"手書きの時刻表" 第9話
規則には載っていないが、川駅で働くために必な識だった。
田は同に、古い方法へ固執してはいけないとも伝えた。
「昔は駅員が何でもっていた。だが、それが良いことばかりとは限らん。には、られたくないこともある」
「田さんのノートにも、かない方がよいことがあったんですか?」
「ある。若い頃は、親切のつもりでの事へ踏み込みすぎたこともあった」
田は過を美化しなかった。
便利になるの代だから、が皆優しかったわけではない。狭い町の関係が息苦しく、誰にもられず町をたいと願うもいた。
「を覚えることと、を決めつけることは違う」
田はへ言った。
「いつも同じ列へ乗るからといって、同じ事とは限らん。ノートより、目のの本の言葉を事にしなさい」
それは、田が34の勤務でたどり着いた答えだった。
3末、田は最のき刻表を作り始めた。
定規で線を引き、4からの列刻をき写す。鉛を握るは以よりし震えていたが、1本ずつ丁寧に仕げた。
は隣の机で、しい業務冊子を更していた。
古い刻表としい記録。
2冊は互いを否定するものではなく、同じ目へ向かう別々の方法として机に並んでいた。
昭46331、田修は定のを迎えた。
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朝はよくれ、ホームのもほとんど解けていた。の斜面から流れるの音が聞こえ、線脇にはさな蕗の薹が顔をしている。
田はいつもよりく勤した。
駅舎の扉をけ、箒を持ってホームへる。は掃除を代わろうとしたが、田は最のくらい自分にやらせてほしいと笑った。
午542分の列には、野が乗った。
「い、お世話になりました」
普段は無な野が、改札で子を取った。
午618分には、川兄妹が来た。正はを卒業し、4から京の会社へ就職することが決まっている。
「田さんがいなかったら、試験に遅れたもありました」
「寝坊したおを、わしが自転で起こしにったか」
「母さんより怖かったです」
3は笑った。
由紀はを渡した。
子どもの頃、落とした赤い袋を拾ってくれたこと。部活で遅くなった、駅の灯りが見えるとしたことがかれていた。
午だけで、普段よりくのが駅へ来た。
列へ乗る予定がなくても、田へ挨拶するためにち寄った。のトヨは菜を持ち、田フミは病院の帰りに買った菓子を差しした。
田は1ずつ名を呼び、礼を言った。
午、事務の片付けを始めると、古い机の引きしから何冊ものノートがてきた。
昭20代の終わりから続く、きの刻表だった。
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表は擦り切れ、端が茶く変している。使われている鉛も式も代によって違ったが、どのページにも列の刻と々の名が並んでいた。
は、昭454のノートをいた。
自分が配属されただ。
〈君 京から配属。械にく、仕事がい〉
そのには、からき加えられたさな文字があった。
〈初めての。注。都会から来た若者、無理をさせないこと〉
はしばらく言葉を失った。
配属されたばかりの頃、自分は田を代遅れの駅員だとっていた。きの記録を非効率だと決めつけ、町の々との会話も駅務にはだと考えていた。
そんなのことも、田は最初からノートへ残していた。
批判ではない。
しいへ来た若者が孤しないよう、気にかけるための言葉だった。
「田さん」
はノートを持って振り返った。
「これ、私のことまでいていたんですね」
「客だけが、この駅を使うではないからな」
「私は田さんのやり方を、ずっと否定していたのに」
「否定されて当然のところもあった。君が来たから、わしも自分の仕事を見直せた」
田は机のに並んだノートへ目を向けた。
「全部、処分してもらって構わん」
「処分するんですか?」
「個のことがかれている。誰にでも見せてよいものではない。
必な報は、君の冊子へ引き継いだだろう」
はノートを抱えた。
「最の1冊だけ、残してもいいですか」
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