みかん小説
本棚

"不機嫌夫の末路" 第11話

し考えるようにしてから、その子のへしゃがみ込んだ。

そして、まっすぐ目を見て言った。

「ごめんね。仲良ししようね」

の子が瞬黙った。

それからさく頷いた。

ひなはスコップを差しした。

2は何事もなかったように、また砂を掘り始めた。

その景をフェンス越しに見ながら、私はけなくなった。

この子は、自分の言葉を持っている。

嫌なら嫌と言う。

っているなら、黙って相を困らせ続けるのではなく、自分の気持ちをす。

仲直りしたければ、ごめんねと言う。

たった4歳の子どもが、私がずっとできなかったことをしていた。

あのにいた、ひなは父親の無を真似した。

「パパと同じことやろうとった」

そう言った。

私はその、怖かった。

から受け取ったものが、そのまま娘へ渡ってしまうのではないかとった。

私が父から受け取ったように。

母が父の嫌をうかがい、私はその母を見て育った。

そしてになった私は、同じように夫の顔をうかがっていた。

らないうちに、同じ形を選んでいた。

嫌な嫌を直す役。

らせないように先回りする役。

沈黙に耐えられず、自分が悪くなくても謝る役。

それが「庭」というものだとっていた。

でも、ひながその連鎖の続きをきる必はない。

私のところで止めればいい。

広告

完全にい母親になれる自信はなかった。

からメッセージが来れば、今でもし胸がざわつく。

帰らなければいけないのではないかとう瞬もある。

私が厳しすぎるのではないか。

夫婦ならすべきなのではないか。

ひなから父親をざけていいのか。

考え始めれば、答えのないことばかりだった。

でも1つだけ、もう迷わないことがある。

ひなが、自分のを誰かの嫌の原因だとうようなには戻さない。

「私が悪かったのかな」

4歳の子どもがそんなふうに考えながら卓へ座る暮らしを、普通にはしない。

父が黙っている。

母が謝る。

子どもが息を潜める。

私が育ったでは、それが繰り返されていた。

とのでも、いつのにか同じ形になりかけていた。

私はそれに気づくまでがかかった。

でも気づいた以、見なかったことにはできない。

「ママー!」

園庭からひなの声がした。

私に気づいたらしい。

ひなは砂だらけのを振っていた。

「見てー!」

「見てるよ」

私もを振り返した。

界がしぼやけた。

泣いてはいないとった。

ただ目くなっていた。

ひなが先へ挨拶をし、こちらへってきた。

「今ね、ケーキ作ったの」

「見てたよ」

「ほんと?」

「うん。お友達ともちゃんと仲直りしてたね」

ひなはし得そうな顔をした。

「だって、ずっとってたら仲良しできないもん」

広告

私はその言葉に何も返せなかった。

代わりに、ひなの子を直した。

さなが私のなる。

帰り、ひなは幼稚園であったことを次々と話した。

私は途で遮らずに聞いた。

その、誰が転んだとか。

しい絵本を読んでくれたとか。

の野菜を全部べたとか。

どれもさな来事だった。

けれど、この子が何を話しても誰かの嫌を気にしなくていい所を守りたいとった。

話したいに話せる。

ったは「ってる」と言える。

嫌なは「嫌だ」と言える。

謝るは、相を黙らせるためではなく、自分が悪かったとったに謝れる。

そんな当たりのことを、当たりにできる所で育ってほしい。

へ戻ると、母が夕を用していた。

「今かったね」

「うん。園庭でちょっと見てた」

ひなは靴を脱ぎながら、きな声で言った。

「おばあちゃん、ひな今仲直りしたよ!」

母が笑った。

「それはよかったね」

「ごめんねって言ったの」

「ちゃんと言えたんだ」

「うん!」

その会話を聞きながら、私はバッグからスマートフォンを取りした。

からしいメッセージが届いていた。

《すぐに戻ってきてほしいとは、もう言わない。が必なら待つ》

私はしばらく画面を見た。

なら、その文に希望を見つけてすぐ返事をしたかもしれない。

今は違った。

が本当に変わるかどうかは分からない。

私たちがまた3で暮らせるが来るのかも分からない。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: