な、なんだ――俺の庭に、知らねえ電気自動車が数台も並んでいる。
休日の朝。電気メーカーの開発部門で働く俺、テツは、いつものように自宅の庭に建てた実験小屋へ向かった。趣味が高じて、電源設備も計測器も一通り揃えた“俺だけのラボ”だ。ところが扉を開ける前に視界に飛び込んできたのは、見覚えのない車列。しかも全車、俺の外部電源にコードを伸ばしている。
「……おい。何してんの?」
声をかけると、充電ケーブルを握った連中は一瞬だけ肩をすくめた。

「うわ、昼間なのにいたんだね」
「別にケチケチしなくてもよくない? みんなやってるし」
俺は慌ててナンバーを控えようとした。だが妙に汚れて読めない。そこで、今月の電気代通知が脳裏をよぎる。二十万を超える請求――俺が使った覚えのない桁だ。今日が初めてじゃない。そう確信した瞬間、胸の奥が冷えた。
「絶対に許さん。トラブルバスターズだ」
翌日、俺は小屋の電源ログと防犯カメラの角度を見直し、外部電源の使用履歴を細かく取れるようにした。連中がまた来るのを“待つ”ためだ。さらに、実験設備の運用予定もいつも通りに戻す。俺には仕事がある。設備の電圧を上げ下げするのも、電力会社の許可を得た正規の作業だ。
そして、その日は来た。
「ここの充電のおかげで観光費浮いて助かるわ」
「ですよね」
勝手に人ん家を給電所扱いしながら、笑い合う声。俺は小屋の中で作業を続け、淡々と電圧を調整した。――直後、鼻を刺す焦げ臭さが風に混じる。
外へ飛び出すと、車列の一台から煙が上がり、次の瞬間、火が噴いた。
俺は言葉を選んだ。
「俺は許可を取って、通常の実験をしてただけだ。お前らが盗電してるとは思わなかった。昨日も『もうしない』って言ったよな」
「でも少し注意して見れば充電中って分かっただろ!」
「ここは俺の敷地内だ。注意すべきはお前らだ」
相手が強気に出られるのは、俺が通報を躊躇すると踏んでいるからだ。だから俺は、わざと静かに告げた。
「警察呼ぼう。白黒はっきりつける」
すると空気が一変する。狼狽が伝播し、さっきまでの勢いが萎むのが分かった。
「……待ってください。反省しましたから」
「もうナンバーは控えた。今日の分だけじゃない。三か月分、電気代も証拠も揃ってる」
そこから先は、連中の“崩れ方”が早かった。
電気自動車メーカー勤務の男は、保険会社の調査員・猫草に問い詰められる。車内の破損は約2000Vの電流が流れた痕跡――「普通に充電しただけ」は通らない。保険金詐欺の可能性まで示され、青ざめて黙り込む。
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次のページ引用元:https://www.youtube.com/watch?v=jDLiEEtGBh4,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]