"消えた水色の妹" 第5話
通話記録に百の番号が残っていなかったため、美は警察へ話していなかった。いや、正確には、話すことを避けていた。
「お姉ちゃん、私、今ちょっと怖いの」
受話器の向こうで、百は確かにそう言った。背にはの音が聞こえ、声は息を切らしていた。
「何があったの?」
「啓介さんのことで、見たものがあるの。お姉ちゃん、あのには気をつけて」
「百、何を言ってるの? 私、もうないといけないの。で話して」
周囲では式の職員が美を呼び、啓介も玄関で待っていた。美は妹の言葉を最まで聞かず、話を切った。
その、百から話はなかった。
結婚式から2か、美はにある百の部で、姉宛てにかれた便箋のきを見つけていた。そこには、非常付で啓介が女性の腕をつかみ、い声で脅すように話していたことが記されていた。
〈お姉ちゃんには幸せになってほしい。でも、あのには私たちのらない顔があるとう。、ちゃんと話で話すね〉
美はそのを誰にも見せなかった。夫への疑いをにした瞬、自分の結婚も、百が戻ってくるという希望も、すべて壊れてしまうようにえたからだった。
何より、啓介は誰よりに百を捜していた。ビラを作り、文を支え、美が泣くたびにそばにいた。
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その夫が妹へ何かをしたとは、美には信じられなかった。
「どうして今まで黙っていたの」
話の向こうで、文の声が震えた。
「分からない。怖かったの。もし疑ったことを啓介にられたら、百まで本当に戻らなくなる気がして……」
文はい何も言わなかった。やがて、い声で告げた。
「引っ越すに、あの作業部を調べなさい」
美は翌朝、作業部の鍵を探した。しかし、鍵束から専用の鍵だけがされていた。
「作業部の鍵は?」
朝の席で尋ねると、啓介のが止まった。
「もう荷物は片づけた。入る必はない」
「掃除をしたいの」
「業者に任せればいい」
啓介はそう言ってちがり、鞄を持ってをた。そのろ姿を見た、美は7の百と同じ恐怖を初めてじた。
美は管理会社へ連絡し、引っ越しにベランダの作業部を確認してほしいと頼んだ。壁の増設部分は、マンションの管理規約に反している能性があると説した。
啓介には、そのことを話さなかった。
3初旬、引っ越しは予定どおり終わった。啓介は作業具をすべて運びし、古いマンションの鍵を管理会社へ返却した。
それから4、管理会社が依頼した内装業者が、ベランダの作業部へ入った。増設された膏壁を取りすため、職がドリルで穴をけた。
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数センチんだところで、刃先が何かに引っかかった。断材とも材とも異なる、柔らかい触だった。
職が穴を広げて懐灯を向けると、壁のに黄く変した布が見えた。布は板と膏ボードのに押し込まれ、周囲を接着剤で固められていた。
現監督は作業を止め、管理会社へ連絡した。美にも確認を求める話が入り、彼女は母と緒にマンションへ向かった。
壁の部はすでに取りされていた。警察官が見守る、い布の包みが慎に取りされた。
には、透な袋でに密封された古い携帯話と、折り畳まれた2枚の便箋が入っていた。
携帯話を見た瞬、文が声をげた。
「これ、百のです」
いの本体には、青い魚の形をしたさな飾りが付いていた。百が護学を卒業した、美から贈られたものだった。
便箋の表には、にじんだ文字が残されていた。
〈お姉ちゃんへ〉
美はその文字を見て、っていられなくなった。壁へをつこうとした彼女を、文が支えた。
そのに啓介はいなかった。
しいマンションへ話をかけても、彼はなかった。事務所へ連絡すると、朝から取引先へたまま戻っていないと言われた。
7、妹を捜す妻と同じで暮らしながら、啓介はその妹の携帯話を、自分だけが使う作業部の壁へ封じ込めていた。
警察は作業部を直ちに規制し、携帯話と便箋を鑑定へ回した。端末は期源が切れた状態だったが、袋で密閉されていたため腐はなく、記録媒体も残っていた。
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