"60代からの第二の人生" 第6話
しかし、元に流れてきたのは、械なたいアナウンスだった。
『おかけになった話は、波の届かない所にあるか、源が入っていないためかかりません……』
「くそっ、なんでないんだよ!」
何度かけ直しても同じアナウンスが繰り返される。浩司の携帯にかけても全く繋がらない。直哉の額から脂汗が滝のように吹きし、波さんは爪を噛みながら取り乱した。
「ちょっと! どうするのよ! 結菜はまだ歳なのよ!? を使ったりしたらどうするの!? 翔太だってまだ学なのよ!」 「わ、分かってるよ! でも連絡がつかないんだからどうしようもないだろ!」
その頃、成田空港の国際線サクララウンジ。 私と浩司は、柔らかな革張りのソファーにく腰掛け、淹れたての温かいコーヒーとクロワッサンをわっていた。
元のスマートフォンの画面には、息子夫婦からの着信通が次々とポップアップ表示されている。
直哉:着信件
波:着信件
LINE着メッセージ:件 『母さんどこにいるの!?』 『冗談だろ!? くに帰ってくれ!』 『お母さんお願いですから話にてください!』
画面を見つめていた浩司が、呆れたように苦笑いを浮かべた。
「すごい話の数だな。鳴り止む気配がないぞ」 「そうね。でも、私たちは今『波の届かないところ』にいることになっているから」
広告
私は穏やかに微笑みながら、スマートフォンの画面をスワイプし、「内モード」のアイコンをタップした。画面のアンテナピクトが消え、完全な静寂が訪れる。
「とても事な急用があるんだもの。申し訳ないけれど、話にはられないわ」
その、ラウンジ内によい女性のアナウンスが響き渡った。
『ホノルルき、JL便をご利用のお客様にご案内いたします。もなく搭乗を始いたします——』
「きましょうか、あなた」
私と浩司はちがり、互いのをしっかりと握りって搭乗ゲートへと歩きした。 ポケットので完全に沈黙したスマートフォンを、私はバッグの底へとくしまい込んだ。
「よろしく。急用があるので、そちらでよろしく……ね」
窓のに広がるの青空を見つめながら、型旅客が滑を力く加速し、空へとびっていった。 こうして、私たち夫婦の、越しの本当の正休みが幕をけたのである。
ホノルル空港にりつと、肌を撫でるよい温と、どこまでも広がる青い空、眩しい太陽が私たち夫婦を迎えてくれた。空港から専用の送迎に乗り込み、ヤシのが並ぶカラカウア通りを抜けてホテルへと向かう。
私たちが予約したワイキキビーチホテルは、息子夫婦が私たちの援助万円で予約した部と同じホテルだった。
広告
しかし、私たちが選んだのは最階に位置するペントハウス仕様のオーシャンビュースイートだった。
「ミセス・マエカワ、ようこそお越しくださいました」
フロントで丁寧に迎えられ、部のなドアをけた瞬、パノラマガラスの向こうに広がる息を呑むようなエメラルドグリーンのが界いっぱいにび込んできた。
「わあ……なんて素らしい眺めなんでしょう……!」
私はバルコニーのすりにをかけ、わず嘆の声を漏らした。ワイキキの青いが、太陽のを浴びてダイヤモンドのようにキラキラと輝いている。隣にった浩司が、く呼吸をしながら嬉しそうに目を細めた。
「本当だな。分の厨の油煙と疲れが、瞬で吹きんでいくようだ」 「ねえあなた、あの子たち、今頃どうしているかしらね」 「さあな。だが、今の俺たちには関係のないことだ。これは、俺たちが血汗流して勝ち取ったなんだからな」
浩司がルームサービスで頼んだえたシャンパンのコルクを抜き、つのフルートグラスに注いだ。 私たちは青いと空に向かって、静かにグラスをわせた。
方その頃、同じホテルの数階にあるスタンダードルームでは、まさに獄のような景が繰り広げられていた。
、元の夕暮れ。
直哉はベッドに突っ伏し、狂ったように私の携帯番号をリダイヤルし続けていた。
「クソッ! なんでないんだよ! どこったんだよ母さん!」
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
消えた託児代7万円
2001年、東京の外れにある義実家で暮らす保育士のゆいは、夫の妹・安奈から何度も娘の子守りを押しつけられていた。 「保育士でしょ?」 「家族なんだから」 「今日だけお願い」 そう言われるたび、ゆいは仕事帰りに1歳のクレアを風呂に入れ、寝かしつけ、夜泣きにも起きてきた。けれど夫も義母も、それを“当然の手伝い”としか見ていなかった。 ある朝5時半、安奈は39度の熱を出したクレアを抱えて現れる。 「娘の子守りよろしく」 仕事を理由に断ろうとするゆいへ、夫は笑って言った。 「保育士なんだから慣れてるだろ。ケチくさいこと言うなよ」 その一言で、ゆいの中で何かが切れた。 なぜ安奈は、そこまで頻繁に娘を預けていたのか。 なぜ“仕事”と言って家を空ける日が増えていたのか。 そして、クレアの父親だけが知らなかった事実とは――。 便利な保育士として扱われ続けた嫁が、初めて「無理です」と告げた日、義家族の隠された嘘が静かに崩れ始める。兄弟姉妹|夫婦1.9萬字5 0 -
完結第13話
100億の身代わり花嫁
貧しさに追い詰められた28歳の美咲は、妹の命を救うため、68歳の不動産王・大鳥幻蔵との結婚を受け入れた。 5000万円の借金は消え、妹の手術費用も用意される。そう信じて臨んだ結婚式で、美咲は親族たちから「金目当ての女」と嘲られながらも、ただ耐え続けた。 だが初夜、幻蔵は優しい夫の顔を捨て、恐ろしい真実を告げる。 美咲は妻として迎えられたのではなかった。100億円の借金と危険な会社を押しつけられる“身代わり”として選ばれたのだ。 妹を人質に取られ、逃げ道を失った美咲。夫、親族、裏社会、病院までもが敵に回る中、彼女は静かに涙を拭う。 誰も知らなかった。 彼らが「底辺の女」と笑った美咲こそ、10年間、父の死の真相を追い続けてきた人物だったことを――。夫婦|金銭問題1.9萬字5 0 -
完結第13話
福嫁の逆転茶屋
江戸の日本橋にある茶屋「泡雪屋」の若旦那・宗介は、店の立て直しのため、評判の商人・泉屋五兵衛の娘を妻に迎えることになる。 宗介が望んでいたのは、江戸でも噂になるほど美しい姉・お花だった。美しい女将がいれば、傾きかけた店にも客が戻る。そう信じていたからだ。 しかし、五兵衛が宗介に差し出したのは、お花ではなく、ふくよかで目立たない妹・福だった。 祝言の日、客たちは陰で笑い、宗介自身も心のどこかで落胆を隠せなかった。だが、福が作る菓子と入れる茶は、少しずつ泡雪屋の空気を変えていく。 派手ではないのに忘れられない味。人の心の奥にしまわれた記憶を呼び起こす菓子。福は、宗介が見落としていた“商いで本当に大切なもの”を静かに見せていく。 やがて泡雪屋は、思いがけない形で評判を取り戻していく。 なぜ、泉屋五兵衛は美しい姉ではなく、福を宗介に嫁がせたのか。 そして若旦那が、かつて落胆した嫁に深く頭を下げることになった理由とは――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 0 -
完結第13話
十六歳の毒薬花嫁
江戸中期、奥州郡山の大店・高野家には、余命三月と告げられた若旦那・湊がいた。 歩くこともままならず、医者からは「春までもたぬ」と見放された男。誰も嫁ぎ手など現れないと思われたその家の門を、ある冬の朝、十六歳の娘・凛が一人で叩く。 「三月なら三月、三日なら三日でも構いません」 そう言って自ら若旦那の嫁になった凛だったが、彼女には誰にも明かしていない目的があった。 苦くないはずのない薬。帳簿に増え続ける不自然な数字。井戸へ捨てられた父の形見。 病とされていた若旦那の命、罪人にされた父の名、そして大店に二十一年隠されてきた嘘。 十六歳の娘が嫁いだ本当の理由が明らかになる時、高野家の運命は大きく変わり始める。夫婦2.0萬字5 0 -
完結第11話
赤ワインの逆転離婚
因果応報|夫婦1.6萬字5 0 -
完結第11話
夫の顔と20年目の罪
