"床下の小さな指輪" 第11話
ロビーには親戚たちもいた。
だが、事件に巻き込まれたくないのか、ヒロトへ積極にづくはいなかった。
しばらくすると、児童養護施設の職員がのへしゃがんだ。
「ヒロト君、そろそろこうか」
はゆっくり顔をげた。
「どこへ?」
「しく暮らす所だよ」
「お父さんは?」
職員はすぐ答えられなかった。
「しばらく会えない」
「おばあちゃんも?」
「うん」
ヒロトはもう何も尋ねなかった。
ちがり、職員とともにへた。
の差しが裁判所の階段にり注いでいる。
それでもは空を見げただけで、笑わなかった。
母親は6ぶりに見つかった。
しかし、もう抱きしめてもらうことはできない。
父親も祖母も刑務所へく。
ヒロトは施設のへ乗った。
がきし、裁判所がざかる。
その数。
干物の伊藤は、ヒロトが暮らすことになった施設を訪ねた。
園のへ座ると、古い通帳を差しした。
「毎、しずつ送らせてください」
「ヒロト君に、ですか?」
「はい」
「ご親戚ではないんですよね?」
伊藤は頷いた。
「だからです」
涙が滲んだ。
「私は6、隣にいたのに黙っていました。あの夜の声を聞いたのに、怖くて何も言わなかった」
「……」
「美優さんがヒロト君をどれほど切にしていたかっていました。それなのに助けられなかった」
伊藤は通帳を押しした。
「くはありません。
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でも学費のしにしてください」
園はしばらく黙った、そのを取った。
「お気持ちは、きっと伝わります」
伊藤は俯いた。
6、文から受け取ったごま油1本。
あの、自分は沈黙を選んだ。
今さら何をしても美優は戻らない。
それでも、ヒロトの未来まで見て見ぬふりをすることだけはできなかった。
になる頃、佐藤油は完全に取り壊された。
使われてきた搾油も、居も、れもなくなった。
更には「売」とかれた板がった。
しかし、買いはなかなか現れなかった。
「あそこ、からがた所だろ」
「6も埋めたままんでたって」
商を通る々は、空きを指差して声で話した。
吉な所。
呪われた。
そんな噂までまれた。
だが伊藤は、その話を聞くたびに違を覚えた。
呪われていたのはではない。
でもない。
そこにきたたちが、自分の欲と恐怖のためにしたことが恐ろしかっただけだ。
空きには、やがて雑がえた。
の終わりには腰のさまで伸び、かつてれがあった所も分からなくなった。
。
田刑事は久しぶりに川商を訪れた。
トレンチコートの片にさな酒瓶、もう片方にインスタントコーヒーの袋を持っている。
油跡のでち止まった。
のには、割れた瓦の欠片が残っていた。
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田は敷の端へ入り、しゃがみ込んだ。
酒瓶の蓋をけ、しずつへ注いだ。
「佐藤美優さん」
がを揺らした。
「遅くなりました」
6。
最初の失踪届を見た、もっと疑うべきだった。
なぜ幼い子供を溺していた母親が突然消えたのか。
なぜ夫はそれほどく駆け落ちだと決めつけたのか。
なぜ姑は翌から商へ噂を広げたのか。
なぜ友だけが決定な目撃証言をしたのか。
調べようとえば調べられた。
だが警察は、庭内のことだと軽く見た。
本がていったのだろうと決めた。
男と駆け落ち。
赤ん坊を捨てた母親。
その言葉が便利すぎた。
田はコーヒーの袋をけ、量をのへ落とした。
「甘いものがお好きだったと聞きました」
商で聞き込みをしているうちに、美優が甘いコーヒーを好んでいたと聞いたのだった。
「お湯がなくてすみません」
が吹いた。
がしいがった。
その、どこからかばしいごま油の匂いが流れてきた。
商の別のからだろう。
だが田には、瞬だけ6の油が戻ってきたようにえた。
朝から油を搾る音。
瓶を運ぶ美優。
背には幼いヒロト。
「今も配達ですか?」
「はい。息子のためにも頑張らないと」
そんな声が聞こえてきそうだった。
通りの向こうでは、主たちが事件の話をしていた。
「幽霊よりの方が怖いな」
誰かが言った。
別の男が答えた。
「が絡むと、は何するか分からん」
田は煙をしかけ、やめた。
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