"冷えた雑煮の逆転正月" 第9話
完全に脅しだった。
『逃げたら弓さん、本当に警察汰になるぜ』
俺は弁護士を見た。
「分かった。く」
『最初からそう言えばいいんだよ』
話が切れる。
弁護士が静かに言った。
「証拠は分です」
弓も頷く。
もう震えてはいない。
翌。
再び実の居へ入った。
母は価な黒い着物を着て、額にはきなガーゼ。
直は隣で腕組みをしている。
正夫叔父さんも呼ばれていた。
そしてもう1。
派なストライプのスーツ。
髪を撫でつけ、指にはの指輪。
「私はかず子さんの代理を務めるです」
男は名刺すらさなかった。
「単刀直入に申しげます」
診断をす。
「かず子さんは弓さんから暴力を受けています。このまま被害届をせば、傷害事件として扱われる能性があります」
母が勝ち誇った顔をする。
男は続ける。
「奥様が刑事事件になれば、健さんの赴任にも響がるでしょう」
そして2枚の類をした。
の名義変更同。
偽造された婚届。
「をかず子さん側へ戻す。そして弓さんは婚し、をる。それで被害届はさない」
母が猫なで声をした。
「弓さん、あなたのためをって言ってるのよ」
弓はまっすぐ母を見た。
「お義母さん」
「何よ」
「その額、本当に痛いですか?」
母の顔が引きつる。
「当たりでしょう! あなたに突きばされて――」
「会社のロビーで、自分で転んで作った傷ですよね」
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母の唇が震えた。
「証拠もないくせに!」
直が机を叩く。
「母さんには診断があるんだぞ! こっちには先だっている!」
そして余計な言を続けた。
「バックにはきな組織もいるんだ。おら素が勝てる相じゃねえよ」
俺の隣に座る弁護士が、鏡を押しげた。
「きな組織、ですか」
直が固まる。
「田浩司氏のことでしょうか」
その名を聞いた瞬、直の顔から笑いが消えた。
を名乗る男もらかに揺した。
「田? 誰ですかな」
「では確認しましょう」
俺の弁護士はタブレットを操作した。
「さん。まずあなたですが」
男をまっすぐ見る。
「弁護士資格をお持ちではありませんね」
居の空気が止まった。
「な、何を馬鹿なことを」
「弁護士会の登録に該当者がしません」
のが震え始めた。
「さらに、あなたが乗ってきたの所者は田浩司氏です」
男の顔が青ざめる。
直がちがる。
「話が違うじゃねえか」
が直を睨んだ。
「母親を脅せばすぐ判を押すって言っただろ!」
その言で、全てが崩れた。
母が理解できない顔をする。
「先……?」
「俺は帰る」
男は鞄を掴み、逃げるように玄関へ向かった。
「待って! 先!」
母が呼ぶが、振り返らない。
ドアが乱暴に閉まる。
俺は母を見た。
「もう芝居は終わりだ」
スマホを取りし、会社の防犯映像を再した。
誰もいない受付周辺。
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母が辺りを見回す。
自らへ倒れ、額をぶつける。
正夫叔父さんの顔がりに染まった。
「かず子さん……」
母が震える。
「違うの。貧血で……」
「まだ嘘をつくのか」
叔父の声はかった。
今度は弓がノートをした。
15分。
「お義母さん」
表へを置く。
「私も全部残してあります」
弓は読み始めた。
「105、300万円引きし。翌、百貨で着物を購入」
母が俯く。
「1112、200万円引きし。直さんへ現を渡す」
直の顔が引きつる。
「1220、500万円引きし。その、田さんの会社へ」
履歴が隣に並べられる。
付。
額。
致している。
「私が庫を漁ったんじゃありません」
弓がはっきり言った。
「あなたが自分ので、お義父さんのおを持ちしたんです」
母の最の逃げが消えた。
俺は直を見る。
「そして母さんを田へ紹介したのは、おだな」
母が直を見る。
「直……?」
「違う」
「あなたが紹介してくれたんでしょう? いい投資先だって」
「俺は紹介しただけだ!」
「母さんのが消えるのをってたんだろ」
「うるせえ!」
直が突然鳴った。
「母さんが勝に信じたんだろ! 俺のせいにすんなよ!」
母が呆然とする。
自分が番がってきた息子の言葉だった。
弁護士が直の契約をした。
「違法賭博による借についても調査済みです」
直の顔が青ざめる。
「あなたは借の返済のため、母親を田氏へつないだ」
「違う!」
「の契約にも田氏が保証として入っています」
直は震え始めた。
その。
くからサイレンの音が聞こえてきた。
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