みかん小説
本棚

"母の認知症は芝居だった" 第5話

「すみません。娘様にしお伝えしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」

「私ですか?」

「はい」

施設は兄をちらりと見た。

し男性のいないところでお話したい内容です。お数ですが、別へ来ていただけますか。すぐに済みます」

「あら、それなら私もった方がいいかしら」

まやさんががろうとした瞬、施設は慌てて止めた。

「いえ、奥様は息子様とこちらの類をご確認ください。娘様だけで結構です」

その声は丁寧だった。

けれど、拒絶のだけは確だった。

私は首を傾げながらがった。

男性には言いづらい。

それなら女性であるまやさんも緒でいいはずなのに、なぜ私だけなのだろう。

ると、施設は何も言わずを歩いた。

先ほどまで案内された所とは違う、職員用スペースにさな部へ向かう。

扉が閉まった。

私はを見てを止めた。

「……お母さん?」

そこに母がいた。

レクリエーションへったはずの母が、子に座っている。

そばには先ほどの介護職員と、もう女性職員がっていた。

「あれ? 母はレクリエーションに参加してたんじゃ……」

「その予定でした」

施設い声で答えた。

「ですが、職員がお母様のお体について気になることに気づきました」

「体?」

が分からず、私は母へづいた。

すると母が顔をげた。

広告

さっきまで焦点のわないような目をしていたと、同じとはえなかった。

私をまっすぐ見ている。

「あかり」

はっきりした声だった。

私は息を止めた。

「……お母さん?」

「あかり、ごめんね」

「何が?」

「ずっと嘘をついていて、ごめんね」

母の声は震えていた。

けれど言葉は瞭だった。

「お母さん……私が誰か分かるの?」

母は泣きそうな顔で頷いた。

「あんたは私の娘のかりよ。亜美じゃない」

が真っになった。

「じゃあ、今までのは……?」

施設が私の横へ来た。

「娘様、どうか落ち着いて聞いてください」

その言葉とは反対に、施設の表は険しかった。

「お母様は、認症ではない能性が非常にいです」

「え……?」

「そして先ほど、介助のためにお体を確認した職員が、複数の自然な傷を見つけました」

母が膝のく握る。

施設く息を吸った。

「お母様から事も伺いました」

私を見る目が変わった。

「これは施設の入居相談だけで済ませていい話ではありません」

「何を……言ってるんですか」

声が震えた。

施設は、ゆっくりと言った。

「私の方から事を伝えておきます」

そして、その次の言葉で、私の世界は完全にひっくり返った。

「今すぐ警察にっていただけませんか」

「警察って……どういうことですか?」

自分の声がくから聞こえた。

兄夫婦は、今も隣の部で入居類を読んでいる。

広告

さっきまで私は、その2に「介護を任せてごめん」とげていた。

施設費用も全部すつもりだった。

それなのに、警察。

施設は答える代わりに母を見た。

母は何度も唇を震わせたを決したように私へを伸ばした。

「あかり」

私はそのを握った。

たかった。

「何があったの?」

母の目から涙がこぼれた。

「お母さんね、ずっとあの2が怖かったの」

「……あの2?」

聞き返しながらも、誰を指しているのか理解していた。

理解したくなかっただけだ。

「お兄ちゃんと……まやさん?」

母が頷いた。

施設の職員が、母のしずらしてくれた。

腕。

肩。

古くなったものとしいものが混ざった、いくつもの痕があった。

私は言葉を失った。

「これ……何?」

母が顔を伏せる。

「まやさんにやられたのもある。お兄ちゃんにやられたのもある」

「嘘……」

反射にそうにしていた。

母を疑いたいわけではない。

ただ、が受け入れられなかった。

兄は昔から乱暴者ではなかった。

なくとも、私のでは。

母の事故、同居を申してくれた。

まで継いだ。

まやさんも私に何度も優しい言葉をかけ、「お義母さんのことは任せて」と言ってくれた。

「ちょっと待って」

私は額を押さえた。

「急にそんなこと言われても……」

母の目にしみが浮かんだ。

私は慌てて首を振った。

「違うの。お母さんを信じたくないってじゃない。

ただ……私、何もらなかったから」

「あかりに言えなかったの」

母は涙を拭った。

話するだけ、スマホを返してもらってたから」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: