"11年目のコロッケ" 第8話
正資。
保険詐欺。
母の事件。
そして今の京子への計画。
父がどれほど否定しても、積みなった記録は消えない。
黒田刑事が錠を取りした。
そのだった。
「まだ1つ、勘違いしていますよ」
私は父へ言った。
「何……?」
「11、専業主婦だった母が、どうやってあなたの会社の厳な資料に辿り着いたのか、議にったことはありませんか?」
父の顔が歪んだ。
「たまたま俺の部を漁ったんだろう」
「違います」
私は首を横に振った。
「母は、最初からあなたの会社を調べていたんです」
座敷がざわめいた。
「ある物の依頼で」
「誰だ!」
父が叫んだ。
その、玄関の方からい声が響いた。
「私だよ、健」
全員が振り向いた。
廊の向こうから、1台の子がんでくる。
それを押していたのは陽子だった。
子に座る老は、髪をきれいにえ、痩せた顔にい皺を刻んでいた。
しかし目だけは鋭かった。
父がその顔を見た瞬、体を震わせた。
「條……先……」
親族たちも次々に青ざめた。
條龍郎。
この方の経済界だけでなく、政財界にも広い脈を持つ企業グループの創業者。
父の会社は、條グループ全体から見ればさな取引先の1つにすぎなかった。
「久しぶりだな、健」
條老は父を見た。
「いや。私の娘を奪った男、と呼ぶべきか」
父のがいた。
「娘……?」
「裕子だ」
座敷の空気が止まった。
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私は静かに目を閉じた。
條老は続けた。
「裕子は私の娘だ」
父も京子も、完全に言葉を失った。
裕子は條の権力争いに巻き込まれることを嫌い、若い頃にをていた。
その、分を伏せて暮らし、父と結婚した。
私は母の本当のについて、幼い頃は何もらなかった。
京子が突然笑った。
「嘘よ!」
狂ったように條老を指差した。
「裕子さんみたいな貧乏臭い女が條の娘なわけないでしょう!」
私は黙って京子を見た。
「み咲が雇った役者よ! こんなボケ老まで連れてきて!」
條老の目が細くなった。
「化け物はおだ」
そのい声だけで、京子はを閉じた。
「11、娘を侮辱されるたびに、どれほどしたとっている」
父が震えながら聞いた。
「なぜ……11も……」
條老はゆっくり私を見た。
「裕子は、最初から健の会社を調べるためにづいた」
父が目を見く。
「おが若い頃から危険な資取引にを染めていることを、私たちは把握していた。警察へ提できるだけの証拠が必だった」
「じゃあ……裕子は俺を……」
父の顔が絶望で歪んだ。
「裕子は証拠を集め続けた。だが11、私へ連絡してきた」
條老の声が僅かに震えた。
「『健に気づかれた。今、殺されるかもしれない』とな」
私は拳を握った。
「私は逃げろと言った。だが裕子は断った」
條老の目から涙が落ちた。
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「自分だけ逃げれば、健は証拠を消す。そして何より、み咲をこの男のに残すことになる、と」
母は、自分の危険をっていた。
そのでへ戻った。
私のために。
証拠を残すために。
母は父の犯罪を封じるため、自分の命まで使った。
私はもう、何も言えなかった。
「もし私がんだら、み咲へ真実を託してほしい」
條老は、母が最に残した言葉を話した。
「『あの子なら必ず自分でちがる。いつか健を裁けるになる』と」
私は唇を噛んだ。
で勉具が必な、なぜか佐藤さんが古い本を持ってきてくれた。
受験料がりない、匿名の支援が届いた。
学へむにも、返済の援助があった。
その全てが條老につながっていた。
「私は1じゃなかったんですね」
呟くと、條老は頷いた。
「裕子との約束だった」
父はに座り込んだまま、を抱えていた。
「終わったな、健」
條老が言う。
「会社の資は調べられている。もう昔のように権力を使って逃げることはできない」
黒田刑事が父へづいた。
錠をかけようとした、そのだった。
庭の方から鑑識員が駆け込んできた。
「待ってください!」
には属箱の蓋があった。
「蓋の裏側に文字があります」
私と條老が同に息を呑んだ。
鑑識員は慎に説した。
母は、襲われた直にはまだきていた能性がある。
箱の内部で識を失うまでのに、血の痕跡を使って文字を残したように見える。
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