みかん小説
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"60代からの第二の人生" 第3話

朝勤務の圧から解放され、夫婦を眺めながら静かにを振り返るはずだった穏やかな。それを指折り数えて待ちにしていた矢先に届いたのが、あの息子の無神経なメッセージだった。

の午、私のスマートフォンは息子の直哉からの矢継ぎなメッセージによって、断続に震え続けた。画面には、信じがたい指示が次々と並べられていく。

『あ、そうだ。子供たちの事、アレルギー対応をお願いね。男はエビとカニが駄目。次男は卵完全除女は麦アレルギーだからパンや麺類は避けて。次女は乳製品が駄目だから気をつけてね。』

『あと男の塾の期講習の宿題、しっかり見てあげて。将来医学部を目指してるから今が事なんだ。次女は夜泣きがひどいから、夜も起きて対応よろしく。』

ピコン、ピコンとたい通音がリビングに鳴り響くたび、私の臓のたいつずつ積みげられていくような息苦しさを覚えた。

「アレルギー対応に、塾の難問の宿題指導……それに歳児の夜泣きの相……これじゃあ、も休めないじゃない……」

私が乾いた声で呟くと、横で画面を見ていた浩司がいため息をつき、を抱えた。だが、メッセージはまだ終わらなかった。

『それと子供たちの着替えと洗濯も毎お願いね。

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オムツもりなくなったら買っといて。領収取っといてね。で精算するから。』

「領収」という無質な文字を目にした瞬、私の胸のかけて積みげてきたという名の堤防が、音をてて々に崩れっていくのをじていた。

の昼がり、居がけたたましい呼びし音を鳴らした。ディスプレイには直哉の妻である波さんの名が表示されている。私が受話器を取ってに当てると、こちらの挨拶を待つこともなく、弾んだるい声が鼓膜を打った。

「お母さーん! ハワイ、もう楽しみすぎて昨から全然眠れないんですよ!」

受話器の向こうから聞こえる屈託のない、浮かれた声。その無邪気な無神経さが、針のように私のの奥をチクチクと刺した。

「あ、そうそうお母さん。子供たちのことなんですけど、ゲームとYouTubeは絶対に禁止でお願いしますね。脳の発達に悪いので。それからおやつなんですけど、販のスナック菓子や添加物が入ったものは絶対にべさせないでください。できれば作りで、お砂糖控えめの蒸しパンかゼリーをお願いしますね!」

波さんはこちらの返事も待たずに息にまくしてる。私は胸の奥から湧きがるやりきれなさを抑えながら、掠れた声を絞りした。

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「あのね、波さん……。私だって末まで病院の仕事があって、体もあちこち痛むし、の子供たちの世話をしながら毎アレルギー対応をして、作りのおやつまでが回るかどうか……」

しかし、私の切実な訴えを遮るように、波さんは軽な笑い声をげた。

「何言ってるんですか、丈夫ですよ! お母さんは病院調理のプロじゃないですか。子供たちも『おばあちゃんのご飯好き』って言ってますよ。プロなんだから分くらい朝飯ですよね? じゃあ、よろしくお願いしまーす!」

プチッという無質な切断音とともに、通話はに途絶えた。 私は受話器を握りしめたまま、静まり返った廊ち尽くした。

「調理のプロだから……無料で働けっていうの……?」

私の声の震えに気づいた浩司が、から無言で歩み寄り、私の肩のにそっときなを置いた。

「完全に舐められてるな、俺たちは……」

浩司の静かな声には、りを通り越したい侮蔑のが混じっていた。

そして翌の朝。 たい、玄関のチャイムが激しく連打された。扉をけると、そこにはきなスーツケースをいくつも抱えた直哉と波さん、そして落ち着きなく騒ぐの子供たちの姿があった。

「母さん、着いたよ! 荷物いからリビングまで運ぶの伝って!」

挨拶もそこそこに、直哉は濡れた靴を脱ぎ散らかしながら同然の勢いでがり込んできた。

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