"赤身を笑った女の末路" 第6話
話の向こうから、正義が息を詰まらせる音が聞こえた。
「由美の父親としての面会は認める。でも夫婦としてやり直すことはない」
それだけ伝え、私は話を切った。
涙はなかった。
それまでに、もう分泣いていた。
そのから、私はだけを見ることにした。
由美を育てるため。
そして、自分のをもう度始めるためだった。
婚に受け取った財産分与と慰謝料を元に、私はさな会社をちげた。
アパレルメーカーで働いていた頃に学んだ原価計算。
でにつけた品質管理。
産計画。
仕入れ先との交渉。
現で経験した失敗も成功も、全部が自分の武器になるとった。
最初から順調だったわけではない。
資繰りに悩み、夜遅くまで帳簿とにらめっこしたことも数え切れない。
商品がうように売れず、庫のを見て眠れなくなった夜もあった。
さなセレクトショップ1舗から始めた会社では、社だからといってに任せられる仕事などほとんどなかった。
仕入れもする。
接客もする。
梱包もする。
クレーム対応もする。
閉に翌の準備を終え、マンションへ戻れば母親になる。
由美がをしたはを途で抜け、幼稚園へ迎えにった。
娘を寝かしつけた、再びパソコンをいて仕事をした。
それでも、議と苦しいとはわなかった。
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私には守るべき由美がいた。
「ママ、お仕事頑張ってね」
さな娘は、毎朝そう言って送りしてくれた。
成するにつれ、由美はの袋を畳んだり、簡単な作業を伝ったりするようになった。
いつしか私が娘を支えているのか、娘が私を支えてくれているのか分からなくなった。
父親との面会も、最初のうちは続いていた。
正義が迎えに来て、事へ連れてき、夜にはマンションまで送り届ける。
ところが、やがて正義が子と再婚したことを由美がった。
その、由美は私に言った。
「もうパパと会いたくない」
「本当にいいの?」
「うん」
私は説得しなかった。
幼い頃、子から傷つく言葉を向けられたこともっていたからだ。
正義へそのことを伝えると、かなりショックを受けていた。
けれど私には、自業自得としかえなかった。
それからが流れた。
子や正義のことを考えるは、次第に減っていった。
会社がしずつ成していったからだ。
お客様の声を聞き、売れない商品があれば理由を考えた。
員が働きづらそうなら改善した。
1舗だったは2舗になり、3舗になった。
社員も増えた。
自分だけでは管理できなくなり、信頼できるに仕事を任せるようになった。
やがて全国に舗を持つ会社になった。
15、夫に裏切られた。
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私はを全部失ったような気がしていた。
けれど本当は、あのから別のが始まっていたのかもしれない。
気づけば私は47歳になっていた。
そして、当まだ幼かった由美も学を卒業した。
就職先も決まり、から社会になった。
初任が入ったの夜、由美がし照れながら言った。
「ママ、今まで本当にありがとう」
「急にどうしたの」
「初任でご馳したい」
私は笑った。
「そんなのいいから、自分の好きなもの買いなさい」
「だめ。これ、ずっとやってみたかったの」
由美はすでにまで決めていた。
国沿いにある、普通の回転寿司よりしだけ値段のいだった。
「級寿司はさすがに無理だけど、あそこなら私でもご馳できるから」
そこまで言われたら断れなかった。
私は娘のに甘えることにした。
まさかそこで、15度も会っていなかった子と再会することになるとは、そのの私は像さえしていなかった。
「ママ、本当に好きなの頼んでいいからね」
寿司のテーブルに着くなり、由美は得げに言った。
「トロでもウニでも、何でもどうぞ」
「じゃあ慮なく、と言いたいけど……私は赤かな」
「やっぱりね」
由美は笑い、端末でマグロの赤を2皿注文した。
コロナ禍以、昔のように寿司がそのままレーンをぐるぐる回るはなくなった。
このもレーン自体はいているものの、基本は端末から注文し、握りたてが届く仕組みだった。
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