"22年目の母席" 第10話
「もう回言って」
「ごめんなさい」
京子もし泣いた。
「じゃあベールろす」
美緒がきく息を吐いた。
「ありがとう」
「でもつだけ」
「何?」
「今だけ母親やるんじゃないからね」
美緒が泣きながら笑った。
「ってる」
挙式が始まった。
チャペルの扉の。
美緒は京子のにつ。
会のには、静も正臣もいる。
麗子もいる。
親戚も友もいる。
誰にどう説されるのか。
もう京子には関係なかった。
松原が図する。
京子は娘のへった。
ベールの端を両で持つ。
ゆっくり持ちげる。
美緒の顔が見える。
7歳。
をした夜。
ランドセル。
制。
振袖。
泣いた顔。
笑った顔。
22分の顔が、瞬になった。
京子はベールをろした。
美緒の元へさく言った。
「ってらっしゃい」
美緒の元が震えた。
「ってきます」
扉がいた。
美緒はでバージンロードを歩いた。
父・修平はもういない。
誰かが代わりに父親役をすることは、美緒自が断った。
途。
最列くに座っている麗子のを通った。
麗子は泣いていた。
美緒はほんのしだけをげた。
それで分だった。
披宴。
料理。
友のスピーチ。
ケーキ入刀。
京子は静かに楽しんだ。
静は以より数がなかった。
しかし骨に嫌な態度は見せなかった。
やがて「婦から族への」のになった。
京子はし緊張した。
広告
美緒がマイクのにつ。
をいた。
「私は今まで、自分には母親がいると言えば、きれいに話がまとまるとっていました」
会が静かになった。
京子は顔をげた。
美緒は続けた。
「でも、それはし違います」
麗子も美緒を見ている。
「私を産んでくれたは麗子さんです。私はそのことに謝できない期がくありました。今も、全部を許したとは言えません。でも会いに来てくれたこと、謝ってくれたこと、今ここにいてくれることは、これからをかけて受け取っていきたいとっています」
麗子が元を押さえた。
美緒は次のへんだ。
「そして私を育てた母は、瀬京子です」
京子の目から涙が落ちた。
「私は7歳の頃、京子さんと呼んでいました。ある夜、をしたに初めてお母さんと呼んだそうです。私は覚えていません。でもそれから今まで、私は度も京子さんに戻したことはありませんでした」
京子はもう涙を拭かなかった。
「結婚式の準備、私はその名を度戻そうとしました」
会がしざわついた。
静の顔が固くなった。
「に説しやすくするためでした。波をてないためでした。でも番切なならしてくれるとって、番切なを番傷つけました」
美緒は京子を見た。
「お母さん、ごめんなさい」
広告
京子は何も言えなかった。
「育ててくれてありがとう、だけじゃりません。これからも、お母さんでいてください」
会からさなすすり泣きが聞こえた。
京子は頷いた。
美緒も泣いた。
その瞬。
隣に座っていた麗子が、京子のへそっと触れた。
く握らなかった。
ただ度触れ、
すぐにした。
披宴が終わったあと。
静が京子のところへ来た。
「瀬さん」
京子は振り返った。
静はくをげた。
「私、族というものを、ずいぶん簡単に考えていました」
京子はすぐに「いいんですよ」と言いかけた。
やめた。
代わりに、
「私もです」
と答えた。
静が顔をげる。
「私も、自分がすれば族はうまくいくとってました」
はしだけ笑った。
完全に分かりったわけではない。
これからも見がわないことはあるだろう。
それでも。
もう京子は、
相をさせるためだけに「丈夫」とは言わなかった。
披宴が終わったあと、親族だけの集写真を撮ることになった。
京子はいつもの癖で、番端へ移した。
麗子も反対側へつ。
修平がきていれば、どこにっただろう。
そんなことを考えていると、カメラマンが声をげた。
「婦のお母様、もうし美緒様のくへお願いします」
京子は瞬かなかった。
誰のことだろう。
そうった。
昔なら、麗子を見る。
自分ではないとっただろう。
ところが美緒がドレスの袖からを伸ばした。
「お母さん」
京子の腕を掴む。
「こっち」
京子は娘の隣へ移した。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
実印を押さない母
3年前、「半年だけ」という約束で始まった息子一家との同居。 夫を亡くし、一人暮らしだった67歳の佐伯佳代子は、息子夫婦と孫たちを自宅に迎え入れた。最初は賑やかで温かな暮らしだったが、いつの間にか食事、洗濯、孫の送迎、生活費の負担まで、すべてが佳代子の“当然の役目”になっていく。 そんなある日、息子が何気ない口調で切り出した。 「母さん、この家さ。そろそろ俺の名義にしない?」 家族だから。どうせ将来は相続するから。リフォームのためだから。 そう説明されながらも、佳代子の胸には小さな違和感が残る。そして偶然見つけた一枚の書類には、名義変更後の家の売却と、佳代子を高齢者住宅へ移す計画が書かれていた。 家族のために黙ってきた母が、初めて自分の人生を選び直す。 名義変更の日、佳代子が判子を押したのは、家を渡す書類ではなかった――。嫁姑|親子関係|金銭問題2.0萬字5 95 -
完結第11話
母に届かなかった10円
昭和55年、駅前の公衆電話の横に、毎月25日だけ10円玉が一枚置かれるようになった。 落とし物にしては場所が不自然で、誰が置いているのかも分からない。新聞売りの森田は、毎月同じ日に現れるその小さな硬貨を不思議に思い、やがて駅前の子どもたちもそれを「10円の日」と呼ぶようになる。 そんなある冬の朝、森田はついに10円玉を置く女性の姿を見つける。 なぜ彼女は、誰にも知られないように毎月10円玉を置き続けていたのか。 その理由は、何十年も前、たった一枚の10円玉がなかったためにかけられなかった「あの日の電話」に隠されていた――。昭和|親子関係1.6萬字5 49 -
完結第12話
閉店写真館の11通
閉店まで残り90日。 57年続いた高瀬写真館を片づけていた佐知子は、暗室の古い引き出しから、父の字で「未引取」と書かれた11通の封筒を見つける。 中に入っていたのは、1990年代から2000年代初めに現像されたまま、誰にも受け取られなかった写真たちだった。 夏の河原で笑う家族。クリスマスの夜に並ぶ姉妹。小学校の運動会。何気ない日常の一枚一枚には、持ち主たちが忘れたはずの時間と、言えなかった後悔が静かに残されていた。 佐知子は閉店までに、できる限り写真を持ち主へ返そうと決める。 けれど、封筒を開けるたびに戻ってくるのは、他人の記憶だけではなかった。 その中の一枚に写っていたのは、12歳だった自分の娘・真理。 写真に残っていた笑顔の外側で、母と娘の間には、長いあいだ言葉にできなかった寂しさが眠っていた。 受け取られなかった写真は、何を取り戻し、何を変えられないまま残すのか。 閉店する小さな写真館を舞台に、家族、記憶、後悔、そして写真に写らなかった時間を描く物語。親子関係1.7萬字5 59 -
完結第10話
墓前の偽息子
夫の命日、文子は一人息子の誠と並んで墓前に手を合わせていた。 その時、文子の携帯に「誠」から電話がかかってくる。 しかし、本物の誠は今、すぐ隣で父の墓に手を合わせていた。 電話口の男は、息子のふりをして言った。 「母さん、仏間の金庫の暗証番号を教えてくれないか」 相手は、文子の家に金庫があることも、最近暗証番号を変えたことも知っていた。さらに電話の向こうから聞こえてきたのは、誠の妻・和子の声だった。 これはただの詐欺なのか。 それとも、家族の中に裏切り者がいるのか。 亡き夫が残した言葉を胸に、文子は慌てず、静かに確かめることを選ぶ。 そして家へ戻った母子が見たのは、想像もしなかった妻の本性だった――。因果応報|親子関係1.5萬字5 1018 -
完結第12話
不機嫌夫の末路
夫の大地は、気に入らないことがあると黙り込む人だった。 怒鳴るわけでも、手を上げるわけでもない。ただ返事をしない。目を合わせない。家の中を冷たい沈黙で満たし、妻の望美が謝るまで何事もなかったように振る舞う。 望美はそれを、夫婦ならよくあることだと思い込んでいた。 しかしある日、大地の沈黙は4歳の娘・ひなにまで向けられる。父親に無視された娘は、布団の中で小さくつぶやいた。 「パパ、ひなのこと嫌いになっちゃったの?」 その一言で、望美は自分の幼い頃を思い出す。父の機嫌を読み、母が謝る姿を見ながら育ったあの日々。そして今、自分も同じことを娘に繰り返させようとしていることに気づいてしまう。 夫と向き合おうとした望美に、大地は言い放つ。 「そっちの方こそモラハラだろ?」 届かない言葉。変わらない沈黙。けれど、4歳の娘が口にしたある一言が、望美の中で長く続いてきた連鎖を断ち切る決意へと変わっていく。夫婦|親子関係1.7萬字5 340 -
