"9年間消えた娘と「お姫様の部屋」" 第7話
この定な状態のまま放置しておくのは、いくらなんでも危険だ。
エリコは腕をげ、腕計の文字盤を確認した。
刻は午730分を回ったところだった。
確か、このくにある本物は、夜の8までいているはずだ。
夜勤のシフトに入るに、あそこでタンスの隙を埋める片を買って、応急処置をしておこう。
彼女がそう決して振り返った瞬だった。
階のリビングにある固定話が、突然ジリリリリと鋭く鳴り響いたのだ。
静まり返った暗いので、その子音は臓を掴むように鋭く響き渡った。
エリコは反射にビクッと肩を震わせ、階段をりようとすりにを伸ばしかけた。
しかし、彼女は階段のでピタリときを止めた。
ここはもう、自分のではないのだ。
別れた夫である修平のプライバシーは、完全に尊すべきである。
エリコがじっとち尽くしていると、話は数回のコールのに鳴り止んだ。
そして、カチャッという音と共に、留守番話の能が作した。
階から、スピーカー越しに修平の録音音声が聞こえてくる。
『はい、です。発信音のにメッセージをお願いします』
ピーッというい発信音の直だった。
温かくも、どこかく配しているような女性の声が、階から響いてきた。
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『修平さん、被害者族の会の川です』
その名に、エリコは階段のでをくした。
『至急、折り返しお話をいただけますか?』
川の声は、スピーカー越しでもはっきりと聞き取れた。
『あなた、これで3週連続でお休みされていますよ。会の皆も、あなたのことをとても配しているんですよ』
エリコは全の血の気が引くのをじ、そのに凍りついた。
3週?
修平はついさっきの話で、今から被害者族の会に向かっていると確に言ったばかりだ。
ユイナがいなくなってからの9、毎週曜の夜のこの集まりだけは、彼にとって絶対に欠かせないものだったはずだ。
それは、彼の精神を保つための、数ないの支えだったのではないか。
なぜ修平は、自分にそんな見え透いた嘘をついたのだろうか。
エリコは呼吸を乱しながら階段を駆けり、玄関へと向かった。
急いで靴を履き、震えるでドアの鍵を閉めてに戻る。
運転席にび乗り、ドアをく閉めた。
ホンダ・シビックの内には、の持ち主が取り付けていた古い自話がそのまま残されている。
彼女は分い受話器を力くに取り、修平の携帯番号に素くダイヤルした。
呼びし音が3回鳴り、ようやく彼がた。
「もしもし」
彼の声はらかに息が切れており、どこか異常に張り詰めた空気を纏っていた。
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エリコは受話器をく握りしめ、く問い詰めるような声をした。
「修平、私よ。今どこにいるの?」
話の向こうで、数秒の自然な沈黙が流れた。
彼が息を吸い込む音だけが、気に聞こえてくる。
「……ああ。今、向かっている途だ」
修平はようやくをき、しでまくしてた。
「松尾を迎えにっていたんだよ。今は緒に参加する約束でね」
彼は聞かれてもいない詳細を、さらに付け加えていく。
「が混んでて、15分くらい遅刻しそうだ」
説が細かすぎる。
エリコは15の付きいので、彼が嘘をつくの特の癖を完全に熟していた。
彼女は目を細め、フロントガラスの向こうのを見つめながら慎に言葉を選んだ。
「さっき、に類を取りにったよ」
エリコは氷のようにたい声で言った。
「留守に、川先から話があったわよ」
話の向こうで、修平が鋭く息をむ気配が伝わってきた。
「……ああ、そうか」
修平は無理に作ったような、自然な笑い声をてた。
「あのは遅刻に厳しいだからな。それで慌てて話してきたんだろう」
遅刻の確認と、3週の無断欠席に対する配の話は、内容が全く違う。
しかし、エリコはそれ以、話で彼を追求することはしなかった。
「そう。気をつけてね」
エリコはたく言い放ち、方に話を切った。
受話器を戻した、彼女は両でハンドルをきつく握りしめた。
臓が嫌な音をてて鐘を打っている。
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