"実印を押さない母" 第12話
「そこは否定してくれないんですね」
「今さら嘘言ってもしょうがないでしょう」
でし笑った。
「サのことも」
美が続けた。
「別に追いそうとってたわけじゃないんです」
「分かってる」
「本当に?」
「今すぐじゃなかったんでしょう」
美は頷いた。
「でも、名義変わったら、このは私たちのになるってってました」
ようやく言葉になった。
佳代子が番聞きたかった部分だった。
「そうなったら、お義母さんのことを考えるも、たぶん『緒にんであげてる』ってうようになったかもしれません」
佳代子は黙って聞いた。
「今考えると怖いです」
美は俯いた。
「すみませんでした」
佳代子はすぐに「いいのよ」と言わなかった。
なら言っただろう。
今回はし考えた。
「私も悪かったとう」
美が顔をげた。
「何でもやったから」
「それはお義母さん悪くないです」
「嫌なことまで、いいよって言ってたの。途から私も勝に期待してた」
「何を?」
「私がこれだけやれば、あなたたちは私を切にしてくれるって」
にして初めて、自分でも分かった。
事はだった。
同に保険でもあった。
役につ母親。
必な祖母。
そうしていれば、こののに自分の所がなくならないとっていた。
けれど結果は逆だった。
役につことが当たりになり、自分の所は畳半までさくなった。
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「だから、もういいよって簡単に言わないようにする」
佳代子は言った。
美は頷いた。
完全な解ではなかった。
それでよかった。
翌、直も話をしに来た。
美よりかった。
「母さん」
「何?」
「ごめん」
それだけだった。
佳代子は息子を見た。
「何が?」
直は困った顔をした。
「全部言わせる?」
「応」
「面倒くさいな」
「謝るが言う?」
直はし笑った。
「、俺のものになるって勝にってた」
「うん」
「父さんんだから」
佳代子は驚いた。
もっとだった。
夫がくなった、直は葬儀や相続の続きをよく伝ってくれた。
そのから、いつか自分のになるとっていたらしい。
「だってっ子だし」
「そうね」
「でも、母さんがきてるも母さんの物だって、ちゃんと考えてなかった」
佳代子はそれを聞いて、しだけ胸が軽くなった。
直は悪ではない。
だからこそ厄介だった。
悪気なく、の物を「いつか自分の物」と考えていた。
悪気なく、母親のを無料だとっていた。
「分かればいいよ」
佳代子は答えた。
今度の「いいよ」は、自分で選んだ言葉だった。
引っ越し夜。
最に族で夕をべた。
佳代子が唐揚げを作った。
悠斗が番んだ。
「しいでも作って」
「遊びにったね」
「毎週来て」
「それはい」
杏奈が笑った。
直も美も笑った。
のような卓だった。
けれど同じではない。
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から別々に暮らすことが決まっている。
だからこそ、この夕には終わりがあった。
終わりがあると、はし丁寧になれるのかもしれない。
、美が皿を洗い、直がテーブルを拭いた。
佳代子は何もしなかった。
ソファに座ってお茶をんだ。
それを見て杏奈が言った。
「ばあば、今は何もしないね」
「今くらい、いいでしょう」
佳代子は答えた。
本当は今だけではない。
これからは、やりたいにやる。
それでよかった。
42の朝、直が最の鍵を返しに来た。
引っ越し自体は週に終わっていたが、残った荷物を取りに来るため、本だけ持たせていた。佳代子も翌にはしいマンションへ移るため、のには最限の具しか残っていなかった。
「これ」
直が玄関で鍵を差しした。
の古い鍵。
、佳代子自が渡したものだった。
「ありがとう」
受け取る。
直は空になった廊を見た。
「変なじだな」
「何が?」
「実じゃなくなる」
佳代子ものを見た。
壁には具の跡がある。
柱には直が学の頃につけたの線が残っている。
夫が直そうとして失敗した壁の継ぎ目もある。
、買主へ引き渡せば、ここは別の族のものになる。
「寂しい?」
佳代子が聞いた。
直は頷いた。
「そりゃね」
「私も」
「売るの悔してない?」
佳代子はし考えた。
「まだ分からない」
直が笑った。
「売ったあとに?」
「悔するもあるかもしれないよ」
「じゃあ」
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