"7階に戻るな" 第11話
テープを入れて再ボタンを押すと、しばらく雑音が流れ、そのあと6聞くことのなかった夫の声が聞こえた。私はそので膝が抜けそうになり、机へをついて何とかっていた。
『恵子、これを聞いてるってことは、俺は自分で説できなかったんだろうな』
声はしだけ緊張していたが、違いなく優郎だった。彼は織の会社を調べていること、さんと内部告発を準備していること、自分のにも何か起きる能性があることを話した。そして最に、健太について語り始めた。
『あいつは優しい。でも優しいだけじゃ正しくきられない。嫌われるのが怖いから、とぶつかるべきに逃げるところがある』
私は息を殺して聞いた。夫はまるで今の健太を見ているようだった。
『もしあいつが織君に利用されて、取り返しのつかない違いをしたは、かばうな。でも捨てるな』
涙が頬を伝った。
『罪から逃がすことは、あいつを助けることじゃない。自分がしたことと向きわせて、その罰を受けさせろ。それでも親として待っていてやることが、俺たちにできる最の仕事だ』
そこで度テープに雑音が入り、優郎はし笑うような声をした。
『恵子ならできる。俺よりずっといから』
私はそので声をげて泣いた。くなどなかったし、できる自信もなかった。
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それでも、自分が何をすべきかだけははっきりした。
リビングへ戻ると、健太が目を覚ましていた。私を見るなりそうに体を起こし、「母さん」と言った。私はその向かいへ座り、両で息子のを包んだ。
「警察へきましょう」
健太の顔が張った。
「全部、正直に話すの」
「母さん、俺……」
「分かってる。罰を受けることになるかもしれないし、いがかかるかもしれない」
私はをさなかった。「でもお母さんは、あなたから逃げない。あなたが自分の罪と向きって、もう度自分のでてるまで、ずっと母親でいる」と言った。
健太の目から涙が溢れた。の絶望だけの涙とは違い、恐怖のにほんのしだけ覚悟が混ざっていた。彼はい泣いたあと、何度も頷いた。
マンションをる、私たちはエレベーターのでち止まった。あの以来、私はできるだけ階段を使っていたし、健太もさんの姿をいしてへ入れないようだった。私は息子のを握り、いた扉のへ歩踏み込んだ。
「逃げないのよ」
「うん」
扉が閉まり、エレベーターは静かに1階へり始めた。5階を通過した、健太のに力が入り、私も胸が苦しくなった。それでもとも途でりず、1階に着くまでち続けた。
いた扉の向こうには、警察署へ向かうためののが見えていた。
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事件の全容がらかになるまで、それからいがかかった。優郎のについても再捜査がわれ、事故を起こした両の運会社と栄キャピタル関係者との自然な銭の流れが見つかった。織が直接事故を命令した証拠までは得られなかったが、優郎の予定を部へ流し、告発を阻止するよう求めていたことは証された。
織はにわたる横領と詐欺、証拠隠滅、法侵入、さんへの救護を図に妨げた為などで起訴された。彼女の会社は事実消滅し、背にいた複数の関係者も別件を含めて逮捕された。かつて完璧な笑顔で「私たちは族なんですから」と言っていた女性は、その族を利用して積みねた嘘の責任を法廷で問われることになった。
健太もまた、さんを突きばした傷害為と、そのの救護をわず証拠隠滅へ協力した責任から逃れることはできなかった。裁判で息子は切言い訳をせず、「自分は殺すつもりではなかったという言葉で逃げ続けた。でも、倒れたさんを助けず逃げたことは自分のだった」と話した。私は傍聴席で何度も泣きながら、その言葉を最まで聞いた。
判決のも、私は息子から目をそらさなかった。刑の内容が軽いかいかを母親の私が語る資格はないとい、たださんの族が受けた喪失と、息子が背負うべき責任を受け止めた。
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