"壁の中の13年" 第8話
美智子がまだきていた能性もあり、腹のには産を1かに控えた子どもがいた。たとえ自分が責任を問われたとしても、救命を優先しなければならない状況だった。
しかし茂は違う選択をした。
警察に疑われる。
弟にられる。
会社にられる。
庭が壊れる。
瞬のうちにへ浮かんだのは、美智子を助ける方法ではなく、自分が失うものばかりだったという。
茂は救急を呼ばず、をた。
へ乗り、京へ戻った。
午4頃には再び会社へ戻り、何事もなかったように机へ座った。周囲から「、かかったな」と言われても適当に笑い、夕方まで仕事を続けた。
その夜、茂はほとんど眠れなかった。美智子が倒れたの音が何度ものによみがえり、話が鳴るたび警察からではないかと構えた。それでも自分から弟へ話することも、救急関へ連絡することもしなかった。
翌、美智子が方になったという話が親族から伝わった。
茂は驚いたふりをした。
弟から「美智子がいなくなった。何からないか」と聞かれても、「らない」と答えた。警察から連絡を受けたも、そのは京の会社にいたと説し、昼休みに埼玉へったことを隠した。
会社の勤務記録があったため、当の捜査員もそれ以く追及しなかった。
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そのまま数が経った。
茂は、美智子が自分のに誰かと会い、そのままをた能性を考えようとした。倒れたには識を失っていただけで、から起きがってどこかへったのかもしれないともった。
自分でも信じていない像だった。
失踪から約1週、夜になって誠から話があった。
「兄貴、来てくれ」
声がかった。
茂は胸騒ぎを覚えながらで埼玉へ向かった。夜11く、弟のへ入ると、誠はほとんど言葉を発さないまま寝へ向かった。
そこには、美智子がいた。
茂が置きりにしたのままではなかった。
誠は妻を別の所へ移し、布をかけていた。
「兄貴がやったのか」
誠の最初の言葉だった。
茂は何も答えられなかった。
誠は失踪当の午、予定よりく仕事を抜けてへ戻っていた。寝で倒れている美智子を見つけたには、すでに反応がなく、腹のの子どもも含め、助けられる状態ではないとい込んだという。
警察へ通報しなかった理由を、誠はこう説した。
美智子が朝、「お義兄さんに相談したいことがある」と話していた。
午に帰宅した、には妻だけが倒れていた。
兄に話をしようとしたが、怖くてできなかった。
そして、もし兄が関係しているなら、警察へ通報すれば田がすべて壊れるとった。
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妻より。
まれてくる子どもより。
兄弟との体面を。
優先した。
茂が13抱えていた秘密は、ここからさらにくなる。
弟は妻を助けなかっただけではなかった。
兄を守るため、美智子を「方者」にすることを選んだのである。
取調で茂の供述を聞いた佐々刑事は、何度も確認を挟んだ。美智子を倒れたまま置きりにしたのが茂で、その最初に妻を発見したのが誠なら、平成3当にがったことを正確に分けなければならなかった。茂は顔をげることができず、13度も語らなかった夜の来事を、しずつ続けた。
失踪から約1週、誠に呼ばれてへった茂は、弟から「このままじゃ見つかる」と言われた。警察はすでに何度かへ来ていたが、の能性をく見ていたため、寝を含む全体を解体するような捜索まではしていなかった。それでも遺体をに残したままでは、いつか何かのきっかけで発見される能性があるととも理解していた。
本来なら、その点でも警察へすることはできた。茂が美智子を突きばした経緯、誠が妻を発見してから通報できなかったことを正直に話せば、なくとも13といういを嘘で埋めることはなかった。しかしは、度ついた嘘を守るためにさらにきな嘘をねるを選んだ。
誠には建設現で働いた経験があり、古い造宅の壁がどのような構造になっているか識があった。
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