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"消えた妻と青いマグカップ" 第12話

「藤田さんじゃなくて?」

し迷った。

「……今回は普通の業者」

が笑った。

「分かった」

さらに

庭の古い物置の扉がれた。

今度は健から藤田へ連絡した。

「仕事として頼む」

藤田は、

「はい」

と答えた。

のように、

へ入ることはなかった。

がいるを確認し、

見積し、

作業が終わると帰った。

の関係は、

しずつ別の形になっていった。

紗季からの連絡は、

頻繁ではなかった。

最初のは、

何もなかった。

も、

自分からは送らなかった。

約束していたわけではない。

でも、

待つことにした。

目。

いメールが届いた。

【体調は落ち着きました】

は、

分ほど悩んでから返信した。

【よかったです。無理しないでください】

それだけだった。

「会いたい」

ともかなかった。

「お母さんだから」

ともかなかった。

紗季には、

紗季を育てた母親がいる。

は、

そこを奪いたくなかった。

の単赴任が、

には終わる能性がてきた。

まだ決定ではない。

それでも、

の健なら、

「戻れるかもしれない」

とだけ伝えただろう。

今度は違った。

「もし松本に戻ることになったら、仕事どうする?」

に聞いた。

「私の?」

「うん」

「続けたいけど」

「じゃあ続ける提で考える」

は、

し驚いた顔をした。

「何?」

「別に」

「何だよ」

なら、もう決めてから言いそうだなって」

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は苦笑した。

「俺、そんなじだった?」

「ちょっと」

「気をつけます」

の携帯話に、

紗季から枚の写真が届いた。

病院のベッド。

い毛布。

そのに、

さな赤ん坊。

まだ顔は赤く、

目を閉じていた。

そのに、

だけ。

【無事にまれました】

は、

しばらく画面を見た。

胸の奥から、

の記憶が戻ってきた。

い産着。

さな

温かかった額。

あの

自分が抱いた赤ん坊が、

今、

母親になった。

の目から、

静かに涙が落ちた。

の美なら、

その写真をで見ただろう。

して、

誰にも言わなかったかもしれない。

携帯を閉じ、

胸のだけに置いたかもしれない。

だが、

そのは違った。

ちょうど週末で、

が松本に帰っていた。

はリビングへった。

はテレビを見ていた。

「健さん」

「ん?」

は携帯を持ったままっていた。

「紗季さんから」

が振り返る。

まれた?」

は頷いた。

し迷ってから、

携帯話を差しした。

「見る?」

は受け取った。

画面を見る。

さいな」

まれたばっかりだから」

「女の子?」

「うん」

「そうか」

それだけだった。

げさな言葉はなかった。

は写真を見たあと、

携帯を美へ返した。

「返事するの?」

「うん」

「何て?」

し考えた。

「おめでとう、かな」

「それでいいんじゃない」

は頷いた。

その夜。

返信を送ったあと、

は写真を消さなかった。

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隠しもしなかった。

机のに携帯話を置いたまま、

緒に夕べた。

の赤ん坊を抱き、

その記憶を胸の奥へしまった。

と結婚しても、

そこをけなかった。

藤田にられても、

夫には言えなかった。

そして

その秘密は、

とうとう美まで連れした。

けれど、

秘密そのものが悪かったわけではない。

誰にでも、

言えない過はある。

言いたくない記憶もある。

問題だったのは、

言えないままが経ちすぎると、

いつしか自分でも、

「言わない」以の選択肢が見えなくなることだった。

が消えたのは、

だけだった。

藤田誠司も、

だけ連絡を絶った。

誰もななかった。

誘拐もなかった。

倫でもなかった。

それでも健にとって、

そのは、

の結婚活を最初から見直すには分だった。

妻には、

自分のらないがあった。

そして妻もまた、

夫がすべてを受け入れてくれるかどうかを、

に決めていた。

とも、

の答えを聞くに、

自分ので答えを作っていた。

紗季からもう通、

メールが届いた。

【落ち着いたら、また度会えたらとっています】

は、

すぐには返さなかった。

隣には健がいた。

画面を見せる。

「どうする?」

が聞いた。

は、

し考えた。

「会いたい」

「じゃあ、そうけば」

「うん」

は返信画面をいた。

今度は、

く迷わなかった。

【私も会いたいです】

送信する。

が横から言った。

「今度は俺にも言ったな」

は笑った。

「言った」

「よし」

「何それ」

で笑った。

隠していた過が、

なくなったわけではない。

の選択が、

正しかったことになったわけでもない。

ただ、

もうで抱えておく必はなかった。

それだけで、

同じ記憶はしだけ違って見えた。

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