"「子なし」離婚の大誤算" 第10話
陸へ直接渡すつもりはない。
それもかれていた。
「どうう?」
私は聞いた。
陸はく考えた。
「遅いとう」
「うん」
「でも、遅くても自分が違ってたって分かったなら、それは悪いことじゃない」
私は息子を見た。
「許す?」
陸は首を横に振った。
「許すとか許さないじゃないかな」
し笑った。
「僕のに必なではない。でも、あのにはあののがある」
私はその言葉を聞き、陸がもう完全にになったのだとじた。
帰国。
陸は研究を続け、私は次の撮旅の準備をした。
き先はアイスランド。
ずっと撮りたかったオーロラを追うつもりだった。
健から渡された記録媒体は、陸が自分の庫へ入れた。
それ以来、私たちはほとんど話題にしなかった。
ある、陸が言った。
「ママ。おじいちゃんとおばあちゃんのお墓、こう」
私の両親は、陸がまだ幼い頃にくなっていた。
私たちは毎墓参りをしていたが、今回陸から言いしたのは珍しかった。
墓へくと、陸は墓のへった。
しばらく何も言わなかった。
そして静かに話し始めた。
「おじいちゃん、おばあちゃん。陸です」
私はしれた所にっていた。
「20歳になりました。今は能を研究しています」
が々を揺らした。
「ママから、おじいちゃんが学で物理を教えていたって聞きました。
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僕のは、もしかしたらおじいちゃんに似たのかもしれません」
し笑った。
「僕ののことも全部りました」
私は息を止めた。
「んでないです。でも未練もないです」
陸の声は穏やかだった。
「は自分の選択に責任を持つべきだとうから」
度呼吸した。
「あのはあののを選びました。僕には僕のがあります」
そして墓へ向かってくをげた。
「僕は陸です。の子供で、おじいちゃんとおばあちゃんの孫です」
声がし震えた。
「僕のルーツはここです」
私は目の奥がくなった。
「ママは20、僕を守ってくれました。だからこれからは僕がママを守ります」
陸は振り返った。
もう私より背がかった。
その姿を見て、私はった。
この子は本当にになった。
帰り。
携帯話に経済ニュースの通がた。
吹投資創業者・渡辺健、経営の第線から退く。
個資産の半を、基礎科学や教育を支援する公益基へ拠。
記事には最の健の写真が載っていた。
髪が増えていた。
昔のような鋭さはなく、議なほど穏やかな顔だった。
私は記事を閉じた。
保もしなかった。
全て終わったのだ。
健はかつて、自分の帝国を守るために私を捨てた。
そして20、自分が築いたものをしずつ放し始めた。
それが償いなのか。
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悔なのか。
私はもう考えなかった。
私たちは私たちのをきている。
数。
アイスランドへ向かうの座席で、陸が窓のを見ながら言った。
「気予報、すごいよ」
「何が?」
「今週、きなオーロラがる能性がいって」
「本当?」
「うん。ママ、絶対いい写真撮れるよ」
私は笑った。
「じゃあ陸にもモデルになってもらおうかな」
「研究者を勝にモデルにしないでください」
真面目な顔を作ったが、すぐに笑った。
が滑をみ始めた。
私は息子の横顔を見た。
20。
区役所で、私は1だった。
妊娠3か。
していた夫には、しい女がいた。
彼は1秒でもく私との関係を終わらせようとしていた。
そのの私は、未来がどうなるか何も分からなかった。
ただ、お腹へを当てた。
この子だけは守ろう。
それだけを決めた。
そこから20。
さな根裏部。
泣き止まない夜。
初めての仕事。
失敗。
成功。
陸の最初の1歩。
学。
ロボット競技。
卒業式。
スイスの研究発表。
全てが瞬のようにも、途方もなくいのようにもえた。
「ママ」
陸が呼んだ。
「何?」
「ありがとう」
「急にどうしたの?」
「言いたくなっただけ」
私は笑った。
「じゃあママも言う」
「何?」
「まれてきてくれてありがとう」
陸はし照れた顔をして窓のを向いた。
が浮かびがった。
京のがしずつさくなっていく。
かつて私が健と暮らした所も。
写真館を始めた神田も。
陸と過ごしたも。
全部がくなる。
私はふとった。
ずっと世界で番美しいオーロラを撮りたいとっていた。
けれど本当は、もう20から見ていたのかもしれない。
暗ので現れ、私のを照らした。
を伸ばせば触れられる所で、ずっとそばにいてくれた。
私は隣に座る陸のへ、自分のをねた。
「陸」
「うん?」
「世界で番綺麗な景、見にこうね」
陸は笑った。
「世界で番事なと緒にね」
窓のには、ののがどこまでも続いていた。
過はもう追ってこない。
憎しみも、悔も、誰かの財産も肩きも、私たちの未来を決めることはない。
20、私は夫を失った。
けれどその、本当はで最も切なものをに入れていた。
そして今、その命は私の隣で笑っている。
私が20かけて守った未来そのものとして。
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