"墓前の偽息子" 第2話
族用の携帯は確かに自宅へ置いてきたはずであり、源も切らずに充器へ置いてあると、自分で確認していた。
瞬だけ、子が何か用事で誠の携帯を使っているのだろうかと考えた。しかしそれなら、自分の携帯から文子へ話すれば済む話である。しかも妻は、誠が今頃波の届かないトンネル事現にいると信じているはずだった。
着信は鳴り続けていた。
誠がをきかけたが、文子は差し指を唇へ当てて制した。そして夫の言葉をいしながら、何事もないような声で通話ボタンを押した。
「もしもし」
「母さん、オレだよ。誠だよ」
男の声だった。
齢は誠と同じくらいにも聞こえたが、声質も話し方も違う。息子の声を聞き続けてきた母親が、聞き違えるような違いではなかった。それでも男は、文子が何も気づいていないとっているらしく、わざと息を切らしたような声で話を続けた。
「ちょっと仕事で困ったことになってさ。今に、まとまったをて替えなきゃならなくなったんだ」
文子は黙って聞いた。
「これから母さんのに寄るから、仏の庫からし借りたい。悪いんだけど、暗証番号を教えてくれないかな」
その瞬、文子の背筋にたいものがった。
ただ息子を装ってを求するだけなら、よく聞く特殊詐欺と同じだった。
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しかし相は、文子のの仏に庫があることまでっている。さらに男は、文子が言葉を挟むに、追い打ちをかけるように続けた。
「、番号を変えただろ。しい番号を教えてくれればいいんだ。今じゃないとにわないから、頼むよ。それと、このことは誰にも言わないでくれ」
文子は、握っていた数珠に力が入るのをじた。
仏の庫は、くなった貴志が使っていた古い耐庫だった。現を量に保管しているわけではないが、定期預の証や関係の類、貴志が残した古い計、文子自の印鑑など切な物が入っている。暗証番号を変更したことをにしたのは、正に誠夫婦がへ来ただけだった。
つまり、この話の相は内しからない報を持っている。
しかも、誠の携帯話からかけている。
文子は隣の息子を見た。誠は顔を張らせ、話の相に聞こえないようだけをかした。
「誰?」
文子はさく首を振った。
ここで「あなたは誰ですか」と問い詰めれば、相はすぐに話を切るだろう。誠が隣にいることをられれば、自宅に残された携帯を使ったは警戒し、証拠を消すかもしれない。夫がきていたなら、こんなどうするだろうと考えた、答えはすぐに浮かんだ。
慌てず、確かめる。
文子は声の調子をわざと柔らかくした。
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「あら、変なのね。でも困ったわ。番号、私、覚えていないのよ」
話の向こうで瞬沈黙があった。
「え? 覚えてない?」
「ええ。最物忘れがくてね。帳にいてあるはずだから、に戻れば分かるとうけど」
本当は何も見なくても言える。しかし文子がそう答えると、男の声に焦りが混じった。
「母さん、いしてくれよ。4桁だろ? 何かの誕とか、そういう番号じゃなかった?」
「どうだったかしらねえ」
「あと数しかないんだよ。今なんだ。頼むから、くしてくれよ」
その調は、息子を演じることよりも番号を聞きすことに識が向いていた。文子は相の声の背に、微かな物音があることにも気づいた。テレビではなく、が声で何かを相談しているような気配だった。
ではない。
文子がそうじた、隣の誠も何かに気づいたらしく、表を険しくした。
「ねえ、あなた」
文子は何気ない調子で呼びかけた。
「何だよ、母さん。くしてよ」
「本当に、あなた、誠なの?」
話の向こうが静まり返った。
ほんの数秒だったが、その沈黙は文子にはくじられた。話の向こうでは男が受話をで塞いだのか、くぐもった声で誰かと話している気配がした。誠が何か言おうとを乗りしたため、文子は再びで制し、今度は携帯を静かにスピーカーへ切り替えた。
「何言ってんだよ、母さん。俺に決まってるだろ」
戻ってきた男の声は先ほどよりらかに自然だった。
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