みかん小説
本棚

"7階に戻るな" 第4話

自宅へ戻ると私は鍵を度かけ、チェーンまでろした。リビングでになると、健太の配そうな顔と織の完璧な笑顔が交互に浮かぶ。もしさんの「誰も信じるな」という言葉に、自分の息子まで含まれていたらどうしようと考えた瞬、私は吐き気を覚えてソファへ座り込んだ。

その夜、私はベッドへ入らずリビングのソファで夜をかした。窓のにはいつもと同じ美しい夜景が広がっていたが、つの窓がこちらを見つめる目のようにじられた。平穏だったはずのマンションは、たったで敵と方の区別すらつかない所へ変わってしまった。

0を過ぎた頃、玄関の方から微かな音がした。最初は廊を誰かが歩いているだけだとったが、次の瞬、郵便受けの内側からが滑り落ちる音が聞こえた。こんなに配達が来るはずもなく、私は息を殺してドアスコープを覗いた。

には誰もいなかった。非常灯の緑だけが無を照らし、エレベーターホールも静まり返っている。数分待ってから私はビニール袋をつけ、チェーンを残したまま扉を細くけた。

元には、差の名がないい封筒が置かれていた。みはなく、に刃物のようなものが入っている様子もない。私は封筒を拾ってすぐ扉を閉め、リビングへ戻ってからテーブルので慎封した。

広告

に入っていたのは、6聞記事をコピーしたものだった。方ので起きた事故の記事で、者のとして夫・郎の名が載っている。がスリップして列へ突っ込み、優郎のがガードレールとのへ挟まれたあの事故を、私は何度も聞で読んでいた。

ところが裏側には、同じに起きた別の事件の記事が貼られていた。「栄キャピタル飾決算・投資詐欺事件」とあり、数億円規模の資を集めた経営陣が逮捕され、複数のペーパーカンパニーを経由して資が流していたとかれている。私には縁もゆかりもない会社名だったが、その記事だけがわざわざ同封されていることにがないとはえなかった。

さらに、さく折られた便箋が枚入っていた。そこにはきで、たっただけ記されていた。

《すべては優郎さんの遺産から始まりました。あの事故を偶然だとわないでください》

読み終えた瞬、指先から覚が消えた。夫のは警察も保険会社も事故と判断し、私も6そう信じてきてきた。もしあれが仕組まれたものだったとしたら、自分は夫を失った理由さえらないまま、犯のすぐくで暮らしていたことになる。

郎が残した財産は決してなくなかった。

広告

経営していた会社の株式、預、郊、いくつかの賃貸物件があり、半は私と健太が相続した。そのでも先祖代々のだけは、優郎が「俺がんでも焦って売るな」と何度も言っていたため、私は織から売却を勧められても断り続けていた。

織は、そのを売った部を自分の会社へ投資してほしいと言っていた。経営が軌に乗れば利回りをつけて返すと説されたが、私は事業の内容がよく分からず、断った。あの織のたい目をすと、偶然だったはずの夫のと現の事件が、本の吉な線でつながって見え始めた。

私はリビングの奥へ目を向けた。そこには6度もけていない優郎の斎がある。夫の、あの部へ入ると帰ってこないを待ち続けてしまいそうで、私は扉を閉じたままにしていた。

しかし、もう逃げてはいられないとった。優郎は、会社の類をへ持ち帰ることがあり、に見せられないものは斎の引きしへ入れていた。もし自分のに危険が迫っているとっていたなら、何かを残している能性がある。

私はゆっくりがり、斎のまで歩いた。たいドアノブへを置くと、6しみが気に胸へ戻ってきたが、それより「らなければまた誰かがぬ」

という恐怖の方がかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: