"手書きの時刻表" 第8話
田なら、ここへ残れと言うだろう。
は事務へ戻り、いたままのノートをに取った。
最のページには、の混乱ので田がいたらしい文字が残っていた。
〈君 初めての。1で抱え込ませないこと〉
そのには、途で鉛が止まった線があった。
は目を押さえた。
田は、自分が倒れる直までのことを気にかけていた。
午9、線点検が始まった。
昼過ぎには、り列を1本だけ運できる能性があるという。は待へ状況を伝え、帰宅先ごとに利用者を理した。
の悪いには駅のを配し、話のないには所の青へ伝言を頼む。昨夜作った名簿と田のノートを照らしわせ、1ずつ帰る方法を確認した。
午236分、2ぶりの列が川駅へ入ってきた。
ホームにいた々から拍が起きた。
は発ベルを鳴らし、乗客全員が乗ったことを確認する。掌へ図を送りながら、いつも田がっていた位置を見た。
そこには、のへ残った跡しかなかった。
列がった、は事務へ戻り、診療所へ話をかけた。
田は隣の病院へ運ばれたものの、命に別状はないという。数の入院が必だが、処置がにったと聞かされた。
受話器を置いたは、子へく腰をろした。
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堵した途端、涙が溢れた。
元には、田のき刻表がある。
列の刻だけでなく、誰が何を待ち、どこへ帰ろうとしているのかが記されたノート。
はしいページをいた。
そして初めて、田の真似ではなく、自分の言葉でいた。
〈121 。田修、駅を守り倒れる。町の々が田を病院へつないだ〉
田が川駅へ戻ったのは、2半ばだった。
医師から勤務復帰を許されたものの、午だけの勤務に限られた。かきやい荷物を運ぶことは、固く禁じられている。
駅舎へ入った田を、町の々が待っていた。
待の壁には、川兄妹が作った「おかえりなさい」のが貼られ、トヨは自宅で煮た豆を持ってきた。田フミも、自分の臓を配してもらっていたのに、先に倒れるなんて駄目ではないかと笑った。
田は照れくさそうに子を取り、何度もをげた。
「ご迷惑をおかけしました」
「迷惑をかけたのは、いつも私たちの方だよ」
フミの言葉に、周囲から笑い声が起きた。
はしれたところから、その景を見守った。
田がいない3週、川駅の仕事を回したのはだった。以なら、本部から届く報を伝えるだけで分だと考えていた。
しかし今は違う。
列が遅れれば、その列へ乗るの目を確かめる。
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や病院の予定変更も、駅で必と判断した報は掲示する。
それでも、田と同じようにはできなかった。
田は34かけて町の々と関係を築いてきた。数週で追いつこうとすること自体が違いだった。
「田さん、これを見ていただけますか」
はしく作った業務冊子を差しした。
表には「川駅利用案内・引継記録」とかれている。
には正式な刻表、乗自の運、病院やへの乗り換え例が理されていた。利用者個の予定については本の承を得たものだけを記載し、必がなくなれば削除する決まりも添えてある。
「田さんのノートを、そのまま写したわけではありません」
は説した。
「個の記憶へ頼りすぎると、引き継げないからです。でも、本部の刻表だけでは、この駅を使うの暮らしまで支えられません」
田は1ページずつ、をかけて読んだ。
「よくできている」
「本当ですか?」
「ああ。わしのより、ずっとのが使いやすい」
「でも、田さんの字ほど温かくありません」
「字に温かさが必なわけじゃない」
田は冊子を閉じた。
「必なへ、必な報が届けばいい。君が自分で考えて作ったなら、それが番だ」
は、胸の奥にあった緊張がほどけるのをじた。
それから田は、定までの残り1かを、への引き継ぎに使った。
の朝に凍りやすい分岐器。が続くとが溜まるホームの所。話がないへ急ぎの伝言を届ける、誰へ頼めばよいか。
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