"白いハンカチの約束" 第7話
「それで?」
「うちが朝起きて何も問題がなければ、いハンカチをすんです」
は続けた。
「トメさんが元気なら、8までに茶い座布団をす」
主婦は目を丸くした。
「それだけ?」
「それだけです」
「もしてなかったら?」
トメが答える。
「見にく」
主婦は昨の朝をいした。
だからトメはあんなに慌てていたのだ。
いハンカチが干されなかったから。
普段なら誰も気にしないようなさな変化が、トメには異変のらせになっていた。
「でも……」
主婦はし笑いながら言った。
「だったら話を引けばいいのに」
トメも笑った。
「話なんかしたら、毎朝何を話していいか分からないよ」
「おはようございます、元気ですか、でいいじゃないですか」
「毎朝かい?」
「まあ……毎朝は確かに困りますね」
も笑った。
「このくらいがちょうどいいんです」
その言葉には、3のでしか分からないみがあった。
すぎない。
れすぎない。
用がなければ話さなくてもいい。
けれど本当に困ったには気づく。
いハンカチと茶い座布団は、そのための距だった。
清が退院したのは、それから数だった。
病院から戻ると、以よりしゆっくり階段をがるようになった。がを歩き、途で何度も振り返る。
「丈夫?」
「丈夫だ」
「無理しないでくださいよ」
「病院でも同じことを何回も言われた」
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「何回言われても聞かないからでしょう」
4階までがると、隣たちが顔をした。
「松田さん、お帰りなさい」
「変でしたね」
「無理しないでくださいよ」
清はし照れたようにをげた。
「ご配かけました」
部へ入って最初にしたことは、子へ座ることだった。
清は窓のを見る。
向かいの5号棟。
トメの部のカーテンがしいている。
「トメさん、ずいぶん配したんですよ」
が言った。
「聞いた」
「4階までってきたんですって」
「れる歳じゃないだろ」
「本に言ったらられますよ」
清はし笑った。
翌朝。
はいつもよりく目を覚ました。
計は6半。
台所へく。
湯を沸かす。
清の薬を用する。
いつもの朝だった。
けれど7がづくにつれ、にはし特別な気持ちがあった。
箪笥の引きしからいハンカチを取りす。
入院騒ぎの以来、初めてだった。
「私がそうか」
清が言った。
「駄目です」
「ベランダへるくらい」
「先が無理するなって」
「無理じゃない」
は夫を睨んだ。
「このまで病院にいたが言っても説得力ありません」
7。
が窓をける。
の気が部へ流れ込む。
いハンカチを広げる。
洗濯ばさみで、いつもの所へ留めた。
を受けた布が、ぱっと広がった。
5号棟3階。
窓際にトメがっていた。
いため表までは見えない。
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それでもには、トメがこちらを見ていることが分かった。
はほんのしをげた。
トメも同じようにをげた。
それ以のことはしなかった。
部へ戻る。
「見てた?」
清が尋ねる。
「ええ」
「ならいい」
それから1。
8になる。
今度は清が窓際へった。
「たぞ」
も見る。
5号棟3階のベランダに、古い茶の座布団がかかっていた。
清は何も言わず、しばらくその座布団を見ていた。
「何です?」
「いや」
「トメさんも元気ですよ」
「ああ」
それだけ言うと、清は子へ戻った。
団の常も戻った。
子どもたちは空きをり回る。
主婦たちは買い物籠を提げて商へ向かう。
夕方になると、どこかのから夕飯の匂いが流れてくる。
そして朝になれば、3号棟4階へいハンカチがる。
8になれば、5号棟3階へ茶い座布団が現れる。
以と同じようでいて、つだけ変わったことがあった。
隣の主婦が、その2つを々見るようになったのだ。
洗濯物を干しながら、
「今は両方てる」
とので確かめる。
誰かに頼まれたわけではない。
けれど事をってしまうと、自然と目がくようになった。
やがてその話をった別の主婦も、
「林さんの座布団、今はし遅かったね」
と言うようになった。
本たちがらないところで、さな見守りの輪がほんのしだけ広がっていた。
がづくと、団の空きにも柔らかな差しが戻ってきた。
子どもたちはい着を脱ぎ、学から帰るとすぐへびす。
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