完結第10話
消えなかった500円
昭和42年、町工場で働く佐々木正雄は、給料日のたびに茶色い封筒から500円だけを抜いていた。 家計を預かる妻・春江にとって、その500円は決して小さな額ではなかった。米代、学校の集金、娘の靴、毎日の食卓。10円、20円を切り詰めて暮らす中で、夫が理由も言わずに毎月同じ金額を消していくことが、春江にはどうしても許せなかった。 酒なのか、競馬なのか。それとも、妻には言えない誰かのためなのか。 問い詰めても、正雄はただ「俺の小遣いだ」としか答えない。夫婦の間に小さな疑いを残したまま、500円の謎は長い年月の中へ埋もれていった。 やがて時代は流れ、娘たちは巣立ち、正雄もこの世を去る。 遺品整理の途中、春江は押し入れの奥から一冊の古い大学ノートを見つける。そこに残されていたのは、昭和42年から何年も続く「500円」の記録だった。 夫が最後まで語らなかった、その金の行き先とは。 20年以上たって初めて明かされる、不器用な父の小さな秘密。人生逆転|親子関係1.5萬字5 5710 -
完結第12話
赤身を笑った女の末路
15年前、木村実乃里は“親友”を名乗る女・高子に夫を奪われた。 妊娠したと泣きながら告げてきた高子。沈黙する夫。幼い娘を連れ、実乃里はすべてを失ったような思いで家を出た。 それから15年。 実乃里は娘・由美香を育てながら、小さな店から会社を立ち上げ、ようやく穏やかな日々を手に入れていた。 そんなある日、社会人になった由美香が、初任給で母を回転寿司へ連れていく。ささやかで幸せな食事の席で、実乃里は15年ぶりに高子と再会する。 「相変わらず貧乏臭いわね」 「うちの子は国家公務員なの」 昔と変わらず人を見下し、勝ち誇る高子。 しかし次の瞬間、由美香が静かに言った。 「ママ、あの人クビにしたら?」 高子が働いている“高級ショップ”の本当の経営者。 15年前に壊されたはずの母娘の人生。 そして、高子自身が知らなかった本当の立場。 回転寿司の小さなテーブルで、15年越しの因果が静かに動き出す。因果応報|人生逆転1.8萬字5 1628 -
完結第12話
7階に戻るな
70歳の高橋恵子は、夫を亡くしてから6年、都心のマンションで静かに暮らしていた。 ある夕方、いつものように買い物帰りのエレベーターに乗った彼女は、隣人の老人・木村から一枚の紙切れを渡される。 「病気のふりをして、次の階で降りろ。絶対に7階へ戻るな」 意味も分からないまま指示に従った直後、エレベーターの中で木村は命を落とす。さらに残された紙には、「このマンションでは、誰も信じるな」と書かれていた。 なぜ木村は恵子を逃がしたのか。なぜ7階へ戻ってはいけなかったのか。 やがて事件は、6年前に事故死したはずの夫・優一郎の死、息子夫婦の秘密、そしてマンションから消された5分間へとつながっていく。 たった一枚の紙切れが、穏やかな老後に隠されていた真実を暴き出す――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 1446 -
完結第12話
捨てられた夏の肖像
次女・夏が生まれた日、夫は赤ん坊の顔を見るなり言い放った。 「この子は俺の子じゃない」 長女は夫にそっくりなのに、次女はまったく似ていない。たったそれだけの理由で、私は浮気を疑われ、DNA鑑定で親子関係が証明されても、夫と義母は夏を認めようとしなかった。 そして私は、生まれたばかりの次女だけを連れて家を追い出される。 残された長女には会えないまま、10年が過ぎた。 ところがある日、成長した夏とショッピングモールを歩いていた私は、夫と義母、そして長女と偶然再会する。 そこで彼らは、夏の姿を見て言葉を失った。 10年前、「他所の子」と罵られた次女には、彼らが知らない大きな秘密があった――。因果応報|人生逆転1.8萬字5 865