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"9年間消えた娘と「お姫様の部屋」" 第15話

「ま……ま……」

ユイナの唇が震える。

「ママは……本物?」

その言葉は、今にも壊れてしまいそうなほどく震えていた。

「でも、パパが……」

エリコは力く頷いた。

「パパが何て言ったかはっているわ」

彼女は涙で顔を濡らしながら微笑んだ。

「でも、彼は嘘をついたの。ママはここにいるわ。本物よ」

エリコは再び、両きく広げた。

今度は、ユイナがためらうことなく、その腕のへとび込んできた。

で固く抱きい、声をげて激しく泣き崩れた。

エリコは娘のボサボサの髪の匂いを嗅ぎ、その確かな肉体の温もりをじた。

きている。

を経て、私の赤ちゃんは違いなくきているのだ。

森田と捜査班の警官たちが、慎取りで部へとを踏み入れた。

そこは3メートル方ほどの、窓がつもない異常に狭い空だった。

方の壁は全てピンクで、至るところに子供だましのお姫様の飾りが吊るされている。

に直置きされたいマットレスには、古びたディズニーのシーツが掛けられていた。

に散らばったおもちゃのには、14歳という齢にうものもあれば、らかに5歳の頃のままのものも混ざっていた。

の隅には、さなテレビとビデオデッキが置かれている。

そのすぐそばには、プロが使うような派な照材と脚がてられていた。

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壁の角には、から事を差し入れるための細い引きし式の窓が作りつけられていた。

の奥にあるクローゼットをけた警官たちは、顔を青ざめさせて互いを見つめった。

には、量の用のおもちゃ、子供サイズの際どいランジェリー、そして予備の撮材が詰め込まれていた。

この部の恐るべき目は、誰の目にもあまりにもだった。

「救急隊を呼べ」

森田は肩の無線に向かって、静かに、しかしりを込めて言った。

「それから全両に配しろ。修平と松尾を確保しろ」

彼の声に力がこもる。

「容疑は未成者略取、及び児童虐待だ」

請から数分で、緊急の救急隊が現に到着した。

彼らは極めて優しくユイナに接し、まずは健康状態を確認する必があることを丁寧に説した。

ユイナは怯えてエリコの腕にしがみついていたが、エリコが頷くのを見て、診察には素直に応じた。

ピンクの牢獄からようやくれ、められた救急へと移する。

ユイナは、エリコと若い女性救急隊員とのに挟まれるようにして座っていた。

彼女は9ぶりに見るの世界の広さに完全に圧倒され、ただ呆然としているようだった。

「……みんな、んだとってた」

彼女は毛布にくるまりながら、うわ言のように何度も繰り返した。

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「パパが、きな戦争があったって。核爆弾が落ちて、き残ったのは私たちだけだって」

彼女は14歳という齢には釣りいなほど、びた表を見せた。

しかし、その瞳はひどくうつろなままで、エリコを見つめた。

「パパに、類を救うために私が赤ちゃんを産まなきゃいけないって言われたの」

その言葉に、救急内の空気が凍りついた。

「でも、妊娠できなくて……私、失敗したんだって、すごくしかった」

エリコの胃が激しく波打ち、吐き気が込みげてきた。

彼女は奥歯を噛み締め、必に声を落ち着かせた。

「ゆいちゃん……理は来ているの?」

「うん。2に」

ユイナは無垢な目で答えた。

「パパ、すごくんでた。『これで本当にしい世界を始められる』って」

女性救急隊員はプロとして表切崩さず、静かにカルテにメモを取った。

「ゆいちゃん、今、どこか痛いところや痒いところはない?」

隊員の問いかけに、ユイナは議そうに首を傾げた。

「どうして、みんなそんなに怖がってるの?」

彼女はエリコと隊員を交互に見つめた。

「パパは嘘をついたけど、私のことは本当にしてくれてたよ。私たちがしたことは美しいことで、私はパパのためにまれてきたんだって」

エリコは耐えきれず、嗚咽を噛み殺した。

にも及ぶ徹底な洗脳。精神の操作。

」という美しい名に偽装された、果てしない虐待。

彼女のな赤ちゃんは、自分にされたことがどれほど異常なことか、その概すら持っていないのだ。

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