みかん小説
本棚

"余ったパンの嘘" 第4話

革鞄を荷台へ載せると、紐を確認してからへ向かった。

3を置いて、自分たちの自転を押しした。

づきすぎるなよ」

「分かってる」

「見つかったらどうする?」

「逃げる」

「余計られるだろ」

緊張しながらも、まだどこか遊びのような気持ちが残っていた。

の自転が角を曲がる。

3は姿を見失わない程度の距を保ちながらを追った。

は駅へ向かうには入らなかった。

「先、そっちじゃないのかな」

誰かが囁いた。

へ向かうきな通りも通り過ぎた。

代わりには、が集まる方へ自転めていった。

夕方の町には、仕事を終えた械の音と、まだき続けている械の音が入り混じっていた。い煙突から煙が伸び、作業着姿の々がからてくる。

3れてった。

は振り返らない。

の並ぶを抜けると、の数が減った。

舗装されたも次第に細くなり、やがて川へづくにつれて砂利が増えた。

「どこまでくんだよ」

3の声から、最初の面がるような調子が消えていた。

自分たちが普段遊びに来る所よりも、ずっとい。

町のかられるほどは暗くなり、灯の数もなくなった。

は慣れているのか、迷う様子がなかった。

川沿いのへ入る。

自転のタイヤが砂利を踏む音が聞こえた。

広告

3は距けた。

その先に何軒かのさなが見えてきた。

材やトタン板を継ぎわせたような建物だった。町にあるとは様子が違い、川敷のをまともに受ける所に寄り添うように建っていた。

番奥へんだ。

そこで自転を止めた。

3も慌てて自転りた。

見つからない所を探し、れた物から様子をうかがった。

は荷台の革鞄をした。

ここまで来ても、3にはまだ分からなかった。

なぜ先が毎パンを持って帰るのか。

なぜ駅でも商でもなく、こんな川敷まで来たのか。

が革鞄をけた。

そのから取りしたものを見て、3は息を止めた。

見慣れた包みだった。

のコッペパン。

はそれをに持つと、さなった。

そして戸の向こうへ声をかけた。

「健、いるか」

3は顔を見わせた。

その名っていたからだった。

しして、の戸がいた。

からてきたを見た瞬、3は物で固まった。

だった。

まで、このへ通っていた6

は1つだったが、庭や廊ですれ違うことは何度もあった。背がく、休みにはよく友達とり回っていたため、5にも顔をっている子はかった。

ところが学期が始まってから、健の姿を見るしずつ減っていた。

広告

最初は週に何か休む程度だった。

そのうち連続して欠席するようになり、気づけば学でほとんど見かけなくなっていた。

子どもたちは詳しい事らなかった。

「病気なんじゃない?」

の用事らしいよ」

そんな話が流れたことはあったが、本当のことをっている者はなかった。

ったまま、健を見た。

「今はどうだった?」

は何も答えず、元へ目を向けた。

そこにコッペパンがあった。

その、健ろからもう1さな子が顔をした。

まだがるくらいの女の子だった。

の妹だった。

女の子はを見ると、しだけ顔をるくした。

包みを差しした。

「今も余ったから持ってきた」

にいた3は、瞬その言葉をそのまま受け取った。

やはりで余ったものを持ってきているのか。

けれど次の瞬、健が言った。

「先、本当に余ったの?」

しだけを置いた。

「余ったんだよ」

「昨も?」

「昨もだ」

は黙った。

差しされたパンへを伸ばさない。

も無理に押しつけなかった。

ただ包みをにしたまま待っていた。

「学で毎そんなに余るの?」

が聞いた。

は困ったように笑った。

で子どもたちに質問されたと、よく似た表だった。

「余るもあるんだよ」

「先べればいいじゃん」

「俺は腹いっぱいだ」

その言葉を聞いた瞬、3の胸ので何かがつながった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: