちょうど良かった。

さやかはお酒を杯だけ頼んだ。

千代子は梅ジュースにした。

事が終わって、さやかがデザートを追加すると聞いた。

千代子はメニューをに取った。

季節の果物の盛りわせが、2800円といてある。

なら、値段を見て閉じていた。

今は違う。

千代子はメニューをさやかに渡しながら、「頼みましょう」と言った。

さやかがにっこりした。

デザートが来た。

さな皿に、イチゴとマスクメロンと、をあしらったパンナコッタが並んでいた。

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千代子はフォークを持った。

イチゴをに入れた。

甘かった。当たりに甘かった。

でもその当たりのことが、今夜はしだけ特別にじられた。

、さやかはスマートフォンを見ながら言った。

「仕事のメールが来てる。ちょっと返信してくる」

言い残し、廊た。

千代子はに残った。

畳のに座って、窓のを見た。

は暗くなって見えなくなっていたが、空にがいくつかていた。

田舎の空気は澄んでいて、町のよりく見えた。

千代子はそのを見ていた。

何かを考えていたわけではない。

何も考えていなかったわけでもない。

ただ、静かだった。が静かだった。

きてきて、こういう静けさのに自分が座っているのはいつ以来だろうと、千代子はった。

答えはなかった。

もしかしたら、こんな静けさは初めてかもしれない。

さやかが戻ってきて、「ごめん。引いた」と言いながら部に入った。

丈夫よ」

千代子は言った。

見てたから」

さやかは千代子の隣に座って、同じ窓を見た。

「綺麗だね」

さやかは言った。

京じゃ見えないよ、こんなに」

はしばらく並んで、同じを見ていた。

翌朝、チェックアウトのに千代子はで売に寄った。

棚に並んでいるものをつずつ見て回った。

温泉饅の酒、乾燥した野菜のセット。

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千代子は、さな陶器の湯呑みをに取った。

い青に、い富士の形が入っていた。

値段を見た。1200円だった。

千代子はそれをカゴに入れた。

レジでカードをした。

自分の名だけがかれたカードを、自分の械に差した。

額が表示された。

千代子は確認して、暗証番号を入力した。

承認の音がした。レシートを受け取った。

ると、さやかが駐で待っていた。

「何買ったの?」と聞いてきた。

「湯呑み」

千代子は答えた。

用の?」

さやかが聞いた。

「そう」

千代子は言った。

「毎朝使おうとって」

さやかは千代子の顔を見て、それからさく笑った。

までしあった。

旅館の段をりて、は旅館のの細いを歩いた。

両側が茂っていて、差しが葉のから差し込んでいた。

は緩やかに曲がりながら続いていた。

どこへ続いているかは見えなかった。

でも、千代子はを止めなかった。

歩ずつさやかと並んで、そのを歩いていった。

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