"飛騨の農家に消えた嫁" 第5話
2002、涼子は富内のさな縫製で働いている最に倒れ、入院した。
病でに漏らした。
「うちのゆき子が自分でをただけなら、今頃1度くらい連絡してくるはずよ」
涼子は窓のを見た。
「8、話1本寄こさない娘じゃないもの」
その言葉に、は答えられなかった。
その頃、騨の農では、牛舎裏の堆肥のだけが々くなっていた。
農の牛舎裏には、きな堆肥置きがあった。
牛舎からたものを積みげ、定期発酵させて田畑へ使う。畜産農であれば珍しくもない景だった。
ただし、の堆肥置きには1つだけ妙なことがあった。
そのすぐ脇には、噌や醤油、梅干しなどを保するきな壺が5つ、6つ並べられていた。
壺自体はごく普通のものだった。
奇妙なのは、蔵がその所を異常なほど気にしていたことだった。
再婚したゆみが、あるのに壺の周囲を掃除しようとすると、蔵がのからびしてきた。
「何しとる」
ゆみは箒を持ったまま振り返った。
「がえてきたので、抜こうとって」
「そんなことせんでいい」
「でも、ここだけ残っていますから」
蔵はゆみと壺のへ入った。
「ここは俺がやる。触るな」
いつもよりい声だった。
ゆみは驚いたが、それ以は何も言わなかった。
になれば、蔵は自分で壺の蓋を拭いた。
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になるとが数センチ伸びただけで鍬を持ちし、周囲をきれいにした。
壺から2メートルほどの範囲に誰かがづくと、族に対しても嫌になった。
「そこに何を見るものがある」
そう言って体でを遮ることもあった。
ゆみは当初、それを古い農特の頑固さだとっていた。
だが壺からわずか数センチろ。
堆肥のとの境目に何があったのか、ゆみはるはずもなかった。
夜にも奇妙なことがあった。
結婚から数が経った頃、ゆみは蔵の部から夜に声が聞こえることに気づいた。
最初は体調が悪いのだとった。
廊でを澄ませると、声は途切れ途切れだった。
「片付けろ……」
「片付けてしまえ……」
「誰もらん……」
寝言だった。
ゆみが襖を軽く叩いても、返事はない。
朝になれば蔵は何事もなかったように卓へ座り、噌汁をんだ。
ある朝、ゆみは健へ話した。
「お義父さん、最夜にずっと何か言ってるよ」
健は聞をめくった。
「寄りの寝言だろ」
「『片付けろ』とか『誰もらない』とか……」
健はそこで聞をげた。
「親父のことに首を突っ込むな」
い言だった。
ゆみはそれ以何も言えなかった。
2000代に入ってから、蔵は酒をむ量も増えた。
以は夕に本酒を1、2杯む程度だった。それがいつしか焼酎の瓶を毎晩のように空けるようになった。
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酔いがくなると、1で勝からへる。
ゆみが台所の窓から見ると、蔵は牛舎の裏にっていた。
何かをするわけではない。
ただ暗ので、壺と堆肥置きの方を見つめている。
10分。
20分。
にはそれ以。
そして何事もなかったようにへ戻ってきた。
「何を見てるんだろう」
ゆみは何度もそうった。
ただ、そのはく考えなかった。
2002になると、蔵の体調が目に見えて悪化した。
持病に加えて血圧もなり、歩くには杖が必になった。
町の病院では、族の負担も考えて老施設への入居を勧められた。
健も父親へ話した。
「親父、し施設に入った方がいいんじゃないか。ここはも厳しいし」
蔵は瞬、何を言われたのか分からないような顔をした。
次の瞬、目のの茶ぶ台をひっくり返した。
湯みが転がり、茶が畳へ広がった。
「俺はこの農でぬんだ!」
枯れた声だった。
「どこにもかん!」
ゆみは驚いてけなかった。
当は、暮らしたをれたくない老の気持ちなのだろうとった。
しかし事件がらかになった、ゆみは何度もあの面をい返した。
蔵がれられなかったのは、農への着だけではなかったのではないか。
そこに残してきたものを、誰にも触れさせるわけにはいかなかったのではないか。
20036。
蔵はを引きずりながらも、まだ壺の周辺を自分で入れしていた。
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