"最後の定期券" 第5話
最に目撃された所は。
青葉川駅だった。
駅員だった夫は、そのも勤務していた。
そして。
優子を見ていた。
しかし。
それが最になるとはわなかった。
「お父さんは、そののことをずっと悔していた」
美佐子は言った。
「優子ちゃんが駅に来た、夫さんは別のお客さんの対応をしていたの」
「ほんの数分だったらしいわ」
「でも、その数分のに、あの子はいなくなった」
由紀は息を止めた。
「父は……何か見逃したとっていたの?」
「そう」
美佐子は頷いた。
「もし声をかけていたら」
「もし、もうしく気づいていたら」
「そう何度も言っていた」
由紀はを見た。
『必ず迎えにく』
その言葉のが、しずつ分かってきた。
父は優子を探していたのではない。
自分が果たせなかった責任を、30背負っていたのだ。
由紀は、そのの午、再び域資料館へ向かった。
父の失踪を解決するため。
それだけではなかった。
自分自がりたかった。
父が30背負ってきたものを。
資料館で対応してくれた元駅員の田は、由紀を見るとすぐに分かったような顔をした。
「田さんの娘さんですね」
「どうして分かったんですか?」
「顔が似ています」
田はし笑った。
「特に目が」
その言葉に、由紀は複雑な気持ちになった。
父に似ていると言われることを、昔は何ともわなかった。
広告
しかし今は。
父というをらなかった自分が悔しかった。
「父は、本当に30このことを気にしていたんですか?」
田は古い資料を取りした。
青葉川駅の閉鎖記録。
当の聞記事。
そして。
枚のコピー。
そこには30の記事が載っていた。
《学4女児、方》
記事には、優子の写真が載っていた。
しかし。
そのにさな文章があった。
「警察ではの能性も含めて捜査」
由紀は眉をひそめた。
「……」
田は頷いた。
「当はそう考えられた」
「でも父は違った?」
「田さんだけじゃない」
田は言った。
「私もし違があった」
「違?」
田は聞記事の端を指した。
「優子ちゃんは、学帰りに駅へ来ている」
「でも、そのはだった」
「傘は?」
由紀は記事を見る。
持ち物欄。
そこには。
「傘なし」
とかれていた。
「変だといませんか?」
田が聞いた。
「学4が、のに傘も持たず、くへくでしょうか」
由紀は答えられなかった。
確かに自然だった。
「じゃあ、父は何を考えていたんですか?」
田はし迷ってから答えた。
「田さんは、あの子は誰かを待っていたと言っていた」
「誰かを?」
「はい」
「でも、それが誰かは分からなかった」
田は古い駅の写真を見た。
「ただ、つだけ」
「何ですか?」
「優子ちゃんが最に持っていたものです」
田が資料から取りした。
それは、さな青いキーホルダーだった。
広告
「これ……」
由紀は驚いた。
写真に写る女のバッグについているものと同じだった。
「父はこれを探していたんですか?」
田は首を振った。
「違います」
「田さんが探していたのは、キーホルダーじゃない」
田は静かに言った。
「そのに入っていたものです」
由紀は初めて聞く話だった。
青いキーホルダーは、さなケース型になっていた。
には、本来なら何かを入れられる空があった。
そして。
優子が失踪した。
そのケースだけが駅のホームで見つかった。
はなくなっていた。
「何が入っていたんですか?」
田は首を横に振った。
「それは誰にも分からない」
「でも」
田は続けた。
「田さんは、それが優子ちゃんが消えた理由に関係しているとっていた」
由紀の背筋がえた。
ただのではない。
父は30、そう考えていた。
その夜。
由紀は父の部へ戻った。
机のには、まだ父の帳が残っている。
ページをめくる。
普通の記。
気。
買い物。
病院の予定。
しかし。
最の数ページだけ。
内容が変わっていた。
そこには。
30の駅名。
の名。
所。
そして。
つの文章。
「優子ちゃんは、あの、誰かから逃げたのではない」
「誰かを守ろうとしていた」
由紀は息を止めた。
父は。
何かをっていた。
そして。
それを族にも。
警察にも。
言わなかった。
翌、由紀は父の帳を持って母のに座った。
「お母さん」
「何?」
「これ、ってた?」
美佐子は帳を見た瞬、表を変えた。
その反応だけで、由紀には分かった。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
飛騨の農家に消えた嫁
1995年、岐阜県飛騨地方の山あいにある和牛農家へ嫁いだ27歳のゆき子。 よく働き、誰にも逆らわず、慣れない村で必死に暮らしていた彼女は、ある冬の日、牛舎へ向かったまま姿を消した。片方だけ残された長靴。消えた青いジャンパー。そして、家族が語った「自分から出て行った」という言葉。 警察は深く調べることなく、失踪は家出として処理された。 それから8年。村では何事もなかったように季節が巡り、義父の幻蔵は“誠実な畜産農家”として周囲から慕われ続けていた。 しかし、牛舎裏の堆肥の山から見つかった人骨が、止まっていた時間を動かす。 長年誰も近づけなかった壺のそば。夜ごと繰り返された寝言。真冬の洗車場で執拗に洗われた軽トラック。 誰も探さなかった若妻は、8年間どこにいたのか。 そして、家の体面を守るために義父が隠し続けたものとは――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 212 -
完結第11話
6秒の着信
2019年10月、紅葉の雪岳山を訪れた若い恋人、ジフンとアリン。 翌年に結婚を控えた2人は、記念写真を残すために山へ向かった。登山口の防犯カメラには、笑い合いながら歩く幸せそうな姿が映っていた。 しかし午後3時過ぎ、2人は分岐点でなぜか正反対の道へ進む。 そして、そのまま山の中から忽然と姿を消した。 大規模な捜索が行われても、足跡も荷物も見つからない。事故なのか、失踪なのか、それとも誰かが2人を誘い込んだのか。真相が分からないまま、3年の月日が流れていく。 やがて2022年、登山道近くの泥の中から、アリンの携帯電話が発見される。 そこに残されていたのは、最後に撮られた1枚の写真と、わずか6秒間の通話記録。 「そのまま来てください。彼も着きました」 その短すぎる声が、3年間“山で消えた”と思われていた恋人たちの、本当の行き先を暴き始める――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 244 -
完結第12話
壁の中の13年
平成3年、埼玉の小さな町で、妊娠8か月の美智子が突然姿を消した。 財布も出産準備の品も家に残されたまま。昼にはスーパーで買い物をし、公衆電話から誰かへ電話をかけ、その後、背の高い男と歩く姿を目撃されたのを最後に、彼女の行方は分からなくなる。 夫の誠、東京にいたはずの兄・茂、そして美智子を追い詰めていた山田家の沈黙。 警察は夫を疑い、町は噂に揺れたが、決定的な証拠は見つからないまま、事件は13年の時に埋もれていく。 しかし平成16年、再開発で古い家が解体された時、寝室の壁の内側から、長年隠されていたものが見つかった。 あの日、美智子は誰に電話をかけたのか。 そして、壁の中に封じられていたのは、彼女の行方だけではなかった――。ミステリー|真相1.8萬字5 607 -
完結第14話
10年目のゲームボーイ
1991年、8歳の誕生日会の最中に、篠原恵美の息子・直樹は忽然と姿を消した。 公園には多くの親子がいた。ほんの数分前まで、直樹は青いゲームボーイを手に友達と遊んでいたはずだった。だが、気づいた時にはどこにもいない。目撃者も、手がかりも、残された物もなかった。 それから10年。 息子を見失った母の時間だけが、あの日のまま止まっていた。 そんなある日、友人に連れられて訪れたフリーマーケットで、恵美は古い玩具の山の中から一台の青いゲームボーイを見つける。そこには、直樹が自分で貼ったはずの3枚のシールが、記憶のまま残されていた。 それを売っていたのは、かつて地域で信頼されていた元警察官の男。 なぜ、消えた息子の持ち物が10年後にそこへあったのか。 そして男が思わず口にした「息子」という言葉が、隠されていた10年の闇を少しずつ暴き始める――。ミステリー|裡の顔2.1萬字5 225 -
完結第13話
消えた23人の観光団
2025年9月29日、福岡に約2700人の団体観光客が一斉に降り立った。 その日を境に、日本各地で不可解な失踪が相次ぎ始める。タクシー運転手、配達員、宿泊施設の関係者――いずれも夜、一人で行動することの多い男性たちだった。 やがて糸島の海岸で発見された身体の一部が、事件の扉を開く。 捜査を進める刑事・鈴木健二は、失踪した観光客、黒いワゴン車、古い倉庫、医療機器販売会社、そして横浜港へ向かう冷凍コンテナという、ばらばらに見えた点を追い始める。 これは単なる失踪事件ではない。 観光の人波に紛れ、日本の空き倉庫や港を利用して動いていた国際犯罪組織。その裏には、人間を“商品”のように扱う恐ろしい取引が隠されていた。 救える命はまだ残っているのか。 そして、海へ消えた男と「王」と呼ばれる人物の正体とは――。 福岡から始まった小さな違和感は、やがて日本全体を揺るがす闇へとつながっていく。ミステリー|真相2.0萬字5 227 -
完結第12話
床下の小さな指輪
1991年、群馬県山川町の古い油屋で、嫁の佐藤美優が幼い息子を残して姿を消した。 家族は「男と駆け落ちした」と証言し、町にもその噂は広まった。働き者で、息子を誰より大切にしていたはずの美優は、いつしか“子供を捨てた母親”として語られるようになる。 それから6年後。 借金で差し押さえられた油屋の離れを壊した時、床下のセメントの奥から、人骨と小さな金の指輪が見つかった。 美優は本当に家を出たのか。 なぜ姑は、離れを壊すことだけを必死に止めたのか。 そして彼女が最後まで握りしめていた指輪は、誰のためのものだったのか――。ミステリー|真相1.8萬字5 168 -
完結第11話
11年目のコロッケ
14歳の秋、黒田み咲の母・裕子は「夕飯のおかずを買ってくるね」と言って家を出たまま、二度と戻らなかった。 父は、母が家の金を盗み、近所の男と駆け落ちしたのだと親族に告げた。置き手紙も見つかり、周囲の大人たちは皆それを信じた。残されたみ咲は、“泥棒の娘”として11年間、父と継母、そして親族たちから辱められ続けることになる。 しかしある法要の日、裏山の古い井戸から、母が消えた日に買ったコロッケのレシートと、泥にまみれたカーディガンが見つかる。 母は本当に男と逃げたのか。 なぜ、継母の失くしたはずのイヤリングが井戸の底にあったのか。 そして、11年間沈黙していた“目撃者”が現れた時、黒田家が守り続けてきた嘘は音を立てて崩れ始める。 母に捨てられた娘だと思い込まされてきたみ咲が、封印された真実へたどり着くまでの、愛と復讐の物語。ミステリー|行方不明1.6萬字5 1458