"68歳の誕生日、残高は0円だった" 第7話
それから、さらに慎に言葉を選ぶように続けた。
「さん、ご自が障害者帳や、精神障害の認定を受けたことはありますか?」
千代子は、聞こえた言葉のをすぐには理解できなかった。
障害者帳、精神障害の認定。
その言葉が自分に向けられているということが、のでうまく繋がらなかった。
「いいえ」
千代子はゆっくり答えた。
「ありません。そういう認定を受けたことは度もありません」
職員はく頷いた。でも、何も言わなかった。
「なぜ、そういう質問を?」
千代子はになり、聞いた。
職員は度テーブルのを見て、それから千代子を正面から見た。
「さんのご主が提された確定申告に」
職員ははっきりと告げた。
「さんが『度精神障害者』であるとの申告が含まれています」
千代子は息を止めた。
「その申告に基づいて、過にもわたり、障害者控除が適用されています」
部の空気が変わったような気がした。
千代子は自分のがおかしくなったのかとった。
度精神障害者。。障害者控除。
それが、自分のことだと言っている。
この男性職員は今、自分の夫が自分のことを、度精神障害者として申告し続けていたと言っている。
「それは……」
千代子は声をそうとしたが、途で詰まった。
職員は静かに続けた。
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「為能力に欠ける者として申告されています」
職員は説を付け加えた。
「ご本の名義の資産についても、代理権限を持つ者が管理できるという解釈がじることがあります」
彼は千代子の状況を察しているようだった。
「続き等に関しても、その申告が利用されている能性があります」
千代子は、今度こそはっきりと分かった。
ATMのゼロ。委任状。
員が言った「適正に完した続き」。
が審にわなかった理由。
全部ここにつながっていたのだ。
総は、自分を類ので、判断能力のないにしていたのだ。
だからも、委任状に基づく移を本の承認済みとして処理できたのだ。
自分の座からおが消えた理由は、システムのエラーでも運用効率の話でもなかった。
夫が、自分を法にしないにしていたからだ。
涙はなかった。りでもなかった。
千代子ので起きていたのは、もっと静かな、もっと根本な何かだった。
、同じにんで、同じ卓で向かいって。
このの靴を磨いて、このの母親を介護して。
緒に暮らしてきたが、自分を類ので精神に無能なとして扱い続けていた。
しかもそれを、度も何も言わずに。
職員は千代子の様子を見ながら、静かに待っていた。
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「証拠は残っていますか?」
千代子はやっと声をした。
自分でも驚くほど落ち着いた声だった。
職員はゆっくりと頷いた。
「申告は税務署の管理にあります」
彼は続けた。
「また、弊課でも福祉関連の申請と突できる記録があります」
職員は度言葉を止めた。
「ただ、これは私どもの管轄を超える部分がく」
彼は同な目をした。
「個には、専に相談されることをお勧めします」
職員は助言した。
「法にけるかどうか、確認された方がいいといます」
千代子はテーブルのの自分のを見た。
シミがいくつかある、分のだった。
スーパーで、たい段ボールをけ続けただった。
の体を毎抱き起こしてきただった。
そのが今は、静かにテーブルのに置かれていた。
「ありがとうございます」
千代子は言い、ゆっくりとちがった。
職員もちがった。
「お事になさってください」
職員が言ったその言葉の奥に、言えないことがたくさんあるの声の質があった。
千代子にはそれが分かった。
彼女はく礼し、相談のドアをけて廊にた。
区役所のにると、空は曇ったままだった。
千代子はしの、建物のの歩にっていた。
が脇を通りすぎていく。自転がっていく。
世界はいつも通りにいていた。
でも千代子のでは、何かが静かに崩れていた。
いや、崩れているというより、ずっとから崩れていたものが、今ようやく目に見えるようになったという覚だった。
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