"消えた妻、11年後の再会" 第4話
「血縁確認はできています」
「そうじゃなくて」
修平は写真から目をさなかった。
「由紀子は、自分が由紀子だって分かってるんですか」
刑事は答えに迷った。
「部分には、というのが医師の見方です」
名を尋ねれば、ユキと答える。
名字は々、瀬と言える。
齢は正確に分からない。
今が何なのかも理解できていない。
横浜という名には反応する。
修平という名は、かなり定して覚えている。
「俺のことは?」
「写真を見せました」
修平が顔をげた。
「どうでした」
「く見ていたそうです。ただ、名は言えませんでした」
べばいいのか。
しめばいいのか分からなかった。
探していた妻がきていた。
けれど、妻が自分を夫として覚えている保証はなかった。
*
青葉ホームから、由紀子が使っていた私物が警察へ提された。
類。
古い鏡。
櫛。
さな財布。
そして、冊のい活ノート。
施設では毎週度、入居者に簡単な写や計算をさせていた。
冊につき。
最初のノートは〇〇。
由紀子が来て数かから始まっている。
最初のページには、丸をなぞる練習。
次には、
【あ】
【い】
【う】
子どもの練習帳のような文字が並んでいた。
ページをめくると、
【ゆき】
という文字がある。
さらに数ページ。
【しゅうへい】
修平の指が止まった。
字はきく歪んでいる。
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由紀子の跡とは似ても似つかない。
それでも自分の名だった。
〇〇。
【しゅうへい】
〇〇。
【しゅうへい どこ】
〇〇。
【しゅへい】
「毎、この期にいんです」
藤井奈緒が説した。
修平は青葉ホームへはかず、警察署で彼女から話を聞いていた。
「?」
「はい。の半になると、落ち着かなくなることがあったそうです」
。
由紀子が消えた。
本が付を理解していたのかは分からない。
季節。
暑くなるの空気。
何かの匂い。
体のに残った覚。
何がきっかけだったのかは誰にも分からなかった。
ただ毎同じ期に、修平の名をく回数が増えている。
〇〇のノートには、初めて漢字があった。
【修平】
修平はそこを指でなぞった。
「由紀子の字です」
奈緒が見た。
「分かりますか」
「昔、やってたんです」
由紀子は代、部だった。
結婚してからも賀状だけは毛でいた。
この文字は崩れている。
昔のような線ではない。
それでも「修」の最の払い方に癖が残っていた。
「これ、妻がいた字です」
修平は同じことをもう度言った。
*
〇〇のノート。
ページの央に、
【瀬】
とある。
名字が戻っていた。
そのには、
【帰る】
さらに、
【修平】
つの言葉がれてかれている。
文章にはなっていない。
だが修平には分だった。
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妻は自分から族を捨てたのではない。
なくともずっと、
帰る所に関わる何かを覚えていた。
「どうして誰も調べなかったんですか」
修平は尋ねた。
奈緒は答えられなかった。
以の職員は、
「昔の恋の名だとっていた」
と話している。
庭は、
「庭から逃げてきただと聞いていた」
と言った。
本が名字も所も言えない。
族へ連絡したいのか尋ねても、会話が続かない。
そうしてが過ぎ、が過ぎた。
誰も緊急の問題だとわなくなった。
「から逃げてきたって、誰が言ったんですか」
修平が尋ねると、奈緒は線を落とした。
「施設は、川さんから聞いたと言っています」
修平は名を聞いても、すぐにはを理解できなかった。
「川?」
「由紀子さんを最初に連れてきた方です」
「川隆司?」
「はい」
修平ので、の話が度に蘇った。
何か分かりました?
警察はどうですか?
しい報ありました?
奥さん、きっとどこかにいますよ。
「違う」
修平は言った。
「何がですか」
「川は、妻がどこにいるからないって」
声がだんだんきくなった。
「失踪した夜からずっと、そう言ってたんですよ」
*
警察は修平に、その点では川へ連絡しないよう求めた。
まだ青葉ホームの銭記録を調べている。
由紀子を連れてきた経緯も、庭の証言だけでは確定できない。
「でも、の記録に川の名があるんでしょう」
「あります」
「だったらってたじゃないですか」
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