"22年目の母席" 第11話
反対側には麗子がいる。
美緒を挟んでの女がつ形になった。
麗子は京子を見た。
し笑った。
京子も笑った。
シャッターが切られた。
その写真が届いたのは、ヶだった。
美緒が婚旅から戻り、京子のへアルバムを持ってきた。
は寒かった。
鮮丼をべすぎた。
達也がレンタカーでを違えた。
そんな話をしながらページをめくる。
チャペル。
ベール。
指輪。
披宴。
。
最に集写真。
京子はしばらく見た。
自分は美緒の隣にいる。
し泣いたあとの顔。
あまりきれいではない。
「お母さん、これ欲しい?」
美緒が聞いた。
「枚くれる?」
「きくして渡そうか」
「普通のでいい」
美緒は笑った。
「お母さん、写真嫌いだもんね」
「嫌いじゃないよ」
京子はページを閉じた。
「自分の顔見るのが嫌なだけ」
で笑った。
「そうだ」
京子はいした。
引きしからさな封筒を持ってきた。
「これ」
「何?」
美緒がける。
のさなペンダント。
裏には、美緒がまれたの数字が刻まれている。
「お父さんと買ったの」
美緒が顔をげた。
「いつ?」
「お父さんがきてた」
「何で結婚式でくれなかったの?」
京子はし考えた。
「渡したくなかったから」
「え?」
「その頃ちょっと腹ってたし」
美緒が吹きした。
「そこ正直に言う?」
「今渡したくなったから、今でいいでしょう」
美緒はペンダントをのにのせた。
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しばらく見ていた。
「ありがとう」
京子は頷いた。
麗子とは、結婚式も美緒は々連絡を取っている。
毎週ではない。
母とは呼んでいない。
今も「麗子さん」だ。
それでも先、で昼へったらしい。
京子は内容を聞かなかった。
美緒が話したくなれば話す。
それでいいとえるようになった。
麗子も京子へ度だけメッセージを送ってきた。
《福岡のお菓子を送りました。嫌でなければべてください》
以なら、
《お気遣いなく》
と返しただろう。
京子は、
《ありがとうございます。甘い物は好きです》
とだけ返した。
翌週、本当にきな菓子箱が届いた。
ではかったので、職へ半分持っていった。
由美子がべながら聞いた。
「実母さんとは仲良くなったの?」
「別に」
「嫌い?」
京子はし考えた。
「好きではない」
由美子が笑った。
「正直になったねえ」
「でも、嫌い続けるほど暇でもない」
「それいいね」
で笑った。
京子の常は、結婚式が終わってもほとんど変わらなかった。
週4スーパーへく。
夕を作る。
修平の仏壇へを供える。
休には美緒と会うもあれば、で映画を見るもある。
ただ、つだけ変わった。
以の京子は、美緒から頼まれるとほとんど断らなかった。
買い物。
荷物の受け取り。
平の夕。
達也との喧嘩の相談。
何でも聞いた。
最は、
「今は無理」
と言うようになった。
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最初に言った、美緒は驚いた。
「予定あるの?」
「ない」
「じゃあ何で?」
「今はで本読みたいから」
美緒は数秒黙った。
それから、
「分かった」
と言った。
何も壊れなかった。
母親が度断っても、族は終わらなかった。
京子はそのことを、58歳になって初めてった。
のある。
美緒と達也が夕をべに来た。
京子はカレーを作った。
美緒は昔から、京子のカレーにだけ卵を落とす。
達也が議そうに見た。
「それ美しいの?」
「うちはずっとこれ」
美緒が答えた。
「お母さんがそうしてたから」
京子は台所で皿をしながら聞いていた。
うちは。
お母さん。
誰も説しない。
戸籍も。
血縁も。
親族紹介も必ない。
ただ、何も繰り返した普通の言葉がそこにある。
事のあと、美緒が台所へ来た。
「お母さん」
「何?」
「来さ」
「うん」
「もし私たち子どもできたら」
京子はを止めた。
「まだできてないよ」
「分かってる」
美緒が笑った。
「できたら、お母さんのこと何て呼ばせようかなって」
「好きにしたら」
「おばあちゃん?」
「嫌」
「ばあば?」
「もっと嫌」
「じゃあ京子さん?」
京子は振り返った。
美緒がいたずらっぽく笑っている。
「あんたね」
で笑った。
達也がリビングから、
「何笑ってるの?」
と聞いた。
「内緒」
美緒が答えた。
京子は器を洗いながら、窓に映った自分の顔を見た。
58歳。
夫はいない。
娘は結婚した。
血のつながりは、最初からない。
それでも京子には、自分が何者なのかを誰かに説してもらう必がなくなっていた。
母親というのは、席の名ではない。
結婚式のに任される役でもない。
血液のにだけあるものでもない。
そして何より。
誰かの母親であるために、
自分自をいつも最の席へげる必もなかった。
リビングから美緒の声がした。
「お母さん、コーヒーある?」
京子は答えた。
「あるけど、自分で淹れて」
「えー」
「結婚したでしょう」
「お母さんたくなった」
「今さら気づいた?」
美緒が笑った。
京子も笑った。
何も壊れなかった。
その夜も、
ごく普通の族の夕が続いていた。
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