8歳の事故で母と光を失った桜田はるかは、暗闇の中でピアノだけを支えに生きてきた。 父の死後、叔父に勧められるまま結婚した相手は、名門病院の跡取り息子・桜田真一。寡黙ながらも優しく、毎日花束を贈ってくれる夫を、はるかは心から信じていた。 そしてある日、20年待ち続けた角膜移植手術の順番が回ってくる。 初めて夫の顔を見られる――。 そう思って迎えた包帯を外す日。眩しい光の中で、はるかの前に立っていたのは、愛していたはずの夫とはまるで違う男だった。 「あなたは誰?」 病室に凍りつく空気。夫を名乗る男、黙り込む周囲、そして誰もが隠していた結婚の嘘。 やがてはるかは、20年前の事故と、ガーベラに隠された本当の意味へとたどり着いていく。人生逆転|夫婦|真相1.7萬字5 0 -
完結第12話
娘の遺した手紙
娘の葬儀を終えたその夜、43歳の佐藤陽子は夫から家を追い出された。 「もうお前を置いておく理由はない」 20年間支えてきた夫から浴びせられた冷たい言葉。さらに夫は、亡くなったばかりの娘の保険金を手に入れようとしていた。 しかし、夫が知らなかったのは、陽子が何も持たない専業主婦ではなかったこと。 祖父から受け継いだ700億円規模の資産、そして夫の裏切りを暴くために動き始めた秘密の調査。 やがて明らかになる、娘の死に隠された真実。 最後まで母を思い続けた娘が残した一通の手紙が、止まっていた家族の時間を動かし始める――。夫婦|親子関係1.8萬字5 0 -
完結第13話
冷えた雑煮の逆転正月
元日の夜、シンガポール出張から1日早く帰国した佐藤健一は、実家の食卓に妻・弓の席だけがないことに気づく。 暖かい居間では、母と弟が豪華なおせちを囲んで笑っていた。だが弓は、冷え切った台所の隅で、たった1人、冷たい雑煮をすすっていた。 15年間、夫の不在中に何が起きていたのか。 赤切れた手、擦り切れたカーディガン、使わせてもらえないお湯。そして、父が遺したはずの3000万円の預金に残されていた、不可解な出金記録。 健一は怒りを飲み込み、その場では何も言わなかった。 翌朝、妻を呼び出した彼は、ついに決断する。 だが金庫を開けた時、そこにあったのは消えた遺産だけではなかった。弓の名前が書かれた、覚えのない離婚届。そして母と弟が隠していた、さらに深い裏切りの証拠。 元日の冷たい台所から始まった夫婦の反撃は、やがて家族の嘘を一つずつ暴いていく――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 8 -
完結第10話
「子なし」離婚の大誤算
離婚届に署名した日、木村さゆのお腹には、まだ誰にも知られていない3か月の命があった。 夫・渡辺健二は初恋の女性との再婚に夢中で、離婚協議書には「婚姻中の子なし」と記されていた。さゆは妊娠を告げることなく、静かに名前を書き、夫の前から姿を消す。 それから10年。 さゆは一人で息子・陸を育てながら、写真館「時」を成功させ、母としても写真家としても自分の人生を築いていた。 しかし、陸の卒業式の日、思いがけず健二と再会する。 壇上で花束を渡す陸の顔を見た瞬間、健二は凍りついた。目元、鼻筋、横顔――そこには、10年前に自分が切り捨てたはずの結婚の答えがあった。 失われた10年は、金で取り戻せるのか。 父親を名乗る資格とは何か。 初恋を選んだ男が、初めて自分の過ちと向き合う時、さゆと陸が選ぶ未来とは――。人生逆転|夫婦1.5萬字5 4 -
完結第14話
身代わり妻の逆転帰還
夫の代わりに罪を被り、2年間刑務所で耐え続けた佐藤由美。 亡き父が残した会社を守るため、そして夫・健一を信じるために、彼女はすべてを背負った。だが出所の日、ようやく帰った家で待っていたのは、姑の平手打ちと、夫から投げつけられた離婚届、そして若い愛人の勝ち誇った笑みだった。 「前科者のくせに、まだうちの息子と暮らす気なの?」 すべてを失ったように見えた由美は、泣き崩れることなく、ただ一本の電話をかける。 刑務所で出会った一人の女性。亡き父が残していた最後の言葉。仏壇の下に隠されたUSBメモリ。 2年前の事件は、本当に由美の罪だったのか。 翌日から、夫と愛人、そして由美を切り捨てた家族の嘘が、静かに崩れ始める――。嫁姑|夫婦2.1萬字5 0