"5枚で消された妻" 第4話
だが、運転席の辺りで煙のだけが赤くっている。
カーテンの隙から見れば、健のだった。
話になければ、翌には実くに姿を現す。
「偶然だよ」
健はそう言った。
だが、美幸には偶然とはえなかった。
自分のを監されている。
その覚がににくなっていった。
美幸は自宅アパートと実をき来しながら、居所をられないように活した。
所のも、彼女の様子が以と違うことに気づいていた。
「最、丈夫?」
声をかけられると、美幸は決まって笑った。
「丈夫です」
しかしその笑顔は、以よりずっとかった。
第1回目の婚調は4末に予定された。
あと2か。
それを越えれば、何かが変わる。
美幸はそう信じていた。
その方で、健は別の所で類に署名していた。
命保険契約。
被保険者――美幸。
受取――夫、健。
保険――5000万円。
健が抱えていた借は、およそ2000万円に達していた。
5000万円あれば、それを返しても分にが残る。
しい活を始めることもできる。
妻が婚へ向けて本格にき始めたのと、ほぼ同じ期。
健は妻に額の命保険をかけた。
だが当の警察は、この契約のを確認しなかった。
それだけではない。
に捜査をやり直した刑事たちは、19942という同じ期に、健の名が別の所にも記録されていることをる。
広告
違法薬物を扱っていた男の古い帳簿だった。
しかしその事実がらかになるのは、12のことだった。
4に入ると、美幸は婚に向けた準備をさらにめた。
財産分与。
借。
今の居。
仕事。
つずつ確認していた。
412の朝。
美幸はを寄せていたアパートをた。
午930分頃、管理の鈴と廊ですれ違った。
「おはようございます。今はいですね」
鈴が声をかけると、美幸はち止まり、さくをげた。
「ええ、ちょっと用事があって」
その表は普段ときく変わらなかったという。
なくとも、自ら命を絶とうと決したのようには見えなかった。
午1010分頃。
美幸は予約もせず、佐々弁護士の事務所を訪ねた。
「調は、予定通りわれますか?」
それが最初の確認だった。
「もちろんです。相が欠席したにも続きはめられます」
「そうですか」
美幸はしたようにさく息を吐いた。
次に尋ねた。
「夫の借なんですが……婚したも、私が払わなければいけないんでしょうか」
佐々は類を見ながら説した。
借の名義。
借が活費のためだったのか、個なものなのか。
事によって扱いが変わる。
美幸は真剣に聞いていた。
それは、ぬ準備をするの相談というより、これから先をきるための相談だった。
面談が終わり、事務所をる。
広告
美幸は振り返らないまま、ぽつりと言った。
「く終わってほしいです」
佐々が聞いた、美幸の最の言葉だった。
午11頃。
そこから約1、美幸のは分からなくなる。
正午。
内のさなうどんに、美幸はで入った。
昼で、は作業着姿の男性や会社員で混雑していた。
汁の匂い。
器の音。
客たちの話し声。
そんな、美幸は窓際の席にで座った。
温かいうどんを注文し、黙々とべた。
女将の田は、に彼女の姿をいした。
「忙しいでした。でもなぜか覚えているんです」
美幸はほとんど残さずべた。
も杯んだ。
そして、すぐにはたなかった。
窓のをるを、い見つめていた。
「周りにはたくさんがいたのに、あのだけすごくに見えたんです」
午1頃。
美幸は内の薬局へ入った。
販の眠薬を購入する。
薬剤師から容量について説されると、さく「はい」と答えた。
その事実は、当の捜査記録にはほとんど反映されていなかった。
午3頃。
アパートのである伊藤が、美幸とすれ違った。
きな荷物はない。
普段着。
買い物へくような装だった。
「おかけですか?」
伊藤が声をかけると、美幸はしだけ微笑んだ。
「ええ」
それが、なによって確認された最の姿だった。
その、美幸は自分から姿を消したのではなかった。
彼女には、会わなければならない相がいた。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
嘘葬りの豆腐店
1991年、茨城の古い商店街で、豆腐屋の嫁・美香が突然姿を消した。 姑と夫が語ったのは、「男を作って夜逃げした」という話。幼い息子を置いて消えた母親として、美香の名は商店街で長く汚され続けた。 しかし6年後、借金による強制執行で高橋豆腐店が取り壊されることになる。誰も近づこうとしなかった裏手のボイラー室。そのコンクリートを掘り返した時、そこから現れたのは、色褪せたスカーフと小さな金の指輪だった。 男と逃げたはずの嫁は、なぜ自宅の床下にいたのか。 そして家族は、6年間何を隠し続けていたのか。 雨の夜に消えた母の名誉を取り戻すため、古い商店街の沈黙が少しずつ崩れ始める。ミステリー|行方不明1.9萬字5 0 -
完結第13話
消えた退院前夜
1991年5月、静岡県の総合病院で、退院を3日後に控えた43歳の女性・田中道子が忽然と姿を消した。 手術は無事に終わり、回復も順調。財布も保険証も病室に残されたまま、彼女だけが夜の病院から消えていた。 最後に確認されたのは、消灯時間の午後9時。翌朝、看護師がカーテンを開けた時、そこに道子の姿はなかった。 自ら出て行ったのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、病院の中で何かが起きていたのか。 家族は必死に行方を探し続けるが、手がかりは見つからないまま季節だけが過ぎていく。 そして8か月後、病院の監査で見つかった小さな異変が、すべてを変える。 消えた投薬記録。数の合わない睡眠導入剤。修正されたカルテ。 信じていた病院の奥で、道子に何が起きていたのか――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 0 -
完結第13話
長野中部山岳紅葉山カップル失踪事件
2019 年 10 月、韓国束草・雪岳山で忽然と姿を消した 20 代の恋人カップル。 山の監視カメラに最後の後ろ姿を残し、それきり跡形もなく消えてしまった二人。 大規模な山間捜索を何度も行ったものの、衣類の切れ端一つ見つからず、3 年間も謎のまま放置されていたこの失踪事件。 3 年後、排水溝の底から発見された一台の携帯電話。 本体に復元された記録の中に、たった 9 秒(原文 6 秒調整可)の謎の通話履歴が残っていたのです。 撮影した第三者の姿は監視カメラにも目撃談にも一切残らず、臨時インターネット電話番号からかかってきた不可解な電話。 通話直後、二人のスマホが同時に電源オフになる不可解な記録。 リュックの隠しポケットから出てきた手描き地図と謎のメモ「ここへ行けばある。17 時 25 分より前に渡るな」。 警察が調べても特定できない撮影者、地図に載っていない危険な山道、時系列が繋がる不自然な証拠たち… 長野(原文韓国束草に統一)の山に隠された、誰も想像できない真相とは? 年配の方も分かりやすく時系列順に整理した事件全貌、今すぐ全文を読んでみてください。真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 0 -
完結第13話
消えた母の 10 年地下室
1993 年、お盆の帰省途中で姿を消した若い母親―10 年後、地下室で衝撃の真実が明らかに! 隣に住む親切な青年が、彼女を長年地下室に監禁していた悪夢の物語。 幼い息子だけが地下室に隠れた母と遭遇し、守らなければならない秘密を抱える。 夫の不審な観察、祖母の疑念、犯人の焦り… 積もった疑惑がついに決定的な瞬間を迎える。 10 年間の監禁、脅迫、欺瞞が一気に暴かれる衝撃結末。 失われた家族の絆が、長い悪夢を乗り越えて再びつながるまでの全記録。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
マカオに消えた花嫁
2010年4月、マカオへ新婚旅行に訪れた日本人夫婦・田中浩司と山田愛子は、ホテルに荷物を残したまま忽然と姿を消した。 最後に確認されたのは、観光地の監視カメラに映った2人の姿。部屋に争った形跡はなく、財布も荷物もそのまま。誘拐か、事故か、それとも自ら消えたのか――事件は真相不明のまま、12年という歳月に埋もれていった。 しかし2022年、1人の女子大生がSNSで見つけた写真が、凍りついた時間を動かす。 マカオの街で中国人女性と寄り添う中年男性。その顔は、12年前に失踪したはずの夫・田中浩司に酷似していた。 では、彼と一緒に消えた妻・愛子はどこへ行ったのか。 幸せな新婚旅行の裏で、あの夜、本当は何が起きていたのか。 SNSに映った“夫の顔”が、12年間隠されてきた衝撃の真実を暴き出す。ミステリー|真実|行方不明2.0萬字5 0 -
完結第13話
消えた23人の観光団
2025年9月29日、福岡に約2700人の団体観光客が一斉に降り立った。 その日を境に、日本各地で不可解な失踪が相次ぎ始める。タクシー運転手、配達員、宿泊施設の関係者――いずれも夜、一人で行動することの多い男性たちだった。 やがて糸島の海岸で発見された身体の一部が、事件の扉を開く。 捜査を進める刑事・鈴木健二は、失踪した観光客、黒いワゴン車、古い倉庫、医療機器販売会社、そして横浜港へ向かう冷凍コンテナという、ばらばらに見えた点を追い始める。 これは単なる失踪事件ではない。 観光の人波に紛れ、日本の空き倉庫や港を利用して動いていた国際犯罪組織。その裏には、人間を“商品”のように扱う恐ろしい取引が隠されていた。 救える命はまだ残っているのか。 そして、海へ消えた男と「王」と呼ばれる人物の正体とは――。 福岡から始まった小さな違和感は、やがて日本全体を揺るがす闇へとつながっていく。ミステリー|真相2.0萬字5 0